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スライムさんと幼女メイド  作者: どらぬこ
第一章 悪徳商人編 第一幕 スライムさんと幼女メイド
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第8話 とある冒険者のありふれた夕暮れ、なのです。

薬草の採取依頼とついでに白黒熊モノ・グリズリーを倒し、スラくんが死骸しがいを解体して樹海を後にしました。


帰りがけに雑魚ざこを倒しつつ、特に問題もなくクライダの街に帰って来たのです。


街門の衛兵のおじさんはもう交代していて、若い衛兵さんでした。

ギルドカードを見せて街に入り、依頼の達成報告のために寄り道せずに冒険者ギルドに向かいます。


冒険者ギルドに近付くと、昨日と変わらず建物からは喧騒けんそうが聞こえてきました。

中に入ると、さすがに昨日のように絡まれることもなく、朝の受付嬢さんに依頼の完了報告をしました。


「あら、やっぱり中位魔獣オーディナルが出たのねぇ」


と、受付嬢さんは微笑みながら依頼の処理をはじめました。


この受付嬢さんは若いのですがベテランらしく、いつも手際良く対応してくれます。

あまり子ども扱いしないので、リリィはこの受付嬢さんをちょっと気に入ってるのです。


「えっと、薬草の採取依頼の報酬が小金貨1枚で、白黒熊の討伐報酬が金貨2枚--報告通り老体種エルダーなので追加で1枚、素材の買い取りが金貨2枚、合わせて5枚、と。中位魔獣の単独討伐だから、中々良い稼ぎですね。贅沢しなければ冒険者パーティーが1ヶ月は暮らせますよ」


「はいなのです! 生きるためにはお金は大事なのです!」


「じゃあ、ギルドカードに入金でいいですか?」


「それでいいのです!」


受付嬢さんは微笑むと、カウンター内に置いてある魔道具で処理をします。


「はい、これで完了です。カードをお返ししますね。またよろしくお願いします」


「ありがとうなのです!」


笑顔の受付嬢さんから入金済みのギルドカードを受け取り、リリィはほくほく顔でギルドを出ます。


「スラくん、予定よりもうかったから、今晩はちょっと豪華な晩御飯ディナーにするのです!」


『うむ。それはいいな。スライムの吾は何でも食せるが、美味い食事は人生を彩るからな』


「そうです! 今日はクライダのお店を新規開拓するのです!」


『うむ。楽しみだな』


リリィとスラくんは、美味しいお店を探して繁華街はんかがいに繰り出します。


σ


「むー、これは美味しいのです!」


『うむ。美味である』


リリィたちは広場から少し外れた路地にあるもの静かなお店に入りました。

〝深緑の小人亭〟というお店です。


名前の通り、小人族ドヴェルグさんが経営しているお店なのです。

さっきから、リリィと大して変わらない身長の女性がてけてけと給仕をしています。


リリィが食べているのは〝馬鹿まじか〟のステーキとシチューなのです。

馬鹿はお馬さんに鹿みたいな角が生えた下位魔獣ですが、あまり強くないので下級狩猟者(ハンター)が頑張って狩ってくるのです。


馬鹿はポピュラーなお肉として人気があるのです。

決して〝バカ〟と読んじゃいけないのですよ?


あっ、狩猟者は冒険者の中でも樹海で魔獣狩りを専門にしている人たちなのです。

迷宮で魔物を倒している冒険者は、探索者と呼ばれているのです。


どちらも得意なのが冒険者で、リリィのようなスティール級以上が正式な冒険者なのです。


えっへん!


『むう、この店の料理人シェフは中々の傑物けつぶつであるな。広場か表通りで腕を振るえば繁盛はんじょうするのではないか?』


そうなのです。

お値段も割安でいいお味の割には客席は半分も埋まってないのです。


スラくんの食べている料理は、今日倒した白黒熊モノ・グリズリーの煮込み料理なのです。

筋が張っているのでステーキとかには向きませんが、長時間煮込んだものはお肉が柔らかくなって美味しいのです。


「スラくん、リリィの馬鹿と白黒熊のお肉をひとつつづ交換するのです。そっちも食べてみたいのです」


『構わん。吾も馬鹿の肉を食してみたい』


リリィとスラくんは、仲良くお肉を交換して、それぞれにお口に運びます。


「むっ! これはすごくとろとろで美味しいのです!」


『うむ。こちらの馬鹿のステーキも美味であるな。歯ごたえがたまらぬ』


ん?

スラくんって歯、ありましたか?


まあ、細かいことはいいのです。


美味しいは正義なのです!


うまうま


ごっくん


σ


美味しいお料理に舌鼓したつづみを打ったリリィとスラくんは、お腹がいっぱいの幸せに包まれながらお泊まりしている宿に帰りました。


宿は〝未知への探求亭〟といって、駆け出し冒険者からすればちょっとお高いのですが、中級冒険者にはお手頃な価格のところなのです。


中級以上の冒険者には従魔ファミリアを連れている人もたまにいますから、スラくんにも対応がちゃんとしているのが気に入ったのです。

なので、クライダの街に来てからリリィたちはずっとここに泊まっているのです。


部屋に入ってすぐに、正装そうびのメイド服からお気に入りの寝間着パジャマに着替えます。


メイド服は丁寧に畳むのです。


小姉さまも言ってました。

メイドの魂はメイド服に宿るのです。


リリィは真綿まわたの詰まった〝お布団ふとん〟が敷かれたベッドに入ります。


そういえば、このお布団という寝具は大賢者さまが広めたそうです。


当時は乾燥したわらに布をかけたものだったのらしいですが、大賢者さまがある寒村かんそんに立ち寄った時にこの真綿の材料になる植物を発見したそうです。


貧しかったこの村は、今ではお布団の産地として有名です。

大賢者さまは魔術以外でもすごかったのですね。


リリィは尊敬するのです。


ん、そろそろ眠くなってきました。


おやすみの時間なのです。


今日もリリィの一日はこうして終わりました。


そう、〝世はべて事もなし〟なのです。


くぅ


大賢者様は凄かったんですね(棒)

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