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スライムさんと幼女メイド  作者: どらぬこ
第一章 悪徳商人編 第二幕 勉強する猫人族と弱々な鬼人族
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第16話 ま、負けないのです!!

「ぺ、ぺぐぅ」


どさっ


あっ、予想以上に早かったのです。

んー、オーガさんにはもうちょっと頑張って欲しかったのです。


「ふっ、戦いとはいつもむなしいものだな。ゴブたちは何故、こんなモノに怯えていたのか・・・」


赤ゴブさんは大空を見上げて涙を流しているのです。

きっと、虚しさと戦っているのでしょう。


他のゴブさんたちは、出番がなかったのに一緒に泣いています。

仲良しさんですね。


ゴブさんたちが立派になって、リリィは嬉しいのです。


ねっ、スラくん!


σ


翌日の早朝。

冒険者ギルドに依頼を見に行ったリリィの前に、ゴブさんたちが現れました。


「リリィのあねさん! ありがとうございましたゴブ!」


「「「「ありがとうございましたゴブ!!」」」」


揃って頭を下げます。


馬鹿まじかから助けた時のようですが、ちょっぴり勇敢になった感じがするのです。


「もう、ゴブさんたちにリリィの教えは必要ないのです。これからは冒険者パーティーとして頑張るといいのです」


『うむ。あのオーガはリリィが言うほど弱くはなかった。お前たちは誇っていい。慢心まんしんは禁物だがな』


「「「「「はい! スラリンの兄貴!!」」」」」


『う、うむ』


あっ、スラくんが困っているのです。

ちょっと可愛いかも知れません。


『そういえば、お主らは名を何と言うのだ?』


「あっ、リリィも聞いてないのです」


「あっ、こ、これは、し、失礼しましたゴブ! オレはラインハルトと言いますゴブ!」


と、赤いマフラーの赤ゴブさん。


「ボクはキルヒアイスですゴブ」


青いバンダナを握り締めた青ゴブさん。


「ナイトハルト、ですゴブ。リリィ様!」


黄色いローブの黄ゴブさんは、何かの期待に満ちた眼差しです。


「ヒルデガルドと言いますゴブ。お姉さま」


お顔を赤らめた桃ゴブさんがもじもじして言いました。


「我は漆黒しっこくのビュッテンフェルトだゴブ」


黒ゴブさんが自分で付けた二つ名を告げます。


「な、何かカッコいい名前ばかりなのです」


『うむ。悪いが、似合わんな』


がくっ


なんでしょう?

また、名乗りの時みたいに負けた気分になりました。


このゴブさんたち、実はリリィの天敵なのですか?


戦いとは、かくも虚しいものなのですね。


リリィはまたひとつ、立派な〝れでぃ〟になったのです。


σ


『むっ、これは! リリィ、あったぞ!』


「スラくん! 見つけたのです!?」


依頼を完了させて宿に戻ったリリィとスラくんは、【収納】から取り出した無数の古文書に埋もれていました。


もちろん、新たな口上を探すためなのです。


『ああ、これは二人組デュオの話だ。この名乗りの口上なら良いのではないか?』


おおぉっ!

リリィが求めていたのはこれなのですか!?


「これで、次の登場シーンは大丈夫なのです! ゴブさんたちには負けないのです!」


『うむ。そうであるな』


うん!


リリィたちは名乗りでゴブさんたちには負けないのです!


絶対なのです!!


σ


「は、ハート様!!」


「ぶふぅ。儂はハートサマーだといつも言ってるだろう、いつ覚えるのだぶぅ。この馬鹿ものが」


クライダの街の高級住宅街にある一際ひときわ目立つ屋敷。リリィに悪漢さんその1と呼ばれていた大鬼族オーガの男が駆け込んだのは、その日の夜も更けた頃だった。


「す、すいやせん」


「で、どうしたのだぶぅ」


豪奢ごうしゃな椅子に腰掛けたでっぷりとふとった豚人族オークが問う。


「あっ、それがですね。ガキとゴブリンどもが--」


「ゴブリン?」


大男は言いよどむ。


「あっ、いえ! く、クソガキが! 事もあろうにハートサマー、様に楯突たてついているんですよ!」


「ガキが、なんだぶぅ? そんなのはいつもの様にさっさと潰してしまうといいぶぅ」


豚人族は「何を下らないことを」、とでも言いたげだ。


「い、いぇ、それがただのガキじゃねぇんです。スティール級冒険者だってぇことで、スゲェ強ぇんです! オレの手下共が、一瞬でやられちまったんですぜ!」


「んん? ガキひとりにかぶぅ?」


「は、はいっ」


「ぶふぅ。わしに逆らうガキか、ぶぅ。どんな奴なんだぶぅ?」


さして興味を持った訳ではなかったが、はち切れんばかりに肥えた腹を撫でたその男は、何ともなしに聞いてみた。


「そ、それが、十にも満たないガキなんですが、メイドの格好をして、モップを振り回す滅法めっぽう強く--」


「ぶぶう! 今何と言ったぶぅ!」


腹を震わせ、くわぁ、と目を見開く。


「は? いえ、モップを振り回す滅法強い--」


「その前ぶぅ!!」


「えっと、十にも満たないメイドの格好の?」


「ぶふぅ!! ロッチャ! それは本当かぶぅ!?」


「へ、へい!」


大鬼族の後ろから現れた、リリィに腰巾着こしぎんちゃくと呼ばれていた、大鬼族にしては細身の男が答えた。


「ぶぅ、お前から見てどうだったぶぅ? 意味は解ってるぶぅ?」


「あっ、ひひっ。そりゃあもう、ハートサマー様のお気に召すかと・・・」


にまぁと、下卑げびた笑いを浮かべるロッチャと呼ばれた男。


「ぶふぅ、そうか。ぶふふふふっ」


「へい、きひひひひっ。と、捕らえましたら、あっしにも・・・」


「ぶふ、みなまで言うなぶふぅ。ぶふふふっ」


「へ、へい。きひ、きひひひっ」


意味の分からない大男を余所よそに、その屋敷には二人の気味の悪い哄笑こうしょうがいつまでも響き渡った。


何かこのゴブリンたちの話、フルメタのパクり--げふんげふん、オマージュなのに執筆時間がいつもの倍以上かかった(汗)


幕間?


「す、スラくん、なんか寒気がするのです?」


『ふむ? 今日は過ごしやすい気温であると思うがな?』


「よく分かりませんが、ぶるっとしたのです」


『ふむ。風邪だといかん。早めに休むといい』


「はいなのです・・・」

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