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とある医学部受験生の末路  作者: この世の果てで
私はアンジュ
5/8

アンジュの日常

クロエという友達ができたり温泉に行ったりするアンジュの日常

心霊術をぶっぱなしてからCクラス一行は臨時の教師とともに教室へ戻った

「ええ、彼女は先ほど医務室から街の高度治療院の集中治療室に運ばれました。」

はぁ、面倒くさいことになりそうだな。

「それではこれから彼女が完治するまで私がこのクラスの担任を受け持ちます。

「「はーい」」

「それではこれから異世界語を勉強します。なぜ今の時代に異世界語を勉強するのかと言いますと、300年前の魔王軍との対戦で異世界から召喚された

勇者様によって我々人類が救われたのでその時に異世界の言語を取り込むことで勇者様がいなくなった後でも我々で困難に立ち向かえるようにしようということです」

「先生、その異世界から来た勇者さまっつーのは魔王軍を打ち滅ぼした後どうなったんですか?」

「それには諸説がありますが、現在最も有力な説は、そのままこの世界に残って子孫を作ったとのことです。なのでこの教室にもその勇者様の

遺伝子を受け継いだ人がいるかもしれません。」

「というか、先生、何で異世界なんてものがあるんですか?その異世界ってのは宇宙の行くところを行けばたどり着けるところなんですか?」

「いえ、どれほど宇宙学が進んでも異世界には物理的に行くことはかないません。異世界とは文字通りこの世の理とは違うところなのです。

諸説によれば異世界へのゲートを開くには強力な心霊術を数千人もの優秀な心霊術師が束になって何年ものの歳月を費やして構築した術式を

放つことで生じる心霊場が自然界の理に干渉して開かれるようです。尚、現在に至るまでそれは一度も実現していません。

理由はまず数千人も心霊術師がその時代区分において育たないからです。それに心霊術師もピンキリで高等部を卒業した生徒でも

優秀と判断されるほどになるには卒後何年もの修練を積んでそれでどうにかなればいいなというところで、とてもじゃないが現実的ではないのです。」

「ほへー」

確かに聞く限りでは人類には到達することができそうにないな

いや、待て、それじゃあなんで500年前に勇者を異世界から召喚で来たんだ?

「先生、それではなんで500年前に勇者を召喚で来たんですか?今の話を聞く限り魔王がいた500年前に心霊術師が何千人も束になって何年もかけて

術式を練らなければならないことになるのですが」

「おお、確かに言われてみればそうだね!気づかなかったぜ」

「さすがはアンジュさん目の付け所が違いますね。その時の術者は魔王だったからです」

は?なんで魔王が自ら自分の身を脅かす勇者を召喚させるんだ?

「どういうことですか?」

「はい、当時の魔王はそれはそれはとんでもない魔素を有していて優秀な心霊術師が100人集っても全く歯が立たなかったようです。

そんな魔王ですからその存在自体が心霊術を発動させている状態と変わらないという事です。

簡単に言うと魔王がそこに存在しているだけでおのずと心霊術の術式が構築されて行って、その結果異世界へのゲートが開かれたのです」

「な、なるほどね」

「もとい、ゲートが開かれただけでは勇者はやってきません。しかし一度開かれたゲートに干渉することは優秀な心霊術師にとっては

さして問題はなかったようです。ゲートを開くこと自体が難しいのであって、勇者を召喚する手続きは割と容易だったのです」

「魔王はそのことを知らなかったのですか?」

「はい、さすがの魔王もそこまでは考えに及ばなかったようで言い伝えによると魔王城付近に現れたゲートにたどり着くまで邪魔だてをされなかったようです」

「確か勇者は全部で4人だったですよね。それぞれどのような特徴があったのですか?」

「ハイ、勇者様は各々『剣、槍、弓、盾』の能力を有しておりました。」

「盾はどのように戦っていたのですか?」

「盾は直接相手にダメージを加えることはできなかったようですが、その分自らが盾となり魔王軍の猛攻をすべて守り切ったとの言い伝えがあります」

それを聞いた私は思わず身震いした

その理由をこのころの私はまだ理解できなかった


そのような問答を続けていると金の音が鳴った


「はい、それでは今日の授業は終わりです。皆さん気を付けて帰ってください」

「「「わーーい」」」



私が教室から出ようとしたところでクロエが話しかけてきた

「アンジュちゃんさっきの授業すごかったね。前の先生の目を溶かしたのも驚いたけど、新しい先生との問答も度肝を抜かされたわ。

私あそこまで考えが回りませんわ」

「そんなにすごいものじゃないさ、私はただ本当に気になったことを聞いているだけ。それよりも今日はどうするの?やるの?」

クロエはそれを聞くと一瞬ハッとして、すぐ我に戻るなり

「当り前よ!今日こそ心霊術を使えるようになるんだから!!」


そうして校庭に出るため廊下を歩いていると

「あ、あの...」

後ろを振り返ると一回り背の低い女の子が立っていた。

髪の色は艶やかな紺色。身なりはクロエほどではないがそれなりの良家の令嬢と見える。

ちなみにクロエの髪の毛は文字通り黒だ

私の髪色は栗色だ

「どうしたの?」

「さっきの授業をみました」

先生の芽をつぶしたことに抗議しに来たんだろうか、面倒なことになる前に消そうかk...

「ああ、それで?」

「あ、あたしもアンジュさんが先生と問答をしている姿がかっこよくて思わず身震いしました」

変な言い回しだな

「つまり、、」

「あたしの師匠になってください!!!」

そうきたか...

「いや」

「へ...」

「友達でいいよ」

女生徒は一瞬絶望に顔を歪ませたがすぐに取り直して顔をほころばせた

「ハイ!よろしくお願いします!!」

そう言って女生徒は元気に返事をした

「そういえば君名前は?」

「あたしはルナ=マイルドです」

「ルナね。よろしく」

「私はクロエですわ。よろしくね」

「はい!」


そういって新しく加わった仲間?とともに校庭に向かうのだった


「さて、じゃあルナも加わったことだから簡単に初めから説明するね。心霊術は座学だけではできない。とにかく神経を研ぎ澄ませて

ありのままに自然を感じるんだ。心は開かないといけない。心というのはモーダルチャンネルという言い方もできる。

これをしないと自然から十分な魔素を得られないんだ。たとえ話を言うと魔素は自然界に無尽蔵にあるんだけど、それを受け入れて処理する

受け手は受け入れる段階で想定している器を無意識に規定しているんだ。だからまずはその規定している量がどれほどなのかを知らないことには

ことは進まないわけだ。それができればちょっとずつ受け入れる量を増やしていく。別の言い方をすれば許容できるラインを広げていくってわけさ。

そうすれば回収できる魔素の量がうんと跳ね上がって後は技術、つまりは自分の感覚を信じてイメージする技量ってわけだ」

「なるほど~」

ルナは理解してくれたようだ。

クロエは...なぜお前が誇らしい顔をしている...

「じゃあやってみようか」


「うーん、あたしできているのかわからないわ」

「感覚の話だからね数値化はできないけれで、これだといえるピンとくるところがあるからそれに向かって感覚を少しずつずらしていくんだ」

「あっ!これね!!」

「うんうん、そのいきだ」


日が沈みかけるころまでクロエとルナは修練に励んだ

私は、その間授業できいた魔王と異世界について考えていた


「じゃあ、今日はお開きにしようか」

「はい」

「はいですわ!」

「「アンジュさん今日はありがとう!!」」

そう言って二人は満面の笑みで徒歩で帰っていくのだった

二人は心霊術学園から徒歩で20分ほどのところに住んでいるとのことだった

家の方角は違うようだけど


そうして私はほうきにまたがって家路につくのだった

「あら、アンジュお帰り」

「ただいま」

「今お姉ちゃんが公衆浴場にいくところだからアンジュも一緒についていきなさい」

「お母さんはその間どうするの?」

「私は晩御飯を作って待っているわ」

「わかった」

するとアリスが二階から身支度を整えて降りてきた

何度見ても6年前の傷跡が生々しく、それでいて痛ましく思う。

「私が治さなきゃ...」

私はどうやら無意識にそうつぶやいたようで、それを聞いたアリスは顔を少し曇らせた

「じゃあお母さん行ってきます」

「いってらっしゃい」


私はアリスと一緒に絨毯に座った

「じゃあ行くよ」

アリスがそういうと絨毯は宙に浮き始める

この絨毯に初めて乗ったのは2か月前、姉が研究で得た資金で購入したのだ

あの時は私もとても感激していた。

絨毯は並みの給料では買えない高級品だ

姉が働いているところが王国御用達の心霊術研究所ということもあり金払いはいいようだ

今では慣れてきたが、それでもほうきとは比べ物にならないほどの魔素効率を備えている絨毯の魅力は語りつくせないほどだった


そうして私たちはいつもの...ではなく街の公衆浴場にいくのだった

「お姉ちゃん?今日は何でこっちに来たの?」

「いつもの温泉も飽きてきたでしょ。新規開拓よ」

「うんうん」


王国指定の温泉ということもあり、施設から漂う高級感は凄まじい

私はその作りに動揺しながらアリスの服をつかんでついていくのであった


「大人1枚、子供1枚お願いします」

「はい、おや、あなたは心霊術学園を首席で卒業されたアリスさんですね。

今は王立研究所で心霊術の研究をされているようですね。ここは王立温泉浴場なので、関係者は無料で使えるようになっております。

どうぞ妹さんとともにお入りください」

そういうと受付の婦人は温泉のゲートを開くのであった

「ありがとう」


アリスとお風呂に入るのはかれこれ一年ぶりだ

脱衣所でお姉ちゃんは服を脱ぐ

お姉ちゃんの身体はいつ見ても奇麗だ

その奇麗さが右手の傷跡の痛ましさを増長させている


私もお姉ちゃんに続いて服を脱ぎ裸になる

「あら、アンジュ少しおっぱい大きくなったんじゃない?」

「もう!お姉ちゃん」

「うふふ、6年前はあれほどおっぱいおっぱい言ってたのに」

「お姉ちゃんのおっぱいは大きすぎるの!」

そう現にアリスの乳はEカップほどあったのだ

私は...AAカップ。うるさい!!

私とお姉ちゃんは浴室の扉をくぐってその広さに思わず口が開いた

「大きいわね...」

村の公衆浴場の10倍は馬鹿にならないほどの広さがある

利用者の会話からも主に貴族が利用しているようだ

湯船につかる


「アリス、私の手のことは気にしないで」

「え?」

「家を出る前、うんうん、いつも私の手を見るとアンジュは何かを後悔するように悲しい顔をするんだもん」

「それは...」

「私はあのドラゴンを倒すとき、大切な妹を死なせたくない思いでいっぱいだった。それこそあそこで仕留められなくて、アンジュが

傷つくようなことがあったらそれこそ私は手のことなんか比にならないほど後悔したと思うわ。だからアンジュはアンジュのやりたいようにしなさい」

アリスは真剣にそれでいて目を細めて温もりのある口調で言った

「でも」

「アンジュは凄いわ。あなたは気づいていないかもしれなけど、今のあなたは私の力を大きく上回っているわ。

この前あなたが何気なくはなった心霊術を見たとき、私は唖然としたわ。なにせあなたの即座に、それでいて何気なくはなった心霊術は

私が1時間集中して術式を構築しないと発動できないものだったのよ。あなたはとんでもない才能を持っている。

あなたは前代未聞のことを成すわ」

初めて聞いたぞ、いやいやいやいやいやいやいや、私がお姉ちゃんよりも心霊術がうまい?

いや、ありえないでしょ

だって私はお姉ちゃんを追いかけて修練してきたのに、心霊術学園を首席で卒業してそのエリートが就職する王立研究所で働いている

お姉ちゃんよりも心霊術がうまいだ?そんなことがあるはずない

「なにをきょとんとしているのよ」

姉はさも当然のように言い放つ

さっきまでの空気ががらりと変わったのを感じた

「そうなんだぁ。。ぁぁ」

半信半疑のまま私は別の湯船にうつった

アリスは私が一人になりたいのを察したのかついては来なかった

露天風呂に行く

今は春なので夜風がとても気持ちいい

雲一つない夜空に満月が輝いている

その周りに星がちりばめられている

その星の光の一つ一つが異世界そのもののようにも見える

なんて私は思索にふけっていた

すると遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえる

お姉ちゃんの声ではないようだ

「アンジュさーん」

その声の正体はルナだった

「奇遇ですね、この温泉にはよくこられるのですか?」

「いえ、今日が初めてよ。そういうルナはよくここにくるの?」

「私はここのオーナーの娘ですの」

お?初めて聞いたぞ。てか偶然にもほどがあるだろ

始めてきた温泉で今日仲良くなった子と会って、その子がこの温泉のオーナーの娘ときた

「まったく、あの学園の生徒はこんなブルジョワばかりなのか?」

「ブルジョワって、、」

ルナはハハハと声がかすれるように苦笑する

「今日は空がきれいだね」

「ええ、私はここから見える空が好きですわ。温泉の水面からあふれる湯気、風になびく木の葉の音、そして輝く星々

どれをとってもここが私の居場所なんだって思える。ここは私の居場所なのですわ」

「そうか」

すると遠くからまた私の名前を呼ぶ声が聞こえる

今度はお姉ちゃんの声だ。どうやら温泉を出るらしい

「あ、お姉ちゃんが呼んでるから私行くね」

「はい、また明日学校であいましょ」

そういって私はルナと別れてお姉ちゃんと浴室を出るのであった

「ぷはー」

アリスは左手で牛乳瓶を持ってぐびぐびと牛乳を飲みほした

「やっぱり風呂上がりのミルクは最高ね。アンジュも飲む?」

「わたしはいいよ。それより早く服着ないと風邪ひいちゃうよ。春になったからってまだ肌寒いのだからそのままでいると風邪ひいちゃうよ」

「ふっふーん私を誰だと思ってるのよ、私は心霊術で病気対策は万全なのさ」

「はじめてきいたよ!?」

この姉、ほんと次から次へと新しいことをやって見せる

まったくお姉ちゃんには敵わないや


私たちは温泉の暖簾をくぐり外に出た

お姉ちゃんはポケットから片手に乗るほどの小さな布切れを取り出して

ボフッと膨らました

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、あの絨毯をそんなに変幻自在に大きさを変えられるとか聞いてないよ!?

マジでこの姉どこまで私を驚かせるつもりだ

そうして私たちは絨毯に乗って帰路に就くのであった


「そういえばアンジュと話していた子は誰なの?」

「今日学校で知り合った子。なんでもあそこの温泉のオーナーの娘らしいの。私もさっき聞いて驚いたわ」

「はあああああああああああああああ!!!????」

姉が声が張り裂けんばかりに奇声を上げる

嫌そこまで驚くか?

「あんたどれだけ金持ちの友達もってるの!?」

「他にはロメール家の令嬢もいたな」

「ああああああああああああああああああああああああ」

やめて、お姉ちゃん、私の中の理想のお姉ちゃん像が崩れるからそれ以上壊れるのはやめて

「今度家に招待しなさい」

「えっと...」

「しなさい」

「はい...」

姉の迫真の要請に思わず私は頷いた

お姉ちゃん、ここ数年でいったい何があった


そうして私たちは10分もたたないうちに家に着いた

ちなみに絨毯の早さは術者の技量にもよるが概ねほうきの2倍なのだ

そして王立温泉浴場は心霊術学園から徒歩20分の距離にあるのだ


「おかえりアリス、アンジュ、ご飯ができたよ」

「「わーい」」


ママの作る料理はごっこうの食堂よりも数段においしい。

母の味補正もあるだろうが、それでも格別だ


そうしてその日の夜は過ぎていった


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