第81話 獅子身中の虫
「お前のことは何と呼べばいい? 鹿井響子? 村上響子? 網柄甜瓜? サクリファイス? それともメロン?」
目の前の老人の目には生気がなかった。眼球には瞳孔の代わりに穴が空いているような闇を湛え、どう答えても激高に至るような地雷が言葉や仕草のあちこちに埋まっている。
「メロン」
「メロン、か。お前が……。外庭数のもとを離れ、寿ユキ一派に寝返ってから名乗るようになった名前だな。過去は捨てたのか? 生まれた時の鹿井響子。幸福の絶頂にいた時の村上響子。そして、私の息子を殺したときの網柄甜瓜及びサクリファイス。全て捨てて、君は都合の良い、最も大きな後ろ盾を持つメロンを名乗る訳か。さぁ、罪悪感を吐露しろ。詫びろ」
「……」
「お前が何をしたか、その事実を話せ。そのことでお前が、自分の過去に苛まれることもないような悪人ならば最早一刻も早い死でしか贖えん。さぁ、やってみろ。仲間がお前を助けに来るまでの時間を、謝罪で稼いでみせろ」
「ゴア族族長外庭数の命令に従い、わたしはあなたの長男を殺しました」
「何故殺した?」
「……聖四十万さんが、怪獣初の国会議員になりそうだったから」
「それで何故死なねばならぬ?」
「わからない。命令されただけだから」
「何故命令されて疑問にも思わず殺した?」
人間は同じ話題について三度「何故?」と深掘りされると答えることが出来なくなり、「だって人間だから!」と逆ギレするしかなくなる。透澄がそれを知っていたのか、それとも息子を殺された無念故の深掘りだったのかは不明だ。だがメロンは逆ギレが許される場面、立場ではない。メロンだって改造と洗脳を受けていたというのは大きな理由だ。事実、地球の法ではそれによりメロンの罪を問えなかった。だが透澄には関係ない。
「家族を失う悲しみ、それも唐突に罪もない家族を殺される無念をお前も知っているはずだ。それも忘れてしまったのか? それも……忘れるべき過去なのか?」
透澄の追及はずしん、とメロンの心に重く絡み、苛み、締め付けた。透澄の口調が詰問や怒りに任せたものではなく、真にメロンの良心と記憶に問いかけ、罪悪感や苦しみの在りかを問うていたからだ。メロンが家族を殺された過去に苦しんでいないのなら、透澄は罪悪感でメロンを苦しめる術を持たない。復讐としてただ殺すだけでは意味がない。苦しめ、償わせる唯一の手段として透澄が迷いなく死を選ぶ。そうでなければ、意味がない。
メロンは沈黙した。今までは場所や言葉に応じて断片的に蘇ってきた記憶のピースは、連続したフィルムとなって白昼夢になる。
「外庭数……ッ」
そしてメロンは最も重要なことを思い出した。
メロンは家族が死んだとき、悲しんでも苦しんでもいない。
夫、娘と共に交通事故に巻き込まれ、夫と娘は即死。一命をとりとめたメロンは外庭数に改造され、家族が死んだことも響子という名前も、十五年間忘れていた。その十五年で響子の人生は網柄甜瓜の人生に切り替わり、夫と娘のことを思い出した頃には既に彼らの存在は前世のものだった。メロンは悲しみすら奪われたのだ。
一年前、まだ虎の子の助っ人だったメッセとトイザらスで戦ったメロンは、そのトイザらスに家族そろって訪れたことを思い出し、その場所の記憶によりトイザらスを壊したくないと強く願った。だがその程度だ。
十五年。十五年? 十五年間、家族が死んだことも忘れ、ゴア族の若手に慕われ、寝返ってからはフジに信頼され親友と呼ばれ、そこで思い出した過去は、既に現在よりも尊重される過去ではなかった。メロンが前向き、或いは非情なのではなく、それが自然だ。
「……」
目の前でフリーズする愛息の仇を見ても透澄の気分は晴れなかった。だが、復讐なんて空しい、無意味だと見逃すつもりも毛頭ない。気持ちの問題ではなく、物理的な決着は必要なのだ。メロンが死ぬ、という決着が。
「わかっているつもりだった。お前のことは知っている。家族が死んだとき、お前は別の人間になった。思い出したか? 家族を思い出したか?」
「メロンと名乗るようになったのは、家族を思い出してからよ。わたしの過去に彼らはちゃんといる」
「ならば、どうやってお前を苦しめればいい? 最終的に死は与える。だが身体的な拷問による苦痛は私の望みではない。心を痛めろ」
〇
「メロン! どこまで機能している?」
導架による同時襲撃では池袋が最も余裕がある。フジ、顕真はこの直後の決闘のためにコンディションはともに調整済み。フジは耳をタップしてメロンに呼びかけた。
「新しい分身を増やすことは不可能。伝言ゲームの形での伝令は出来るわ」
「なら市ヶ谷の二人に伝えてくれ。メロンの居場所を掴み次第、俺と和泉を飛ばせ。ここは顕真一人でどうにかなる」
「わたしの居場所……」
「犬養のアプリならわかる」
「それがあったわね。狐燐、ユキ、犬養さんに連絡を取るわ」
「よろしく」
分身メロンは本体メロン程頭が回らない。そして寿ユキもだ。
寿ユキは、弟を守るために弟よりもヒジリ製菓及び聖透澄の恨みを買い、攻撃の的になりやすい顕真を池袋に連れてきた。弟と顕真の仲の良好さは彼女の想像以上だった。共闘までは想定内でも、鼎の無事さえも顕真に任せてフジが池袋を離脱するなんて想定外だっただろう。
〇
「ジバッ!」
強烈な蹴りが導架の頭を蹴り砕く。サラは……。
「無理するなサラ。今のペースから少し落としていけ。逸る気持ちはわかるが、我慢しろ」
「ジバァッ!」
死でしか救えない存在はいる。例えば、この導架……。心を持たないリモート導架はその手の存在だ。死を以て苦しみを終わらせてやる……。同類である自律導架、それもリンダのために。そのリンダが、死体とは言え太陽の塔に吸収されたのはサラにとっては有難いことだった。メタ・マインは脅威だが、リンダが何も出来ないまま死んでしまったのでは言葉に出来ない無念、そしてヒトミに対する払拭しようのない憎悪が募るばかりだった。ヒトミがヒジリ製菓として過ごした短い期間。問題児どころか悪党であることはサラにすぐ看破されたが、それでもサラはヒトミが気に入っていた。
サラ以外の威力部門メンバーは問題児の集まりだ。スカーは反社と付き合いがあり、ハンマーはマイペースすぎる上に向上心もさしてなく、会社に貢献しようという気持ちが見られない。だがヒトミは会社を利用してでも目的を果たそうとするバイタリティがあった。その悪意、悪事という目的を矯正或いは抑制し、更生させればヒトミはヒジリ製菓にとって大きな戦力になれたはずだった。それが出来ればサラは暴力だけを期待される野蛮な怪獣ではなくなる。若くして管理職についた期待の若手、一人の社会人としてサラを成長させてくれるはずだった。既に先が見えなくなっていたスカーとハンマーにも当然愛着はあったが、やる気、バイタリティの有無、そして若さは伸びしろだ。自分自身がそうだったから、ヒトミに期待をしてしまった。ヒトミを許すことは出来ないが、対等だったり教える側だったりでちょうどいい関係性を数週間だけ得られ、その数週間だけサラは孤独を感じなかった。だから今のヒトミを全否定しても、思い出まで全否定したくはない。
「お前の方こそ少しペースを落としたらどうだ頑馬。この後、メタ・マインと戦うんだろ? 体力を温存しなければ」
「残念。俺の出番はもう少し後か、回ってこないかだ」
まるでスマブラの百人組手! 敵の攻撃を回避し、回避先のスペースで体勢を整えてリズムを作り、神器をディレクト! リンクの回転斬りよろしく導架が切断される。新宿担当の前任者がアブソリュート最強の戦士だったこともあり、新宿も制圧が近い。
「サラの姉御!」
「姉御と呼ぶなぁ!」
一人の導架が我に返ったかの如く、他の導架とは一線を画す無駄を含んだ人間らしい挙動を取る。効率と統率の辞書にはない動きだ。
「わたしです!」
「……」
わたし? 誰? 誰とも名乗っていない。だがその姿、その声で呼ばれれば、獅子の娘にバグが生じる。その獅子身中の虫により、一瞬躊躇ってしまう。何本か折れた歯を食いしばり、口角を下げ、眉間に皺が寄る。
「目ぇ覚ませサラ! そいつは違う!」
獅子身中の虫は思っていたよりデカかったらしい。
「死ねぇい! 稲尾サラ! 死ねぇい!」
ロールプレイングゲームの終盤装備じみた実用性度外視の刃物が鮮血を散らす。クズニートの醜い欲望によるコスプレでも、あのレイと戦って満身創痍かつ隙……。最もデリケートな心の隙をつけば攻撃は通る。サラの軸である右足は血を噴き出し、自制心のリミッターが利かず苦悶の声を漏らした。
「死ねぇい! 稲尾サラ! 死ねぇい!」
中途半端な攻撃力を与えられたRPGコスプレ武器は造りの不味さも相俟って、鈍い切れ味でサラのアキレス腱にグズグズの傷をつける。それだけでもこの場の戦闘どころか、今後のアスリートとしての選手生命すら危険だ。そして、銃火器導架による狙いすました一撃は完璧にサラの右足首を射抜き、アキレス腱を完全に断裂させた。サラはガクンとバランスを崩し、頑馬に支えられた。さっきまでこの筋肉で殴られていた。そのデカい肉と骨の熱は、今は柔らかなぬくもりに感じられた。もう、ここにサラの味方はレイしかいないのだ。
「サラ!」
「サラ……。サラァ……」
頑馬が強く呼ぶ。撃った導架が弱く呼ぶ。
この導架を操っているのが聖透澄ならば、聖透澄は次男以上に愛した部下に最も卑劣な騙し討ちを仕掛けたことになる。死んだ者の声を利用することはその死者を愚弄することだ。愛する者の死によって心に大きな傷を負った者だからこそ、透澄にはその卑劣さがわかるはずだ。はずだったのに。
透澄はサラが好きだった。淡い色のロマンスではなく、娘のように感じていた。サラの母親と旧知の仲である透澄は学生時代のサラの競技大会にも足を運び、サラが就活を始めるとすぐに透澄からスカウトした。
運動までは完璧ではなかった長男四十万。体育会系の部下にして娘のような存在、そしてそのサラのクローンを使用した量産型ブッコローガ計画……。サラを愛していない訳がない。そしてサラに対する罪悪感も当然あった。だからこそ、最も大事な場面で透澄に味方しなかったサラへの感情は、全てが憎悪に裏返る。
稲尾サラ、再起不能。
尊敬……。簡単だ。尊敬。その言葉が全てを内包する。サラは透澄を尊敬していた。経営のことに関して語るにはサラはまだ若すぎるが、その人柄。つまり自制心、カリスマは尊敬の一言だ。その透澄の変わりように、ただただ落胆することがサラの最初のリアクションだった。もう二度と戦うことが出来ないという事実と悲しみは、彼女を覆う透澄への落胆というフィルターに濾過されて彼女の心にやってくるまでもう少し時間がかかる。
「ハハハ……。自分が心を開いた量産型人造人間と同じ姿の人造人間に隙をつかれ、致命傷を負うなんて……。これじゃサラ・コナーじゃなくてジョン・コナーの末路だ」
この傷はあまりにも深く、大きい。サラの心身にとってあまりにも……。サラが現実を受け入れるのにはもう少し時間がかかるだろう。もう敵を一人も倒すことが出来ないどころか、この戦いでは立つこともままならない。それでも客観的に物事を捉えられている頑馬にはわかる。もうサラは再起不能だ。
「メロン。カケルに伝えろ。必ず聖透澄をブッ殺してこいとな」
言葉も感情も熱く燃え盛っているはずなのに、不思議と頑馬の口調と体温は冷たかった。
彼の中で何かが目覚めるような感覚があった。
〇
「……」
イツキは新世界の射的屋で宝田明もビックリの百発百中。この後の戦いでもそうでなければならない。
イツキも寿ユキ一派に含むのならば、彼女のメンタルは一派の中で最も未熟だ。それでもイツキにはこの後の戦いに集中してほしいというのは全員が望むことだ。因幡飛兎身は調子に乗りすぎた。それを仕留める最大にして唯一のチャンスはイツキにしか掴めない。
彼女がマインの能力を継承し、時空を超えてミリオンから学び、そしてベローチェと名乗るようになって少し成長したのは、遠慮しないということである。
ハッキリ言ってイツキがヒトミに勝つのは非常に困難だ。Aトリガーやバリアー、超身体能力など武器や超能力のスペックでは過剰な程のイツキでも、ヒトミのワン・アンド・オンリーのセンスに纏められたトータルとしてのハイスペックには敵わない。それでも遠慮せず、寿ユキ一派のほぼ全員から恨みを買う因幡飛兎身を仕留めることだけは譲らない。
そして、その戦いに集中したいからと東京での導架鎮圧も免除してもらえる。優遇でも配慮でもない。それが犬養樹という人間の現在地だ。譲られ、なおかつ勝ち取った今の犬養樹だ。馬鹿げた燕尾服の怪盗姿こそ、馬鹿げていても最新の犬養樹だ。
「来たね」
「待った?」
通天閣を支えるワイヤーがビリビリと鳴く。かつてウサギの巫女だった者はかつてオオカミの巫女だった者に後ろから抱き着き、股間をイツキのお尻に打ち付けて卑猥なムーブをした。
「君はもうオオカミの巫女じゃないね。オオカミよりももっと親しみを感じさせるワンちゃんだ。優れた番犬、猟犬、愛玩動物。人間の相棒と言えばワンちゃんだ。褒めてるんだよ。この世界で一匹オオカミを貫くのは辛い。孤独は辛い」
「わたしたちはそう教わったからね」
「だから二人で最高のドギースタイルをやろう。あれは二人じゃなきゃ出来ない」
「愛してるなら少し離れて」
「そうだね。何歩?」
「そうだなぁ。ヒトミちゃんは、Aトリガーがどれくらい嫌い?」
「蹴り飛ばしたいくらい。でも君のことはずっと引っ付いていたいくらい好き」
「じゃあ十メートル」
「無機質なくらい具体的な数字でガッカリぃ」
ヒトミの服装はトーチランド時代の在りし日のバニーガール。手に持ったハンマーに装着されている四つの引き金は全てBトリガーだ。未来恐竜クジー、電后怪獣エレジーナ、悪食怪獣ウインストン、摩天楼怪獣センゴク。火、電、風、打の力だ。
イツキの服装は基本フリーで動く最新の怪盗。握ったAトリガーで撃てる弾の数はカイの半分だ。ミリオンの“鏖”の散弾、レイの“火”の火炎弾、ジェイドの“凍”の冷凍弾、そしてアッシュの“電”はイツキの手に渡り、貫通弾から電撃弾へと変化した。そして現状構想外だがとっておきのマインの“理”。そしてもう一つ、イツキにはAトリガーの他にとっておきがある。
「君からは何か恨みを買ったっけ?」
「なんでそんなこと訊くの?」
「メルカリもヤフオクもアマゾンも、購入履歴と検索履歴は全部“恨み”だったからね」
「恨んでいてほしかったんでしょう? わたしと決着をつけたいから、恨んでいてほしかった。フジを疑似地獄に飛ばしたことは恨んでない。あれでフジはものすごく強くなった。むしろお礼を言いたいよ」
「そこまで言っててまだフジとはドギースタイルをしていないってんだもん。フゥー……」
鬼畜は空を見上げてから目を見開き、口角をあげて笑ってみせた。
「今、導架ちゃんたちの同時襲撃でみんな忙しい。純粋なタイマンだ。さぁ、わたしたちの青春に答えを出そうじゃないの。あの青春を……。駿河燈と過ごした時間の再来を願うのか、超えていくことを願うのか。わたしたちは駿河燈から学んだ。孤独は辛い。わたしたちは本来、お互いがいればその孤独とは無縁でいられたのにね」
「わたしが言いたいことは、倒れたヒトミちゃんが意識を失うまでに言うよ」
「それもまた随分とフジに似た物言いだ。ああ、青空だ。そろそろ黄昏になる青空だ。……ピカピカに光った銃で、出来れば僕の憂鬱を」
「撃ち倒す」
「それでいい。駿河燈との別れは済んだ。そして今日……。わたしの過去は全て終わる。君と別れることで……。この空が、この大阪の空が、わたしのアナザースカイ」
ヒトミには姑息な時間稼ぎをする理由がない。本当に別れを惜しんでいるとイツキは察した。ヒトミには誰もいない。だがイツキにはフジがいて……。師と慕うミリオンもいる。友としての龍之介も大きな存在だ。
因幡飛兎身は犬養樹を否定したいと言った。それは因幡飛兎身という人物の悪のパーソナリティによるものだ。だが犬養樹も、今は因幡飛兎身を否定したい。それが唯一の友人としての使命だ。
ヒトミのお尻でご機嫌に揺れる尻尾を見つめながら、イツキは弾を込める。そして尻尾は見えなくなった。
「アブソリュート・アッシュの力! “電”の弾!」
「ルアッ!」
開始のゴングは電撃弾! 周囲にまだ人の多いこの場所でミリオンの“鏖”の散弾は危険だ。そしてアッシュの電撃弾はヒトミに最も効果のない弾だ。電撃弾の電撃はエレジーナのBトリガーで散らし、弾丸そのものはハンマーで弾くというセオリーが確立されている。そのためこの攻撃は合図に過ぎない。
「わかってくれとは言わないが」
そのセオリー通り“電”を処理し、弾力のエネルギーを足で弾けさせ電光石火! 一瞬にして怪盗ベローチェの懐に潜り込む。このまま怪盗の胸から白紙の予告状を盗むことだって出来そうな早業だ。
「ギザギザハートの子守歌ァ!」
しっかりと踏み込み、まずはBトリガーを使用せずハンマーフルスイング! 鋼の筋肉に止められたような感覚はあるが、数メートル吹き飛んで通天閣の真下を転がるイツキのリアクションはヒトミの想定外だった。顎が上がり、不規則な呼吸で狂おしく酸素を求め悶絶に近いような苦しみ方をしている。イツキの鍛え方と生まれ持った超強力なフィジカルならば、こんなにダメージが入っているはずがなかった。
「……」
少ししてヒトミはその理由を理解し、そして嫉妬した。
ヒトミが持っているのは四種のBトリガーを装備したエウレカ製ハンマーだ。アブソリュート三兄弟対策と透澄へのマウントとしてエウレカ製に変えた。そしてイツキに入ったこのダメージはエウレカによるアンチ・アブソリュートの効果に似ている。
それもそうだ。何故なら、駿河燈ことアブソリュート・マインに最も愛された犬養樹は、アブソリュート・マインの今わの際に全てを与えられたのだから。その弱点すら。
「最後まで残ったのがわたしだったら、わたしはそれを与えられたのかな? もう一回言ってやる。アブソリュート・マインに最も愛され、全てを与えられたくせに、ミリオンやアッシュに感化されてんじゃねーよ」