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スライムさんと幼女メイド  作者: どらぬこ
第一章 悪徳商人編 第一幕 スライムさんと幼女メイド
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第5話 漢(おとこ)たちの挽歌(ひめい)なのです。

「あらぁ、何の騒ぎなのぉ?」


騒ぎを聞き付けたのか、受付の奥から台詞に合わない野太い(・・・)声がしました。

倒れている大男さんと変わらない背丈ですが、筋肉が倍はあるマッチョさんがぬっと現れたのです。


支部長ギルドマスター!」


受付のお姉さんが焦って駆け寄り、状況を説明しているようです。


「あらあら、着いた早々にギルド最年少のスティール級に絡むなんて、不運なねぇ」


「はぁ!? このガキが中級冒険者スティールだとっ!? ありえね、ぐべぼっ!」


変な(オネェ)言葉のマッチョなギルドマスターが言うと、大男さんは信じられないというように目を見開きました。

その拍子に起き上がろうとしましたが、踏みつけている足に軽く力を入れて阻止します。


まだオシオキは終わってないのです。


辺りの冒険者さんたちがざわつきました。


「アイツ、知らなかったとはいえ〝滅殺幼女スレイヤー〟に喧嘩を売るなんて、命知らずだよなぁ」


「ああ、〝鮮血の妖精ブラッディ・フェアリー〟に絡むなら、最低でも肉親おやに別れを告げておかないとな」


「一瞬で何倍もある大男を無力化しやがった。〝爆裂幼女インフィニティ〟の二つ名は伊達じゃねぇな」


「あれが〝最速記録レコードホルダー〟と噂の〝虐殺幼女ジェノサイダー〟か。幼女のくせにすげぇ殺気だ。この距離でも足に震えが来るぜ」


「強者が集う辺境の冒険者ギルドをたった1日で恐怖で染め上げた〝破壊幼女デストロイヤー〟の話は、マジだったのか」


「流石にあの程度の相手じゃ、〝掃除姫スイーパー〟のモップ術は見れなかったな。小さい身体でどんな体捌たいさばきをするのか見たかった」


「〝永遠の幼女(エターナル)〟であるリリィさまをののしるとは、不敬罪ものですぞぉ! 拙者せっしゃは是非に罵られたいですぞぉ!」


安全な距離をとって周りで見ていた冒険者さんたちは、なぜか揃ってうんうんと同意してるのです。


なんか二つ名が増えてないです?

というか、最後のヤツはなんなのです?


あと、リリィは幼女ではないのです!

立派な〝シュクジョ〟でレディなのです!


コイツらも〝センメツ〟してやるのです!


σ


『いったい何があったのだ? リリィ』


専用のポシェットで寝ていたスラくんが、起きてから最初に見たのはいい年をした冒険者たち--大の男たちが愛棒モップを片手に仁王立ちし(ふんぞりかえっ)たリリィの前に揃って正座している光景です。


・・・うん。


疑問に思うのは当然なのです。

逆の立場だったら、きっとリリィもそう思います。


「なあ、あの人は、た、タイタン級のディックスさんだよな? 残虐に獲物を喰らうってぇ〝餓狼ヴォルフ〟の二つ名の・・・。あご押さえてうめいてるように見えるが」


「お隣は〝鉄人アイアンマン〟だぜ。この街の盾役最強って呼ばれてるタイタン級だ。さっき腹パン一発で沈んでたような気がするけど・・・」


「それより、止めに入って巻き込まれたギルマスって、〝紅薔薇ロゼ〟って恐れられた元ミスリル級冒険者で、そのまま冒険者やってたらアダマンタイト級も行けるんじゃないかって噂されてたんじゃなかったか?」


「ああ、聞いたことあるな」

「俺もだ」


「あの子、まだこの街に来て一週間くらいだよなぁ?」


「信じられんが、そうらしいな」


「お、俺は見たぞ。街に着いた初日に、絡んだスティール級のパーティーをひとりでボコってた・・・」


「「「「「・・・・・・」」」」」


野次馬やじうまになっている若手の冒険者さんたちが信じられないものを目にして、口々にささやいてます。


やっぱり、目を点にするのが辺境ここの流行りなんですね。

今度チャンスがあったらリリィもマネしてみるのです。

なんか楽しそうなのです。


「リリィ姉ちゃんって、やっぱスゲェんだ・・・」

「リリィ、カッケー!」

「こくこく」


と、駆け出し冒険者(カッパー・クラス)の少年少女がキラキラした瞳でリリィを見ています。


えへへ


ちょっと照れるのです。


「スティール級冒険者がたったひとりであのメンツを圧倒するとか、何の冗談だ? しかも、幼女こどもがモップひとつで--」


「あっ、ばっ、バカ!」

「ひっ!」


「幼女」のところでリリィが【威圧】のスキル付きで冷たい視線を向けると、若手の冒険者さんたちは震えて縮こまりました。


『視線だけで人を殺せそうだな』


スラくんが呆れたように言いました。


向こうで「ああ、リリィ様」とか、恍惚こうこつの表情で呟いてる変態やつはガン無視なのです。


「やり過ぎたと反省はしてるのです。でも、後悔はしてないのです」


『う、うむ・・・、そうか』


珍しくスラくんが困っているのです。

でも、盗賊たちや魔物みたいに殺々(ころころ)しないだけマシだと思うのです。


「リリィちゃん、アタシもこのたちも反省しているから、そろそろ許してくれないかしらぁ」


筋肉ダルマのギルドマスターさんが懇願こんがんして、並んだ男たちは大袈裟おおげさに頷きました。


「・・・分かったのです。でも、この次はないのです」


「「「「「ひいっ!」」」」」


つい漏れ出してしまった殺気に、男たちの悲鳴がギルド内に響き渡りました。


さすがにギルドマスターさんは顔を強張らせただけだったのですが、最初に絡んできた大男さんは真っ先に気絶していたのです。


大男さんの足の辺りの床が濡れているように見えるのは、きっと気のせいなのです?


σ


余計な一幕ひとまくは記憶の彼方に放り投げるのです。


当初の目的を達成するために受付に並ぼうとしたら、カウンターはがらがらだったのです。


さっきの騒動のせいですね。

やっぱり反省は大事なのです・・・


ちょっと引きった表情の受付嬢さんに盗賊団の討伐報告をして、途中で狩った魔物の魔石コアを換金すると、中々良い稼ぎになったのです。


盗賊団の討伐報酬はギルド職員が現場を確認した後になるので、数日後に受け取ることになりました。

回収したお宝は、後でスキルで【鑑定エスティメート】してから改めてどうするか考えるのです。


今日は疲れたから、宿に帰って美味しい食事を食べて寝るのです。


夜更かしは〝シュクジョ〟の大敵だと、大姉さまも言ってたのです。


ギルドの受付嬢たちは大体美人さんですが、主人公が幼女と人外なので容姿に関してここではスルーされてます。


リリィたちは既にいくつもの街で依頼を受けて昇級しているので、街々で通り名が付けられています。

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