第15話 闘わないゴブは、ただのゴブなのです。
「ゴブは強い。ゴブは最強。ゴブは無敵・・・」
「奴は害虫。奴らの存在は悪。許してはならない・・・」
「くふっ、くふふふっ。幼女の罵倒はご褒美です。くふふふっ・・・」
「ああ、素敵です。お姉さま。ほぅ・・・」
「ふっ、我が刃はすべてを切り裂く漆黒の衝撃なり・・・」
ゴブさんたちがしきりに何かを呟いています。
『・・・・・・』
あれっ?
何か変なのです?
σ
「ゴブさんたち!」
「「「「「イエス、マム!」」」」」
「よくリリィの特別訓練を耐え抜きました! 今日から、みなさんは誇り高い小鬼族さんです!」
「「「「「イエス、マム!」」」」」
「これからゴブさんたちは、過去の亡霊と闘い、そして打ち勝つのです! 勝てばすべてを得るのです! 負ければそこに待つのは地獄だけなのです! 楽しいですか!? ぞくぞくしますか!?」
「「「「「イエス、マム!!」」」」」
ふぅ
これで特別訓練は仕上げなのです。
「ゴブさんたちに問います! 冒険者とは何ですか!?」
「「「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」」」
「あのオーガさんたちをどうしたいですか!?」
「「「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」」」
「ゴブさんたちは冒険者に誇りを持っていますか!? そのすべてを捧げられますか!?」
「「「「「ガンホー! ガンホー! ガンホー!」」」」」
「最後に街の周りを走って来るのです! 行くのです!」
「「「「「イエス、マム!!」」」」」
σ
「なあ、滅殺幼女がなんかやってるぜ?」
「あれ、一緒にいるやつら小鬼族だろ? 爆裂幼女がなんであんな弱そうなやつらと訓練みたいなことしてんだ?」
「きっと、永遠の幼女リリィさまには深い考えがあると思いますぞ。ああ、羨ましい。拙者にも至上の御言葉を頂きたいですぞ!」
「何言ってんだ? こいつは?」
「まあ、掃除姫のやることだからなぁ。弱っちい小鬼族どもの駆除でもしてんじゃねぇか?」
「あははっ、そうにちげぇねぇ! なんせ虐殺幼女だしな! はははははっ!」
そこの若手の冒険者さんたち、聴こえているのですよ?
リリィはお耳がいいのです。
何度も言いますが、リリィは幼女ではないのです。
ゴブさんたちが戻って来る前に、暇潰しに滅殺してやるのです!
σ
ぬぺっ
と、スラくんが大きなものを吐き出しました。
「ぐべぇ!」
そう、悪漢さんその1です。
スラくんに頼んで連れてきてもらったのです。
「スラくん、ありがとうなのです」
『うむ。この程度は雑作もない』
「な、何なんだ!? オレは確か街の裏路地を歩いていて、何かぬちゃっと・・・」
そこで、リリィたちに気づきました。
「て、てめえらの仕業か! オレ様を拐うたぁ、何考えてやがんだぁ!?」
そのセリフだけ聞くと、確かにそうなのです。
でも、ちゃんと理由があるからいいのです。
「オーガさんに、リリィからお願いがあるのです」
「あん、クソガキがオレ様にお願いだぁ?」
クソガキではないのです。
ですが、ここはゴブさんたちのためにガマンなのです。
「はいなのです。ゴブさんたちから、オーガさんはとってもお強いと聞きました。どうですか?」
「つ、強いに決まってんだろうが! テメェにやられたのは油断してたからだからな! 勘違いすんじゃねぇぞ!?」
あれだけ実力差があっても理解出来なかったのですか。
まあ、都合がいいのです。
「分かったのです。では、ゴブさんたちと戦って欲しいのです。強いオーガさんなら逃げたりはしませんよね?」
「ああ? テメェじゃなくてアイツらと戦えだぁ?」
「そうなのです。ゴブさんたちとです。ひとりでは自信がないなら、何人集めてくれても構わないのです」
「ふ、ふざけんな! このオレ様がクソ弱ぇアイツらとやるのに人数集めろだとぉ!?」
お顔が真っ赤になっています。
〝フッテン〟が低いのですか?
「ひとりでいいのです?」
「ったりめぇだ!!」
「んー、じゃあ、赤ゴブさん!」
「はっ!」
ざっ!
リリィの後ろに並んでいたゴブさんたちの中から、赤ゴブさんが前に出ます。
「んぁ? そいつだけか? 戦いになんのか?」
「はい、なのです」
「けっ、テメェは手ぇ出さねぇんだろうな」
「安心するといいのです。リリィは何があっても見ているだけなのです」
「けっ、どっからでもかかって来いや、この弱虫ゴブ野郎!」
「赤ゴブさん! 殺っちゃうのです!」
「はっ! 了解であります!!」
語尾がなくなってる!?