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第64話 F#m

「目当てのブツは!?」


「回収完了!」


 北上する量産型導架は宮城県北部に到着し、市街地に入ってから一時散開、マトモな上着を持っていなかった者はそれぞれ別の店で気に入った服を調達した。そのコーディネートは各個異なる。種類、カラーリング、方向性……。導架はサラのクローンでもやはり個性を持ち合わせているのだ。それはそれぞれが異なる特技を持つようチューンされたからなのか、それとも導架、という存在がそういうものなのかは未だ不明だ。

 そうして身なりを整えた三十人の導架たちは、宮城県某所に再集結し、そこを襲撃した。狐燐が知れば顔を真っ赤にして激怒する場所だ。

 量産型導架が襲撃したのは、多くの特撮作品の原作マンガを手掛け、昭和の時代に斬新なアクションと技法を多く生み出した、日本の歴代マンガ家で五指に入るレジェンド、島村章の偉業を讃える記念館である。ジャンルは違えど狐燐は島村章を崇拝し、島村章の代表作にして未完の名作『エンジェルNo.9』の構想だけ残された完結編の作画という大役を任されていた。

 だがその『エンジェルNo.9』完結編である『転生編』は、ついこの間島村章が執筆したものが見つかり、出版された後に生原稿は島村章の故郷であるこの宮城県の島村章記念館に寄贈されていた。

 そして導架の目当てはそれだった。体格は子供でも、超能力や高度で専門的な知識やスキルを持つ導架である。それが三十人で襲撃すれば、ロクなセキュリティもいない記念館はあっという間に制圧可能。三十人がかりで探せば生原稿もすぐに見つかる。


「担当者に渡して」


「オッケー!」


 生原稿を強奪した導架から骨董品導架の手に渡り、鑑定の後、適切に処理、保管された。

 静かに素早く、とは程遠い暴挙。騒ぎを聞きつけ誰が来てもおかしくない。またすぐに山の中に入り、身を隠しながら“西”と合流せねばならない。そのため、戦闘員導架はフォーメーションをとり、先に記念館を出てチームの核である骨董品導架やリーダーシップ導架、テレパシー導架のために安全を確保する必要がある。


「見てこい、導架」


 まずはリーダーシップ導架の指示で拳銃装備導架が先に外に出た。


「ギニャアアア!?」


 ビッと血液が飛び、ごろんごろんと転がってきた導架の頭。頭部は陥没し、首の断面は焼け焦げている。頭部が破砕しなかったのが幸運だった程の恐るべき威力を後続の導架に伝えるには十分だ。


「スタバだぁあああああ! スタバが出たぁあああ!」


「スタバだと!?」


「よりにもよってスタバかよ!」


 ピィーッ! リーダーシップ導架のホイッスルが記念館内で恐慌状態の導架と、外で物言わぬ死体になった導架に支配力を行き渡らせる。


「サラの姉御じゃなかっただけ好都合! スタバなら遠慮なくブッ倒せる! スタバの遠距離攻撃はBトリガーによるクジーの火球とエレジーナの電磁球! この攻撃の弾速はイマイチだ! しかも近距離でハンマーを振りながらこれらは使えない! グラップラー導架が引き付けてBトリガーを使う暇を与えるな! 攻撃はアストラル導架を中心にアストラルビーム主体で戦闘を組み立てるよ!」


 東京に比べるとまだ寒い五月の東北。顔を赤くしたリーダーシップ導架の的確なコーチングで作戦と熱が導架たちに伝播していく。スタバはにやにやと薄ら笑いを浮かべながら、ハンマーのストラップを指にかけてクルクルと回して弄んでいた。


「なぁにしてんの、導架ちゃんたち」


「突撃ィーッ!」


 グラップラー導架五人のタックルを受けたスタバはその衝撃で五回よろめき、少女たちの渾身の体当たりで溜めた弾力のエネルギーで月まで届くような大ジャンプ、記念館の軒に飛び乗り、甘い声を出した。


「話をしようよ。内容次第では協力するよ。君たちの考えは大体わかる。わたしは知識は豊富、空気も読める、人の心もよく読めるし勘もいい」


「じゃあ何故前衛の導架を殺したんだよ! あいつはいいやつだった! 西武ライオンズが大好きだったんだ! いつか西武ドームに行って源田壮亮のたまらん守備を見て、ユニフォームを買うのが夢だったんだ!」


 そう。所詮自分たちは量産品で代わりなどいくらでもいると思っていた導架たちは、この生原稿強奪のための旅で互いの個性を認め、それぞれは違うパーソナリティだと認識して仲良くなったり悪くなったり、愛着を持って違う人間同士のような感情が芽生えていた。


「悪いね。ナメられると困る立場……というかナメられるのが嫌いな性分なんだ。二回目だ。少し言葉を変えよう。話を聞け」


「……」


 一気に冷たく重くなった口調に、恐怖を覚える導架、怒りを覚える導架……。ここでもリアクションは様々だ。しかし小笠原諸島でのジェイドによる大殺戮の報せも当然この導架たちの耳にも入っている。ジェイド程とはいかずとも、この因幡飛兎身も一騎当千。しかも良心などかけらも持ち合わせていない鬼畜にはヨシツネ式フォーメーションも通用せず、ある意味でジェイドより手ごわい相手だ。


「話を聞く」


「物分かりが良いね。賢い。さすがマインの細胞が入っているだけある。本題に移ろう。君たちはその生原稿を盗んだけど、それをどうするつもり?」


「御機嫌よう、スタバ。わたしがこのチームのリーダーシップ導架です。わたしが話します」


「君がリーダーか。君を殺せば、このチームは烏合の衆という訳だ」


「……。『エンジェルNo.9 転生編』の生原稿は、メタ・マインの設計図だという説がある。実際、手にしてみてわかった。わたしたちの中にあるマイン細胞が蠢くような感覚を。これは他のオーパーツとはモノが違う。これを、大阪に持っていく」


「大阪かぁ。わかってるね。ところで、今の君たちはヒジリ製菓?」


「いいえ、違う。今のわたしたちはただの導架の集まり。これが稲尾サラの素体によるものか、マイン細胞によるものかわからないけど、わたしたちは自発的にヒジリ製菓の制御下から離れ、自分たちの目的のために動いた。そして自分たちを呼ぶ声がする方へ行く」


「うぅん。……なるほど」


 鬼畜は顎に手を当て、少し思案を巡らせるようなふりをした。本当は気持ちは固まっている。


「君たちが、ヒジリ製菓ではなく、無論寿ユキ一派やテアトル・Qでもなく、そしてメタ・マインを利用するのではなく、言語化の難しい心の声を第一に動くのなら協力しよう。大阪に繋がるポータルを開く」


「え? マジ?」


「わたしは“鬼畜のスターバックス”。社畜じゃないよ。クソ食らえ、ヒジリ製菓。このことをヒジリ製菓に内緒にしてくれるってんならね」


「もちろん。……」


 しかし相手は鬼畜のスターバックス。全員でポータルをくぐったら転送先がイエローストーンの火口でそのまま全滅もありうる。骨董品導架は生原稿を歴史的に価値のある貴重なものと認識し、使命のためのアイテム以上の感情を抱いているが、鬼畜ごときに芸術や文化を愛でる感性があるとは思えない。


「誰か勇気のある導架、立候補して。最初の一人がくぐり、そこが本当に大阪なら全員がくぐる。ごめんなさい、スタバ。でもまだ信頼出来ないのはわかるでしょう?」


「君たちはみんな義務教育のように『コマンドー』を観ているそうだね。ベネットの言葉を借りれば、もちろんです、プロですから。だよ。何のプロかって? 悪事と嫌がらせのだよ。おいで、最初の導架ちゃん」


 軒下に、薄く背の低いガラスの表面を水滴が流れるイメージに縁どられたポータル。覚悟を決めたアストラル導架が勇気を出してそのガラスを跨いだ。そしてすぐに返事が聞こえた。


「大阪だ! 大阪城だ! 本当にスタバは味方してくれる!」


「言ったじゃない」


 鬼畜は得意げに、うっとりするようなスウィートな笑みを浮かべた。


「ありがとう、スタバの姉御。でもいきなりこの人数を大阪へは目立ちすぎる。悪いけど、徒歩で西へ向かっている別動隊の現在地、奈良の山中に転送してもらうことって出来る?」


「……。チャンスがあれば欲張ろうとするその心意気はとても好きだけど、無理だね」


「なんで?」


「オトモダチが来ちゃった」


 因幡飛兎身はクルクルと回していたハンマーのグリップをギッチリと握り、やや頬を紅潮させて目を凍結させた。その氷の目の先にいるのは、馬鹿げた燕尾服にベスト、ストライプの入ったスラックス、マスカレードマスクを着用して拳銃を斜め上に向けるステレオタイプの怪盗だ。


「重要な導架ちゃんから優先してくぐれ! イツキちゃん……いや、ベローチェに攻撃されればポータルはキープ出来ない!」


「アブソリュート・レイの力! “火”の弾!」


 罵糾云(バキューン)!

 威嚇射撃の火炎弾はあっさりと鬼畜に避けられた。かつての親友の目の氷を融かすことは出来ず、建物を燃やすどころか拭えば消える程のほんの少しの煤しか残らなかった。しかもヒトミのポータル性能はイツキのはるか上を行く。当てる気がない、当ててもダメージを与える気がないとわかっている攻撃を避けるぐらいならポータルのキープも簡単だ。むしろヒトミの目は冷笑でさらに冷たくなった。イツキちゃん……相変わらずの娑婆僧だ。ミリオンから多少は学んだはずだってのにまだ甘い。それにヒトミは勘が良く、イツキのことも熟知している。


「ヒトミちゃん。何をするの?」


「メタ・マインを作る」


「だから、それは許さない。その人造人間たちを使って……」


「人造人間だって? もっと多様性を認めよう。将来、それは差別用語になるかもよ? それにわたしたち托卵ゴア族だって人造人間みたいなものじゃない。何を以てそれを分ける? 人権、人格の有無? それならこの子たちも持っている」


「もうヒトミちゃんを信じられないの。どの言葉も軽すぎる。ハリボテすぎる」


「君は頭が軽いけど、わたしは身のこなしも軽いよん」


 リーダーシップ導架がヒトミにハンドサインを送り、生原稿を持つ導架が大阪に転送されたことを伝えた。残りの導架も大阪城公園に転送すると導架たちの言う通りに混乱を招く。残りの導架はヒトミに加勢する気だ。ヒトミは即座に判断し、足に弾力のエネルギーを溜めて溜めて……限界まで引き絞った弓から放たれる矢のように一直線に、かつての親友に電光石火の突撃!


「ルアッ!」


「アシャッ!」


 イツキは天高く飛び上がって鬼畜のタックルを回避、鬼畜は地面を叩いたハンマーを中心にアスファルトにクモの巣状のヒビを作り、さらにマトモな受け身を取らなかったことで自滅するどころか受けた衝撃をストックし、弾力のエネルギーをリサイクルした。即座に視線を上に向けると、宙返りしながらの大ジャンプで完全に上下逆さまになり、銃口をかつてウサギの巫女だった者に向ける、かつてオオカミの巫女だった者。その表情は暗い。だがかつてのような虚無と悲観ではない。ヒトミは少し笑った。なるほど、ミリオンから学んだ目だ。


「さっすがの化け物フィジカル。実質特異体質二つだもんなぁ。まぁ勝てるけどね」


「アブソ……」


「ルアッ!」


 ヒトミも弾力のエネルギーを再び足で弾けさせ、ハイジャンプ! このままでは頭と頭が正面衝突だ。しかもヒトミはそれでダメージを受けないどころか弾力をさらにストックする。しかしイツキは脅威の化け物フィジカル。常軌を逸したボディコントロールとバネで体勢を入れ替え、直撃予定地点を頭部から腹部にチェンジした。このまま鋼の腹筋で受けられ掴まれればパイルドライバーは必至だ。しかし、ここでイツキにフジの悪影響が出ている。この展開ならもうパイルドライバーが決まったとでも思っているのだろう。そこをミリオンから学んでいたら勝てていたのに。


「Bトリガー! “悪食怪獣ウインストン”!」


 地面に向けたヒトミのハンマーに木の葉や瓦礫が吸い込まれ、消滅する。

 悪食怪獣ウインストン! 吸引力の変わらないただ一つの怪獣! 無差別に吸い込み、蓄え、吐き出す! 今回、ヒトミのBトリガーが吸い込んだのは、地球! 跳ねたウサギは万有引力の速度を超えて大地に戻り、ハンマーに装着された別のトリガーを引いた。


「Bトリガー! “未来恐竜クジー”!」


「アブソリュート・レイの力! “火”の弾!」


 二つの火炎弾が衝突し、激しい閃光に導架たちは目を覆った。イツキの長い長い滞空時間のジャンプがついに終わる。着地と同時に、後ろに目があるような鋭い後ろ蹴り! 背後に迫っていた鬼畜は待ってましたとばかりにゴア族カンフー守りの奥義で威力を無に帰した。そう、無。ここでダメージを受けていればヒトミはエネルギーを溜められたが、無にしたということは、これ以上の弾力は必要なし、つまり今のままでイツキを倒せるという自信か、これ以上やる気はないという意思か。イツキは後者と見た。


「フゥー……。強くなったね、イツキちゃん。懐かしいなァ。トーチランドにいた頃、君はまだティーンだった。今は何歳?」


「レディに歳を訊くのは野暮だよ、ヒトミちゃん。……今はヒトミちゃんより年上」


「努力したんだね。強くなったね。でも、東大に一発合格した人に、勉強がお好きなんですね、というのは誉め言葉でも、浪人して東大に入った人に勉強がお好きなんですね、は嫌味だ。努力は人間を成長させるために必要な行為だ。でも、努力こそ、導架ちゃんたちの言う通り“静かに素早く”。それを短く効率的に済ませられなきゃ無能だよ。……ふふっ。わたしより年上になる程……もしかしてマインより年上になる程? そんな悠久の時を経て、ようやく強くなったね、イツキちゃん」


 鬼畜は口が耳まで裂けそうな程、歪に顔を綻ばせた。それが自分に対する嘲笑だということくらいはウルトラバカのイツキでもわかる。


「さっきの諧謔じみたセリフ、随分とフジに似た物言いだったけど、フジとは寝たの?」


「フジには彼女さんがいる」


「まるで望月さんがいなかったらそうしていたかのようなセリフだ。じゃあミリオンと?」


「畏れ多い。それにフジが言っていた。無愛想二人が両親になるなんてまっぴらごめんだって」


「この問答は、イツキちゃんにとっては特に意味のないものだ。導架ちゃんたちのためのものだよ。導架ちゃんたち。フジに殺された導架ちゃんは、イツキちゃんに血を流す女なのか、と訊いたけど、イツキちゃんは血を流す女だ。当然わたしも。わたしもイツキちゃんも導架ちゃんも改造人間だけど、わたしとイツキちゃんはそうなんだよ。男と寝る行為は、快楽を貪るためや愛の確認だけの用途じゃない。その点、導架ちゃんたちはどうだ? わたしは知ってるよ。可哀そうに。血を流さない女なのに。ハーハー。そういう訳で、今日のイツキちゃんは本調子じゃない。悪いね、導架ちゃんたち。今日はイツキちゃんとは戦いたくない」


 ヒトミはぴょんぴょんとその場で跳ね、溜めていた弾力のエネルギーを全て放出した。イツキはそれを認め、Aトリガーを腰のホルダーに収納した。その目はマスクに隠れて読み取れないが、口は相変わらずの真一文字。トーチランド時代も表情に乏しい子だったが、あの頃の何も考えていない顔ではなく、経験に裏打ちされたポーカーフェイスだ。それでもまだ拙いポーカーフェイスだからマスクで目を隠すのか、それともフジやミリオンと共に過ごし、目を覆う、ということに憧れているのか、或いはその両方か。ヒトミの推理では両方だ。

 それが鬼畜を不愉快にさせた。


「あー……。ちょっと熱くなってきたなァ。君は……。君こそが、マインから最も多くのものを引き継いだ、マインに最も愛された弟子。わたしも顕真くんもマインの一番弟子を狙っているけど、実質君、それも超えられない程、君なんだよねぇ。……それがアブソリュートのミリオンやフジに感化されてんじゃねーよ」


 ぞっとする程冷たい声。トーチランド時代のイツキならアワアワしただろうが、今のイツキはこんな空気のピリつきなど慣れたものだ。それこそ、ミリオンと過ごした経験が活きている。

 ミリオンは普段は冷血気取りの熱血漢で、冗談も言うし顔に似合わず甘党だったりドライブを愛したり部屋の片づけが苦手だったりとそこそこ隙と愛嬌があり、それが親しみに繋がっていた。

 戦いでも頼りになる戦士ではあるものの、戦いの中できっかけなく突然激昂してやりすぎな程までに敵をギッタギタにする悪癖がある。鉄竹伽藍との戦いがいい例だ。あの時の「どうしたミリオン?」を初体験した時に比べれば、ある程度予想出来たヒトミの不機嫌など些細なことだ。


「とはいえ、君はわたしの唯一の親友。だからこそ君を徹底的に愛し、そして否定したい。君をわたしのオモチャにしたい。ショーケースに指紋も吐息もかかる程張り付いてほしがるオモチャ、それが君。君のことが大好き」


「燈さんぶったセリフね。無理してない?」


「ねぇ、わたしたちの会話はまるで同窓会だね。君のセリフの背後にはフジとミリオンがちらつく。……わたしたちはトーチランドを離れ、駿河燈と別れてからいろんな人に会ったんだね。何があっても忘れられない人、覚えていたい人……。その総決算をしよう。うん。今日戦うのはやめておこう。繰り返す。万全の君を、愛し、めちゃくちゃにする。それが終われば、わたしは本当の“悪”になれるはずだから。君を倒せば……。そこで何を得られるかはわからない。後悔か、爽快か。いずれにせよわたしを成長させ、変え、次の世界に導く境界線が君だ。そのお礼を先払いしておく。君と戦うまで、君の仲間とは戦わない」


「他の悪いことは?」


「やめてほしい?」


「もちろん」


「わかった。決戦まではコンディションの調整だけにしとくよ。君も体には気を付けてね」


 鬼畜はすとんとポータルに消えた。残されたのは二十人を超える導架と、ヒトミ曰く万全ではないイツキ。イツキは導架軍団を一瞥し、こちらもポータルで消えた。同じ改造人間のシンパシーか、やはり一騎当千級のイツキでもこの数の導架には今のコンディションでは勝てないという判断か……。


「戻りました」


 イツキの転送先はメッセの事務所。事務所にいるのはメロン本体、そしてそれを守るユキの二人だ。


「ヒトミちゃんは、わたしとの決戦までは大人しくしているそうです」


「それが本当なら大きな戦果ね」


「戦果、か」


 トーチランド所属時代。イツキはまだティーンだった。あの頃はヒトミを抑制ことが戦果、になるなんて思いもしなかった。そしてユキの言葉でイツキの中でも整理がついた。

 因幡飛兎身は、もう敵だ、と。

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