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第3講 評論文の解法

目次


評論文の解法

● 評論文を要約する、とは

● 過不足ない要約の方法

● 250字で本文全体を要約せよ、という大学の敗北宣言

● 重要語句の抽出





講義内容


● 評論文を要約する、とは


 さて、私は今まで長々と、現代文の問題は要約することがすべてだ、と書いてきました。

 では、実際に評論文の要約方法に入りましょう。

 最終目標は、自分で問題と解答の両方を作れるレベルになれることですが、そのための入り口は、まず出題者を信じてみることです。


 基本的に、出題者である大学の先生方は、受験者よりも経験値が高いですし、頭も良いです。


 出題者が設問をするとき、必ず出題範囲である本文を分解して、要約を作っているのです。評論文の構成は、基本型や門構え型など、様々なパターンがあります。逆に言えば、評論文は、内容を概略図で書くことができる、ということなのです。


 この、評論文を概略で表すこと、それが設問数に直結するのです!


 例えを、上で書いた基本型と門構え型で考えてみますね。



・基本型

 1:問題提起

   a:実例1

   b:実例2

   c:実例3……

 2:理論構築

   a:論証1

   b:論証2

   c:論証3……

 3:結論


・門構え型

 1:問題提起と結論

   a:実例1

   b:実例2

   c:実例3……

 2:結論(と問題提起)



 どうですか?

 こんな形の評論文、読んだことないですか?

 この二つは、どちらも設問数は3つか5つになることが多いです。


 逆に言えば、設問数と設問内容を読むと、出題文がだいたいどのような形をしているか、わかるっていうことですよね?

 このことを意識して問題を解いたこと、ありますか?

 相手は理路整然(りろせいぜん)とした文章のハズです。


 だから、その文の形まで理路整然と美しくなっていくのは、当たり前のことなのです。


 そして、文章の形がわかってしまえば、要約は(ほとん)ど終わるのです。

 ですから、文章を読んでから解く人も、設問を読んでから解く人も、設問の数や内容に注意して、文章の形を(とら)えることをやってみてください。


 設問が必要十分であれば、それで過不足ない要約(丶丶丶丶丶丶丶)が見えてくるハズです。





● 過不足ない要約の方法


 過不足ない要約とは、なんでしょうか。

 簡単です。記述した解答に必要な重要語句(キーセンテンス)がすべて(そろ)っていて、重複がない要約のことです。


 そもそも、上で書いたように綺麗な形の文章で、それぞれのまとまりについて設問されるなら、重要語句の重複なんて起こりません。


 なので、評論文の要約に求められるのは、重要語句の抽出と、制限文字数内での文章化だけということになります。


 そして、重要語句は「てにをは」を含めて、だいたい12~15文字でひと(まと)まりです。


 つまり、60文字以内で、と設問されたら、本文の設問範囲から4~5つの語句を持ってきて、繋げて解答欄を埋めましょう、と言っているのです。


 と、重要なことをサラッと書きましたが、そういうことです。

 設問が記述式なら、文字数で抜粋するべき語句の数がわかるのです。

 これも意識したことがありますか?

 解答・解説集を「ふんふん。」と読むだけで、納得した気になってなかったですか?

 

 では、今日から意識して問題を解いて、そして意識して解説を読んでみましょう。


 その解説がキチンとしたものであれば、私の書いていることが納得できると思います。そして、そういったことを意識して解いていくだけでも確実に点数が伸びていくと思いますよ。





● 250字で本文全体を要約せよ、という大学の敗北宣言


 さて、評論文には困ったちゃんな設問があったりします。

 それが、「本文全体を要約せよ。」という大学側の敗北宣言です。


 なぜこれが敗北宣言なのか、ここまで私が書き連ねてきたことを考えればわかると思います。

 本試で解答を続けてきた受験者が、もし、「本文全体を要約せよ。」なんて設問を見てしまったら、ですよ? 最後の最後でもう一回、今まで書いてきた同じ重要語句を書かされるという事実に直面するのです。

 つまり――、


 今まで書いてきた解答は、一体なんだったの?


 という話なのです!

 全体を要約させるなら、その問題だけで良くないですか? 模試ならまだしも、本試で出題されたら、その大学に入るのを躊躇(ちゅうちょ)するレベルです。


 だって、「我々には、この程度の能力しかない。」と公言しているのと変わらないじゃないですか。

 正直、名指しで大学をこき下ろすのは気が引けるのですが、2010年の香川大学の評論文の問題、酷いなんてものじゃないです。

 「本文全体をふまえて説明せよ。」という敗北宣言は当然しちゃっているのですが、その(ほか)にも、解答に一切関わらない段落が出来るように設問してしまったり、抽出するべき重要語句の重要度が、設問間で統一されていないので、重要語句の抜き出しに不安を持ってしまう上に、重要語句の数の設定が間違っているなど稚拙(ちせつ)な点が多く、悪問の鏡というべき悪い見本でした。


 それとくらべて首都大学東京の設問は素晴らしいです。難易度も絶妙で、練習を重ねたい中級から上級者に向けた良問中の良問を出題してくれています。

 何より素晴らしい点は、設問の美しさです。2010年の前期日程の2問目のことです。一段落中に傍線が2本ありましたが、片方は記述式で、もう片方は択一(たくいつ)式問題でした。それを見たときは、両方とも記述式問題だと思っていたので、この傍線で何を記述すれば良いのかと首を(かし)げましたが、設問を読んで納得でした。


 トリハダが立ちましたね!

 出題の、あまりの見事さに、本気で出題をした先生に会いに行こうとひと月ほど考え込んでしまったほどです。


 そしてもう一つ、ここで書いておかないといけないのは、再三登場する2010年からの出題です。

 それは東京大学の前期日程第1問でした。

 さすがは東京大学です。設問は素晴らしく、理路整然としています。ただ、東京大学のように、指定の枠があるだけで、文字数の指定が無いような場合、私は25文字を一区切りにして、何行書けるスペースがあるかで、判断しています。

 さて、この年の問題ですが、一見すると最後の設問が、今まで書いてきた「本文全体の要約」系問題にも見えました。

 実際に、いくつかの過去問の解説でも、そう捉えて書かれているのを確認しています。


 ただ、よく読めば違うことがわかります。


 それに、あの東大が敗北宣言を出すのだろうか、というのも疑問です。

 疑問でしたから、慎重に出題を見直しました。


 すると、本文が、まるで尻切れトンボのように「え? ここで終わるの??」という途切れ方をしていることがわかりました。

 一度、そんな印象を抱いてしまうと、さらに疑問が深まります。

 敗北宣言をして、さらに本文はブツ切れ?

 そんな大ポカ(丶丶丶)をやらかすのでしょうか?


 ええ、やらかしません。


 東大と言えば、数学がわかりやすいのですが、高校までの教育に物申したいのか、前衛的なチャレンジをしたいのか、時々奇妙な出題をすることが知られています。

 そう、2010年の問題も、その(たぐい)だったのでしょう。


 設問の、本当の意図は、「本文の論を踏まえて、本文の続きを記せ。」だったのだと思います。


 すると、すべてが納得いくのです。昨今、国語の試験に、小論文のような記述をもっと増やそうという動きがありますが、東大は、少なくとも2010年の段階で、受験してくる学生のレベルを測っていたと考えられますね。

 それはさておき、本当の意図に気が付けば、あとは素直に解くだけです。





● 重要語句の抽出


 この講の最後に、重要語句の抽出に関して書きます。

 文章の形は、設問からも推測ができ、重要語句の数も、設問から推測ができることを書いてきました。

 では、どれが重要語句なのか、その推測方法はないのか、ということに疑問を持つと思います。

 

 結論から書きますと、多すぎて、逆にありません。


 というのも、小学生の頃からずっと、国語で学んできているハズなのです。

 例えば、逆説の「だが・しかし」の後ろが本当に言いたいことですよ、とか、順接の「つまり」の後ろは今までの説明を短くまとめたものですよ、とか。

 パラグラフ・ライティングでは、段落の頭に結論を持っていき、段落の最後は次の段落に繋がる文章になっていますよ、とか、評論文では段落の頭かお尻に重要語句がありますよ、とか、色々知っていると思います。


 というよりも、大学側が見たいのは、この、重要語句の抽出なのです。


 現代文の問題は、要約を作ることだけだ、と書きました。それは、相手の言いたいことを適切に捉えられる能力があるかどうか、測りたいからだ、と書きました。

 つまり、重要語句の抽出作業こそが、評論文の本質で、そこに全力を注げるように文章の形だとか、重要語句の数の推測だとかを考えなくても出来るように訓練しておくことが、修学者に求められているのだと思います。








→次講「小説文の解法」

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