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第3章

「えっ?総理大臣宛に手紙?」

帰宅した、大沢さんは言える範囲内で事件の情報を教えた。

「その内容が今回のことと関係ありそうなの?」

私の問いに考え込む大沢さん。

「君は日本にいなかったから知らないかもしれないが…十年前にバス事故があったのは知っているかい?」

夕食が用意してあるテーブルに座る大沢さん。私もこの話が長くなると思い食事の用意を中断し座った。

「あの事故の時はまだ日本にいたわ。いろんな人が犠牲になったわ。」

あの頃の私は11才だった。あの事故をきっかけに私は初めて孤独というものを味わった。

「最近になってテレビの特番であの事故の真相をあばこう。みたいな企画が出てね。」

大沢さんは、テーブルの上にある食事を手でつまみはじめた。私は、すかさずおはしをとりにいき大沢さんに渡した。

「ありがとう。ただの10年経ったからとかの特番ならまだよかったのだ。」

私も、食事をすることにした。

「どーゆーこと?」

意味ありげな大沢さんの言葉に不安を抱く。

「君がリバイタルを開いた日がちょうど事故があった日で、その時亡くなったピアニストの再来と噂されている君が…」

大沢さんは言葉を濁らせた。

「私があの日を選んでしまったが為にマスコミのかっこうの餌になってしまったのね。ごめんなさい。」

私は謝ることしかできなかった。

「まいったなぁ、君を困らせるつもりはないのだ。ただ・・・あの日あのバスに親父と婚約者が一緒だったんだ」

とてもつらそうな大沢さんをみていられなくなり私は椅子から腰をあげ大沢さんを後ろから抱きしめた。

「私の軽率な行動であの事故の被害者のご家族に申し訳ないことをしてしまったわね」

そんな私の言葉にそっと大沢さんは私の手に自分の手を重ねた。

「きみのせいじゃないのはわかっているのだ」

でも言わずにはいられなかったのね。私は腕に力をいれた。

「・・・本当は言うつもりはなかったのだけど。」

そっと私は大沢さんから体を離し荷物の置いてある部屋へはいっていった。

大沢さんはなにもいわずにあとから部屋へはいってきた。私は、バックの中から二枚の写真を取出し大沢さんに手渡した。

「有馬 由貴・・・」

手渡された写真には一人の女性と小さな女の子が写っていた。もう一枚にはそのふたりともう一人男性が幸せそうに微笑んでいた。

「有馬由貴は私の母なの。一緒に写っているのは母の仕事のパートナーであり婚約者でもあった佐久間 幸弘さん」

藤川かすみの母が有馬由貴の娘だとは公表していなかった。実力でやっていきたい気持ちと比べられるのがいやだったからだ。

「きみが有馬由貴の娘だとは・・・君は知っていた?オレが有馬由貴の婚約者の息子だと。」

大沢さんにどう思われるかが怖かったが私は真実を話すことを決めた。

「いいえ。知らなかったわ。さっきの言葉を聞いて考えたら、よく似ているわ。佐久間さんに・・・本当のことを言えば、日本に戻って来た理由は事故の真相を知りたかったからなの。」

じっとしていられず私は部屋をウロウロしていた。

大沢さんはベッドに近寄り腰をかけた。

「あの日を指定したのは偶然じゃなく君のお母さんと親父の供養の為なんだね」

大沢さんの問いに頷く。そして再度、部屋の中をウロウロした。

「母は佐久間さんを愛していたわ。そして佐久間さんも。私は佐久間さんを本当の父の様に思っていた」

気がつくと目には涙が溜まっていた。大沢さんにバレないように私は大沢さんに背を向けた。

「藤川さん、こっちを向いて」

大沢さんは私の左腕を掴みそういった。が、私は首を振った。

大沢さんはふぅ~とため息をつき私をとりおもいっきり自分のほうへとひっぱった。

その勢いで大沢さんはベッドに仰向けの状態で倒れ私はその上におおいかぶさった。

大沢さんは立ち上がろうとする私の体を逃がさないようにつかまえていた。私は逃げようと思えば逃げられたのだが、おとなしくすることにした。正直、この心地よい腕の中にもう少しこのままでいたかった。

大沢さんはそれがわかっていたかのように微笑んだ。

「逃げないの?」

大沢さんはいじわるっぽくいった。

「イヤだっていったら、あなたはおとなしく逃がしてくれるのかしら?」

ニッコリと微笑む。いつのまにか涙は枯れていた。

「オレはそんなにできた人間じゃないんでね」

気がついたら私の上に大沢さんがおおいかぶさった状態になっていた。

そして二人は自然と唇を重ねていた。

最初は軽くそして徐々に互いを味わいながら深く口づけをした。


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