第18話 盗賊喰らい、なのです?
「リリィは〝盗賊喰らい〟ではないのですよ?」
『うむ。吾も聞いた覚えはないな』
そうなのです。
リリィがおかしな二つ名で呼ばれているのは知っているのですが、それは聞いたことがないのです。
「あー、それはそうニャ。なんか、しばらく前にリリィちゃんがクライダの冒険者ギルドで暴れたニャ? その時、スティール級やタイタン級の冒険者だけじゃなく、ギルドマスターも巻き込んでシメたニャ?」
「そんなこともあったのです」
『ああ、アレか・・・』
スラくんが遠い目?をしています。
「あっ、やっぱりマジだったのかニャ。その暴れた原因がリリィちゃんが二つ名を気に入らニャかったからだと言うのは?」
『うむ。真実だな』
「でニャ? ギルドマスターがリリィちゃんの前で二つ名を呼ぶなっていう通達を、クライダの冒険者組合に所属する者たちに出したニャ。盗賊喰らいの二つ名は最近付いたらしいニャから、聞いてないのも当然ということニャね」
あの怪しい言葉の筋肉、もう一度シメた方がいいのです?
いえ、指導した方がいいのは、あの街の冒険者たちですか?
「「「・・・・・・」」」
後輩さんたちが口をぱくぱくしているのです。
「スティール級やタイタン級の冒険者をシメた? あの元ミスリル級冒険者で〝紅薔薇〟と言われたギルドマスターも?」
「盗賊喰らい--またの名を〝掃除姫〟とも呼ばれる凄腕の冒険者がリリィさん・・・」
「こ、この幼--小さ--女の子が〝鮮血の妖精〟なのか・・・オレの密かな憧れが・・・」
三人が地面に膝をつきます。
むうっ
なんか失礼なのです?
σ
リリィたちは猫さんたちと一緒に歩いてクライダの街に帰ることにしました。
もちろん、護衛の冒険者たちもです。
「リリィちゃんたちは、よく北の大樹海に行ってると聞いたニャが、なんで反対側の南にいたニャ? ミャアたちはそれで助かったニャけど」
「スティール級の特殊依頼で、あっちの村まで届け物をしたのです」
「近くの村までの届け物でスティール級の依頼にゃか? 珍しいニャね」
『吾もちと気になったのだが、他の街への帰りだから荷馬車に何も積んでいないのか? 先ほどの話だと、何か仕入れて帰って来たのではないのか?』
そうなのです。
今、猫さんの荷馬車に乗っているのは、気絶した野盗さんたちなのです。
何人かは農具なんかを武器にしているようなどろくさい野盗さんたちだったので、殺々するのは保留にしてあります。
きっと食べるのに困った元農民とかなので、スラくんの糧にしてもあまり意味はないのです。
「ふふん。よくぞ聞いてくれたのニャ! なんと、ミャアはすべての商人と冒険者の憧れ、【収納】のスキル持ちなのニャ!」
こくこく
護衛の冒険者たちが頷きます。
羨ましそうなのです。
「そして、なんとなんと、荷馬車二台分もモノが入るんニャ! これは中々いないんニャよ?」
猫さんが薄いお胸を反らします。
あっ、リリィとお仲間さんなのです。
ちょっとだけ猫さんの好感度がアップなのです。
「これで【鑑定】スキルがあれば、商人としての成功を約束されるのにニャあ・・・」
じとぉ
と、リリィとスラくんを湿った視線で見つめる猫さん。
そんな目で見られても困るのです。
リリィの頭上で燦然と輝く大賢者さま謹製のヘッドドレスは、交渉の成果なのです。
「そういえば、あんまり気にしたことはなかったのです。スラくんの【収納】はどれくらい入るのですか? スラくんの本体だけでもかなり大きくないですか? それに、さっき村に届けた荷物もけっこう多かったのですよね?」
『む? 確かめたことはないな。理由は解らぬが、例の古文書など最初から色々と入っていたからな。吾もあまり気にしていなかった』
「んニャ?」
『ふむ。本体と先程の荷物だけでもその猫殿の荷馬車で二十台分はあるな。他を含めると、大凡ではあるが、今入っている物だけでその五倍はあるようだな』
「ほえぇ。そんなにしまってあるのですか!」
これはリリィも想像以上だったのです。
びっくりなのです。
「ニャ、ニャんですとぉ!?」
がくっ
猫さんがさっきの冒険者たちみたいに、器用に御者台の上で崩れ落ちました。
「か、【鑑定】だけでもレアなのに、さらに【収納】までも。しかもミャアより容量が大きいニャんて・・・、というか、それがホントウなら、伝説級ニャんじゃ?」
「こういう人を、規格外って言うんだろうね」
むっ、なんか〝シンガイ〟なのです。
「ああ、なんか驚くのも馬鹿馬鹿しくなってきたな。これで想像通りの素敵なお姉さまだったら良かったのになぁ」
シメちゃいますよ?
「これが〝最速幼女〟と呼ばれるスティール級の実力か。まだまだ遠いな--ぐべらっ」
マジメそうな後輩さんのお腹に、リリィの愛棒が食い込みます。
だから、リリィは幼女ではないのです!
8才の幼女です--ぶげらっ!




