第3話 悪人に人権はないのです。
「けっこうため込んでるのです!」
予想以上の〝成果〟に、リリィもスラくんもほくほくです。
『うむ。大量であるな』
スラくんは次々と盗賊たちのため込んでいたお宝を呑み込んでいきます。
いつ見ても【収納】のスキルは便利なのです。
リリィもいつか欲しいのです。
「「「「「・・・・・・」」」」」
リリィが確認した盗賊のお宝を、次々と呑み込んでいくスラくん。
助けた村娘さんたちはまた目が点になってるのです。
もしかして、〝目が点〟は村で流行ってるのですか?
でも、盗賊さんたちもしてました。
ということは、この辺境地域の流行りなのです?
「溶かしてる感じじゃないし、食べてる--わけじゃないよね?」
ミザリィさんの後ろにいた、妹のサーラちゃんが聞いてきました。
「はいです。【収納】のスキルなのです」
あっ、お宝を探しながら、ミザリィさん以外の捕らえられていた3人の女性たちにもさっき自己紹介してもらいました。
村に連れて帰るまでとはいっても、相手を知ることは大事なのです。
〝イチゴイチエ〟と大姉さまも言っていました。
ん?
なんか美味しそうなのです?
ミザリィさんはこの辺りの村のひとつの村長の娘さんで、4人の中では最年長の17才、妹のサーラちゃんが13才で最年少でした。
この国では14才で成人なので、みなさん〝テキレイキ〟でお年頃なのです。
こんなに可愛らしいみなさんの〝テイソー〟を奪って奴隷商に売ろうとしてたなんて、盗賊さんたちには天罰が当たっても〝ジゴウジトク〟なのです。
リリィはまだ8才ですが、〝シュクジョ〟なのでみなさんと同じくお年頃なのですよ?
もちろん〝イロン〟は一切認めないのです。
「スライムって、最下級のEランクの魔物ですよね? 駆け出しの冒険者さんたちがよく練習や訓練で狩ってる、あの・・・」
ミザリィさんは信じられないって顔してますが、スラくんなら当然なのです。
「そういえば、紫色のスライムって、見たことも聞いたことないよね。ね、お姉ちゃん?」
「そうね。村の近くで見かけるのは大体は薄い水色か緑色よね。赤いのとか、土色っぽいのがいるとは聞いたことあるけど・・・」
サーラちゃんとミザリィさんはスラくんを好奇な目で見つめています。
「さっき、なんかおっきくなってたし・・・」
「武装した盗賊を軽々と跳ね返してましたね・・・」
「そもそも【収納】って、タイタン級やミスリル級の冒険者さんでも中々持ってないレアスキル・・・だよね?」
「確か、そうだったと思います・・・」
そう言って、ふたりは顔を見合わせます。
「スラくんは特別なのです。すごいスライムさんなのです」
えっへん!
σ
リリィたちがお話している間も、スラくんは黙々とお宝を呑み込んでいました。
スラくんは働き者さんなのです。
「「「ヒィ!」」」
しばらくして、リリィと話していたミザリィさんとサーラちゃん以外の村娘さんたちが小さな悲鳴を上げました。
村娘さんたちの視線の先を見てみると、お宝を片付けたスラくんが今度は盗賊さんたちの死体に覆い被さっていました。
あっ、装備品の回収ついでに盗賊さんの死体を溶かしてるのですね。
ちょっとグロいですから、はじめて見るみなさんが悲鳴を上げるのは仕方ないのです。
でも、スラくんが怖がられるのは嫌なのでフォローをちゃんとしておくのです。
「放置しておくと病気が流行ったりするらしいのです。〝カキュウテキスミヤカ〟に死体を処理することが大事なのです」
「そ、そうね。ちょっと気持ち悪いけど、そのままにしておくのは良くないわよね。さ、さすがは冒険者さんね」
「でも、キモいけどね・・・」
「うん・・・」
サーラちゃんはげんなりした様子で目を背け、ミザリィさんは同意してました。
〈リリィ、よいか〉
スラくん?
〈個別念話なのです?〉
〈このお嬢さん方にはあまり聞かせない方がいいと思ってな。いくつかのスキルが強化されたのと、新しいスキルを手に入れたようだ〉
〈すごいのです! やっぱり、人種の経験値は美味しいのです?〉
〈そのようだ。リリィの姉君が仰っていたのだったか〉
〈はいです。魔物が人族なんかの人種をよく襲うのは、本能的にそれを知ってるからだって、小姉さまが言ってたのです〉
〈吾は魔物とはいえリリィと行動を共にしている以上、人種を襲うことは出来んからな。今までは人喰いはしていなかったが、今後は盗賊や犯罪者どもは遠慮なく吾の糧になってもらおう〉
〈はいです! 昔の偉大な魔導師さまが仰ったのです! 「悪人に人権はない!」、と!〉
〈うむ。誠に至言であるな〉
〈なのです!〉
昔の大魔導師様はこの作品とは一切関係ない、〝竜種も跨いで通る〟といわれるあの方です。
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