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第7章

「社長、川上さんという方についてお話をしたいとお客様がいらっしゃっていますが・・・」

社長室へと秘書が入って来た。

「通してくれ。いや、そのままでいい。ちょっと外にでてくる。緊急事でないかぎりつながないでくれ」

そういいすばやく出掛ける用意をした。

「はじめまして、私くし藤川かすみと申します。」

私はわざわざ受付まで降りてきた社長に驚いた。

「すまないが外でお茶しながらでもいいかな。」

初めて社長を見たがとても誠実そうで人を陥れるような感じがしなかった。

「まずは用件を聞こうか。」

コーヒーが二つ運ばれてきてやっと口を開いたのは社長だった。

「川上まゆみさんは一ヶ月前に私くしのリバイタル会場にて何者かにより殺害されました。そして昨日江口専務が殺害されました。」

ゆっくりと頭の中を整理しながら言った。

「存じております。江口は今日が通夜だそうです。」

なにひとつ表情を変えずにいった。そのことに対して気になるが今はそれよりも私が知りたいものは…

「お願いします。10年前のバス事故の真相を教えてください。」

想定範囲内ならば話は繋がっている。

川上さんは社長の元愛人、江口専務は当時の主任で整備士の直属の上司…

妙に整備士に肩入れをする犯人…きっと身内かなにかだろう。そしてきっと次は社長を狙うはず。

「どうゆう意味だね。あの事故は江口が犯人をわりだしたじゃないか。」

社長は困ったように言う。

しかし私は諦めない。両親や大沢さんの為にも…

「本当にそのことだけが真実なのでしょうか?お願いします。私は本当のことを知りたいんです。」

何度も頭を下げる私。

「君は、どうしてそこまでして・・・」

私はなにかを期待していた。わざわざ外にまででて話しを聞いてくれようとしている社長に

「そんな人に期待してもなにもかわらないよ藤川さん。」

いきなり私たちの前に現れた一人の男性。

「中谷くん。君がどうして・・・」

社長の知り合い!?私のことを知っている人…

「あなた・・・メールの人?」

私の問いににっこり微笑む。背筋が凍るほど冷ややかな目のまま…

「藤川さん、フライングですよ。約束より前に標的に会うなんて。まぁ、仕方ないから僕が話してあげますよ。江口から聞いた真相を・・・」

そういい中谷という男は語り始めた。社長は困ったようにただ黙り込んでいた。

「社長、彼女はあなた達のエゴに巻き込まれたかたの娘です。そして僕はエゴにより無実の罪を被され自殺した整備士の息子です。」

中谷の言葉にはっとする社長。中谷の顔は殺人者そのものだった。

「どうやらかすみはここに来たようです。秘書がいうには30分くらい前に来客…話しを聞く限りだとかすみがきて外に行くといったままです。」

車で待っている宮下さんと総理に言った。

「近くの店をしらみっつぶしにいくしかないか。」

とりあえずあいつは無事だ。ここへは一人でやってきたみたいだ。緊急だと言っていたということは次に狙われているのは社長。その社長と一緒にいるということは危険には違いないが危害を受けているわけではない。とにかく急がなければならない。

「さて、藤川さんは彼の元に戻ってくれませんか?」

彼からの意外な言葉に驚く。

「君までここにいたら予定が狂いそうでね。いやぁ~打算だったよ。予定通り日本へは来てくれたものの駒として利用しようとしたのにまさか刑事さんと恋人同士になるなんてな。」

この人なんでこんなに知っているの?

「君のことはなんでも知っているよ。ずっと見ていたからね。」

私の反応を楽しむかのようにいう。

「社長さん、ダメだよ逃げたりしたら。」

私たちがやりとりしている中ゆっくり離れようとした社長。

「中谷さん、こんなことしても誰も喜ばないわ。あなたがあの事故でなにをなくしたかは知らない。死んでしまったら一時の気休めにはなる、でも生きてちゃんと償ってくれればこの人は一生そのことを背負って生きてくれるわ。」

しかし私の声は彼には届かなかった。

「オレは死んで親父に償うつもりだ。死ななくていい親父が死にこいつやオレが生き残る…不平等じゃないか?」

中谷さんの目はすごく悲しそうだった。

「・・・すみ!かすみっ!!」

誰?遠くで呼ばれる名前を声がしていた。ゆっくり私は目を開いた・・・

「・・お・おさわさん」

目の前にぼんやりとみえる顔。

「大丈夫か!?」

ゆっくりと頷き、大沢さんに支えられていた体を起こした。

「ごめんなさい」

ほっとしたものの自分の行動を思いだし大沢さんから離れる。

「無事ならいい。」

そっけない返事・・・

「藤川さん、たてるかい??」

離れていく大沢さんのかわりに手を差しのべてくれる男性。

「深川さん・・大丈夫です。ありがとうございます。」

立ち上がった私は大沢さんのほうへ目をやった。一緒にいる刑事さんと話している。

「ここには中谷はいない。とにかく彼女を安全な場所へ。」

刑事さんがちらっと私を見ていった。

「そうですね。総理 彼女をお願いしてもいいでしょうか??」

私とは目も合わせてくれない…怒っている?そんな様子じゃない…もう私のことなんてどうでもいい…

この状態でマイナスでしか物事を考えられなくなっていた。

…いまは大沢さんのことではなく中谷さんのことに集中しないと…

「私もつれていってください。中谷さんは社長を殺したら自分も死ぬつもりです。」

私を連れていこうとする深川さんはびっくりし

「危険だ。」

叫んだ。

「彼は亡くなった整備士さんの息子。当時彼は父親に罵声を浴びせた。父親のせいだと思い込み・・・」

深川さんの反応とは違う彼を見ながら私は続けた

「彼が社長を殺害する時間は20時・・・あの事故があった時間を選ぶわ。あと2時間・・20時直前に社長を殺害するはずです。」

大沢さんはこっちを振り向くことはなかった。

「でも今すぐにはしないと思う。私のせいで予定が狂ったといっていたわ。彼の予定では私が社長を殺害するはずだった。もちろん私もそのつもりで当初は帰国したんですもの」

私の言葉にやっとこっちを向いてくれた大沢さん。

「そんなことしても意味がないのはわかっていた。でもどうしても母や佐久間さんを殺した主犯が生きているなんて許せなかった…大沢さんに会うまでは…」

しっかりとした眼差しで大沢さんを見た。

私の言葉に驚きの表情になっていた大沢さん…すぐさまほっとした顔になった…

そんな顔を見て楽しむ刑事さん

「大沢、意地を張らずに自分に正直になれ。さいわいここにはオレと総理しかいない。」

そういい深川さんをつれて先に外へいった。

「あの…」

なんの反応もない大沢さんに対してかなり不安が襲ってくる。が、思い切ってみることにした。

「私、この事件は最後まで見届けないといけないと思っています。だから…」

続きの言葉を発しようとしたら、いきなり口を塞がれた…

「オレに一体何度死ぬような思いをさせる気だ」

ゆっくり抱きしめられボソッと大沢さんはいった。

私は、大沢さんのその言葉が嬉しくつい泣いてしまった

「ったく 、泣きたいのはこっちだ」

そういいもう一度、口を塞がれた。

「お前といるとオレはオレでなくなる気がするよ。せめて危険に巻き込まれるのらオレのそばにいてくれ。じゃないとお前を守れない」

私の頭をぐしゃぐしゃとまぜ再度抱きしめられた。

「よし、外に行こう。中谷を探すぞっ!!」

すっきりとした顔をした大沢さんは私の手をとり外へ足を進めた。

これから、この事件の最後を見届ける覚悟を再度決めた私は、気が付かないうちに大沢さんの手を離さないように力を入れていた。

その時、大沢さんがの顔が緩んだのを私は残念なことに見逃してしまった。


次回更新予定12/2(月)

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