第20話 白皙
「……」
「ロード、お気持ちはわかりますが、やっとジェイドを殺せたんです。今が一番勢いが来てる。この機を逃さず行きましょう」
「マグナイトのBトリガーもイツキちゃんのバリアーも未完成なのに?」
「だからもう必要ないんですよ。厄介なメロンとメッセを倒せばドバカのレイだけ。かるぅくハメれば十分ですよ。ジェイドがいないとこんなに楽かぁ! もう向こうにポータルを使えるやつはいない! 広島とか大阪とか、仙台とか金沢とか東京からちょいいッと離れたところでXYZ様を暴れさせれば、レイは誰の支援も受けずにやってくる。今のXYZ様はこの前とはもう違う! イツキちゃんの“哀”は強くなったし、あんなヨシツネでも“喜”の回収には役に立ってる」
燈は純白のブラウスの襟を引っ張って胸、そして花火のスイッチを押した右手のにおいをかぎ、顔をしかめた。
「死とはこんなにも醜くえげつなく凄惨な悪臭を放つのね。鼻が落ちそう」
「意外ですねぇ。殺しをやったことはなかったんですか?」
「いえ、あるわ。それに殺し以上の悪事を行ってきた自負がある。XYZ様の肉体と魂をいじくりまわすことだって殺し以上に生命と魂を愚弄する行為だわ。でもやはりジェイドは特別だった。カイを……お腹を痛めて生んだ子を殺すこと以上に、ジェイドを殺したのは大きな出来事だった。ヒトミちゃん、気を付けて。しばらくの間、わたしは判断を誤ることが多くなる。ジェイドを殺す大きな目標が達成されて落ち込むか、一周回ってハイになっちゃうか。普通の状態じゃないのよ。三十五年間も殺したいと思ってた相手だもの。ジェイドが死んだことは出来るだけ隠しておきましょう。あいつの死は宇宙に影響が大きすぎる。一気に地球にチンピラ共が押し寄せるわ」
「全員XYZ様の噛ませにしてやればいいんですよ」
「雑魚狩りだけしてるやつは雑魚よりちょっと強いだけの雑魚よ。フジがそう言ってた」
「じゃあわたしからレイに祝電送っときます? オメデトウ、君が宇宙最強だ。しばらく地球を守ってくれって。でもジェイドは死んでないかもしれないっすねぇ。そういう場合に備えて考えておかないと」
「ヒトミちゃんは本当にドライね。でも何があっても動じないマイペースさ、大好き」
「ええ、恋をするには少し邪魔ですがねぇ」
〇
「メロン、妙な胸騒ぎがする。ユキは無事か?」
さすが双子の兄妹。ユキの無事を真っ先に案じたのは頑馬だった。彼の住んでいるパレス阿佐ヶ谷は意外にもきちんと持ち物が整理され、冷蔵庫にはササミ、プロテイン、ちょっとした贅沢の高級豆腐が入っている。カラーボックスにはユキに勧められたマンガやフジから借りパクしたバラエティ番組のDVDが並び、その上には地球に来たばかりの頃に撮ったバース、マートン、オー、メッセとの集合写真がある。
「落ち着いて聞いて頑馬。ユキは死んだかもしれない」
「やはりか」
「少なくともカイくんの死亡は確認しているわ。マインの仕掛けた爆弾が起爆され、ユキとカイくんについていた分身も死んだわ。もうすぐわたしの本体が現場につく」
カイが爆破されたのはメロンの入院している病院だ。無駄な破壊は抑えられ、カイとユキのいた部屋だけが破壊しつくされたが建物自体は無事、メロンは病室を出て駆け足で現場に向かった。長期の入院で体力がガタ落ちし、病院内の移動でも息が上がる。加えて精神的動揺。頭が真っ白になりそうだ。
「ユキ!」
カイは木っ端みじんに爆散し、彼の肉体は骨に至るまで何一つ残されていなかった。その爆風に飲み込まれた寿ユキは真っ黒に焼け焦げ、病室の隅に転がっていた。原形は保っているが、とても生きているとは思えない。もう生命ではなく物質。メロンは激しい動揺で膝を着き、パニック状態になって過呼吸になってしまう。医療従事者ではないメロンには何も出来ない。いや、もう葬儀屋の仕事か?
ユキの頭上に突如、白銀の輪が出現した。死んだことを意味する天使の輪か? 急展開過ぎて理解が追い付かない。その輪はどんどん径を広げ、ユキの頭上から高度を下げていく。
「頑馬! メッセ! ポータルを使えるアブソリュート人はユキの他にいる!? ポータルらしきものが現れた! 色は銀!」
「銀。初代のオジキか。クソッ頼む、ジェイドを助けてくれ」
「初代は昔、死んだミリオンを蘇らせた。そう聞いてるわ。ユキを任せても大丈夫?」
「親父が死んだときは過労死で肉体に損傷はなかったから蘇生出来た。今のユキはどうだ?」
「……」
「オジキに賭けるしかねぇ」
銀の輪がフワフワと炭になったユキを飲み込み、床に触れると同時に輪ごと消滅する。肉体の損傷? この部屋に寿ユキがいた、と知らなければもう「あれ」が寿ユキだと知ることすら難しい。
ショックが大きすぎる。何があっても寿ユキがいればどうにかなった。なんだかんだあっても地球は無事だし、悪人は退治されるし、飛燕頑馬も寿ユキを一生超えられない。そんな風に考えていた。頑馬でさえもだ。例え寿ユキが生還するにしても長い時間がかかり、後遺症で最強の看板を下ろすかもしれない。アブソリュートの星の就活関連のイベントで講演して生計を立てるには「一度死んだかつての最強」や「不屈のリハビリ」なんてタイトルで十分だが……。
「話は聞いていたな? メッセ」
「ええ」
「俺たちはもう、指示待ちじゃいられない。自分たちで考えて行動するぞ」
「わかってる。メロン」
部屋いっぱいのモニターとパソコン、興奮した馬の息のような廃熱の騒音に囲まれたメッセがコーラ味のグミを噛んで脳に糖分を回す。ポートにはスポーツバーで胡乱な男から受け取ったヤベーブツのUSBが突き刺さり、ブルーライトを反射させている。頑馬にクギを刺されてしまった。ユキの指示を待って行動するなんて悠長なことを考え、自分の作戦をなかなか行動に移せずにいたがそうはいかない。自分たちの行動と思考が試されるときが来た。
「メロン。わたしの部屋がどこかわかる?」
「メッセの家は確か芦花公園」
「そこに本体のあなたか、ありったけの分身を寄越して。とっておきがある。あなたにしか出来ない」
何せメロンは人見知り。メロンとメッセが組めばチームプレーの相乗効果はバツグンだ。しかし一度本気で戦った過去もあり、ファッションの方向性も性格もまるで違う二人だ。
メロンとメッセの決定的な相違! それはコミュニケーション能力! 作戦を立て、テレパシーで仲間に同期するメッセが人見知りではチームは成立しない。頑馬は自分の働きに期待してシャバに出してくれた。そして怪獣の癖に期待と善意に報いたいと思っている。
それがメロンとの連携ならそうすべきだし、自分とメロンの相性はバッチリ。人見知りのない自分から踏み出すべきだ。
「何をしようとしてるの?」
「メロン。ユキから聞いたけど、ゲームが好きなんでしょう? 最新のゲームをプレイして攻略法を編み出して。何しろこのゲームはヤベー。わたしとあなたの秘密よ。今はまだ頑馬にも秘密。隠し事を共有して隠し通すことも友情の形の一つでしょう?」
ヤベぇ……。行く勇気がわかねぇ……。ユキが「メッセと連携をとるためにメッセの家に行って」と言ってくれればどんなに楽か……。これが人見知りだ。
「三十分待って。本体がお邪魔するわ」
〇
異世界に隔絶されたフジは無意味に暴れることなくお化け屋敷に寝転がり、タバコをふかしていた。どうやらここは時空が歪んでいるようで時計が正常に進まないし、腹も減らない。だがタバコはそうはいかない。二十本一箱を吸い終わったらもうないのだ。
彼についていたメロンは健在だが、フジと同じく外の世界と隔絶されたせいでカイとユキが死んだことはまだ知らず、フジと一緒にユキの助けを待っていた。
「おいババア。タバコ買ってこい。中野ブロードウェイの近くに年季の入ったタバコ屋があるからそこでこれと同じの十カートン……。いや、十カートンだと2万を超えるな。二万円以内で買える分だけ買ってこい」
「お腹は減ってない?」
モニター越しに燈がフジに声をかける。今はまだフジの心は折れない。ユキが死んだと伝えれば彼を廃人にするのは簡単だが、フジにはまだイツキにバリアーの使い方を教える役割がまだある。怒りと刺激は小出しでいい。燈も興奮や動揺をフジに悟られてはいけない。
「食い物? じゃあビーフジャーキーはあるか」
「生憎ビーフシチューしかないの」
「単品で食えるか」
「お茶碗は一つだけ置いてあるわ。その晒し首の間にね」
「ああ、あった」
「そっちにご飯をよそってあげる。シチューはこっちにね」
スポンとフジの目の前約一五〇センチのところにポータルが開かれ、白樺の枝のような腕がいかつい銀色の金属の塊を投げ込む。金属の塊がガチャガチャと地面を転がった後、シチューよりもサラサラで澄んだ赤の液体が散らばり、フジの足にぶつかって回転が止まる。
「ドグサレババアが……」
間違いない。アブソリュートミリオンスーツの頭部だ。このスーツは試作段階でフジ本人も関わっていたし、完成後は二回も壊したのでよく知っている。そのせいで友人だったはずの和泉との仲はギクシャクしてしまったが……。平常心だ。和泉が死んだとは限らない。メロンとユキがついていて和泉がそう簡単に死ぬはずない。だがこういうハッタリは燈らしくない。
「中身は全部それに詰め込んじやつたから夕ご飯までに空けておいてね。何か要らないものが出てきたら捨てておいてあげるから。警察手帳とか。あ、その前に一つ体を動かしてもらおうか」
フジが強制的にトーチランドの広場に転送され、目の前にはジャージ姿の犬養樹。いつものように人の目を直視出来ないメロン以上の強い人見知りだ。今までのように東京ドームのビールのお姉さんのようなインクサーバーも筆も装備していない丸腰状態だ。フジは察する。こいつはきっと、草津から東京に帰るきっかけになった戦いでカイと戦っていた相手だろう。筋肉の付き方、暗い雰囲気が同一人物だと教えてくれる。
「イツキちゃんと軽く戦って」
「迷走してるなババア。何があった? お前らしくない。行動にブレ、迷いがある」
「イツキちゃんがバリアーに目覚めたの。お手本を見せてあげて」
タバコの残り本数が十本を切った。ライターで火を打ち、左手の指に挟んでイツキを品定めし、薄いバリアーを間に挟む。バリアーの使用が出来るなら話は別……って訳でもない。燈はフジのバリアーを3Dプリンターに使ってマグナイトのBトリガーを作ろうと企んでいたし、その狙いは燈がさっきウッカリフジにも漏らしてしまった。同じバリアーを持つイツキがいるのに自分がまだ生かされているのは同じバリアーの使用者でも同格ではないからだ。
イツキの足元のコンクリが爆ぜる。カイでは追えなかった速度だが、フジの目はイツキの重心を捉え、自分を守る防壁を作り出す。イツキの三白眼が右往左往する。急にフジが見えなくなったのだ。目の前にあるのは、グラデーションもない真っ青な壁……。
「バリアーを着色した」
「アシャア!」
イツキは急に止まれない! 特撮ナシでニチアサヒーローを凌駕するジャンプ力で高さおよそ二メートルの壁を飛び越え、イツキがフジを見下ろす。まだ見下ろす。まだまだ見下ろす。
「……?」
「今度は全く見えないバリアーだ。お前は壁に阻まれて落ちてくることが出来ない」
ジャンプの頂点で着地してしまう初めての減少に戸惑うイツキのジャージに皺が寄っていく。混乱するイツキを挟んで上からもう一枚のバリアーで圧し潰し、押し花のように平らにする。イツキもバリアーを出してつっかえ棒にするがフジのバリアーが全てを上回り、イツキのバリアーは押し花を飾るラメになる。バリアーを破壊されたイツキが鼻血を流し、顔が隠された。全く身動きが取れない。燈も腕を組んで首を傾げた。
「なるほど。イツキちゃんにはまだバリアーの変形、移動、着色、脱色が出来ないようね。硬度も全然足りないし、破壊されるとダメージを受けちゃう」
「どうする? 俺の質問に答えたらバリアーの使い方を教えてやらなくもないぜ」
「OK、何が聞きたい?」
「誰か殺したか? 俺が名前を知ってるやつを」
「うぅん、和泉だっけ? ミリオンスーツの彼は殺してないわ。ミリオンスーツの頭はハッタリよ。買ってきた挽肉とマグロのネギトロは詰めたけど。都築カイと寿ユキは死んだ」
「なんだ、ウソか」
「ウソじゃないよ。受け入れたくない真実を無視するのは若い証拠ね」
「お前ごときに姉貴を殺せるかバァーカ。とりあえず中野ブロードウェイでタバコ買ってこい」
憐れなガキ。姉の愛がもう追い越されたとも知らずに。バリアーの使い方を小出しにして姉が助けに来るまでの時間をセコセコ稼ごうとしているなんて。
〇
「何よこのゲーム……」
お友達の家に遊びに来るのは約三十年ぶり、網柄甜瓜(41歳)。見た目の年齢は二十五歳。人付き合いは苦手だ。娘が幼稚園に通っていた頃も他の保護者よりだいぶ若かったせいかビビっていた。三十年ぶりに訪れた友人の家は、甜瓜のマンションには及ばないが部屋も広くて小ぎれいで、すごくいいにおいがする。冷蔵庫の中にはカフェインと糖分たっぷりのエナジードリンクの山、至る所にモニターがあり、スパコンと思しき謎の物体まである。
そのメッセの部屋で甜瓜がプレイさせられたのは、あのアブソリュートミリオンが日本の実在のマップで怪獣たちと戦うアクションゲームだった。
「『Oh My! Super Hero!』よ」
タイトルがダセェ……。グラフィックはPS3の中盤の頃ぐらいだが、この謎のアクションゲームはアタリ判定が細かく、建物や車と言ったオブジェクトが戦いに巻き込まれると破壊され、人間や家畜、ペット、野生生物を死なせるとスコアに影響が出る。マップはオープンワールドで日本中のどこへでも行けそうだ。
「なんなの? このゲーム」
「メロン、あなた新聞はとってる?」
「いえ、読まないわ」
「宇宙にはゴミみたいな新聞がある。わたしと頑馬が読んでるユニバース・スポーツ新聞、略してユニスポよ。天狗が山奥で偽札工場をやつてるとかバカみたいな虚構記事ばかり。結構家柄のいいわたしがユニスポを読んでるなんて知ったら家族はみんなオッタマゲェよ。昔、こんな記事が載った。『悪夢か現実か! 史上最強のコンピューターウイルス“サイバーアブソリュートミリオン”に気をつけろ!』。この『オーマイ! スーパーヒーロー』で使えるチートキャラが、今あなたが操作しているサイバーアブソリュートミリオンよ。対象のコンピューターを強制的に『オーマイ! スーパーヒーロー』の世界に引きずり込み、チートで全てを破壊するコンピューターウイルス。これでマインの使っているコンピューターをブチ壊す」
「なんで頑馬にも内緒なの?」
「だってこのサイバーアブソリュートミリオン、わたしはユニスポの記者に貰ったんだもの。つまりユニスポの言った通りサイバーアブソリュートミリオンは実在した。最近では天狗記事まで本当になっちやったし、三流タブロイド紙が本当のことばかり書いてたら商売あがったりじゃない。ウソだからユニスポは面白いのに。という訳で出どころはわたしとあなただけの秘密。おやつを買ってくるわ。練習しててね。あなたはメロンソーダ?」
「じゃあメロンソーダを」
「OK」
初めて家に上げた相手を一人残して……。敵と戦いに行くなんてメッセは随分と丸くなったし、こういう友人を求めていたのだろう。オーはこうじゃなかった。オーはロボット生物だったので人間らしい悩みを持っていなかったし、能力が高かったので気を遣わずに済んだ。今のメッセは人見知りなメロンを思いやり、一人にしてあげたり、積極的にアプローチをかけて関係を構築している。頑馬の部下だった頃は力を第一に集まったメンバーが互いに愛着を持っていたが、今は人情だ。
ユキという大きな柱が失われた今、各々が歩み寄って、空元気でも団結しなければならない。マンションを出たメッセはコンビニとは違う方向に足を運び、電撃で無人の芦花公園の電灯のフィラメントを爆発させてレーダーを張る。
「出てきなさい。よくもユキとカイをやってくれたわね。脳ミソバチ焦がしてやる。脊椎ブチ折って心臓グチ潰してやる!」
「あぁぁぁん?」
暗闇の芦花公園でガラ悪く立ち上がり、暗闇の先のメッセに寸分違わずメンチを切るのはトーチランドの“怒”担当・目ヶ騷夜! 得物である異形のサスマタを担ぎ、目を血走らせ舌打ちをする。南極のドームふじ基地で湧かすラーメン一つまともに作れない鍋の沸点(約85度)より沸点の低いヨルは、挑発にすらなっていないメッセの怒りの表明で既にブチ切れるボルテージに達していた。
「メロンはどうした? 一緒に殺してやるはずなのに」
「ガキのお守りはわたし一人で十分よ」
メッセには電磁のレーダーで敵が見える。まだ距離があるが、ならば先手必勝。趣味の悪い成金が欲しがるようなホワイトで完璧な歯並びの城壁に守られたメッセの舌の先端がヨルに向けられ、一瞬だけ芦花公園をエレジーナ超電磁流が照らす。
「オルゥ!」
さっきより近くにいる……? 暗闇でも周囲が見えるのはメッセだけではなかった! 光に依らずに索敵する術を持つヨルはエレジーナ超電磁流に向かって進撃する。
ヨシツネの言った通りだ! 距離があればメッセはエレジーナ超電磁流を使用する。頑馬、バース、マートンに守られながら戦っていたメッセは、距離をとった戦いを主とする。そしてメッセの最高の技は舌の先端から放つこのエレジーナ超電磁流。ヨシツネの策はあまりにもセコいが……。こんなセコい策を使うのは気が引けるが、簡単だ。
「オルァ!」
異形サスマタのアッパーカットがメッセの下顎をカチ上げる。メッセの脳内には石がぶつかるような鈍い音が響いたが、聴覚に優れたヨルに聞こえたのは肉が千切れる音と液体が土を打つ音だ。
「メ……」
エレジーナ超電磁流を撃つ瞬間に顎を狙い、メッセ自身の歯で舌を噛み切らせる。これがヨシツネのメッセ対策だった。
「お前は重要人物よ、メッセ。ジェイドが死んだ今、次に強いのはコミュニケーション能力の高いお前。ガキのレイや人見知りのメロンはお前がいないと何も出来ない」
血を滴らせ、舌の痛みに耐えながらメッセが白皙で悪鬼の形相を浮かべる。空気がピリ付き、鼓膜でなく直接テレパシーでメッセの怒りが届けられる。
「ブチ殺してやるわクソガキ。このメッセの舌は高くつくわよ。宇宙中にわたしと舌を絡めたい男が山程いるってのに」