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囚われの魔女達

 いきなり現れた人だかりへと、セリルは驚きから身を(すく)ませる。

 目を丸くして固まる彼女に、部屋の前へと集まっていた少女達の一人が声を上げる。


「ねぇねぇ、ステラさん! もしかしてもしなくても、その子、今度新しく入ってくるって話してた子!? 他に,、あいつが魔女を捕まえたって聞いてないし、そうなんでしょ!?」


 高揚した声音で尋ねる短髪の少女を、彼女達の存在に気がついたステラが(たしな)める。


「エイミー、静かに! そんなに大きな声で叫んで、彼女がビックリしてるでしょ! 後でちゃんと紹介するから、みんな、部屋に戻りなさい!」


 しかし、彼女の注意にも関わらず、少女達は興味津々とセリルを眺め続けていた。

 どうにも言う事を聞こうとしない彼女達に、遂にはステラも根負けし、セリルを伴って外へと出た。

 

 廊下には、6人の少女達がいた。

 彼女達はいずれも、黒を基調に赤のラインやワンポイントが入った、ブラウスやミニスカート、ブレザーを着用していた。

 全く同じ服装に身を包む彼女達へと面食らうセリルを、ステラはその背へと軽く手を添える。


「彼女は、セリル。五日前に、ウィルピックの街でマスターが保護した子よ。皆、仲良くしてあげてね」

「保護ぉ? 捕獲、の間違いじゃなくて?」

「滅多な事を言わないの、フェル。彼女はその時、帝国軍の部隊に追われていたの。もしマスターが彼女を契縛していなかったら、どうなっていたかも分からないのよ?」


 半笑いで茶化す、髪留めを付けた少女を、ステラは心持ち厳しい口調で咎める。


 確かにあの時、自分は帝国軍に追われていたが、逃げ切れる可能性はゼロではなかった。

 それに、軍に捕まってすぐに魔晶へと変えられた方が、魔力を残らず奪われた上、こうして奴隷同然の身の上となるよりは、随分とマシかもしれなかった。


 二人の話を聞きながら、ふとそんな思いを抱いていたセリルに、人垣の端にいた丸顔の少女が尋ねかける。


「ねぇ、あなたはアクタに、どんな風にして捕まえられたの? やっぱり、魔力で具現化した鎖で?」


 具体的な内容へと話を移す彼女に、ステラは重ねて叱責を飛ばす。

 それでも、一斉に視線を集めて答えを待ち続ける少女達に、セリルは気圧(けお)されるように首を縦に振った。


「うん……魔方陣から鎖が出てきて、グルグル巻きにされて―――― 」

「あー、やっぱり!? ほんとマスターの奴って、あの鎖で縛るのが好きよね! 私の時も、あなたと同じ風にしてやられたのよ!」

「でも、それってまだ良い方よ。私なんて、足を掴まれてから逆さ吊りにされて、そこから縛り上げられたんだから! こっちは、ミノムシなんかじゃないっての!」

「で、それからどうなったの? どういう感じで、魔痕を印縛された?」


 アクタへの不満を轟々と噴出させながら、彼女達はセリルへと話の先を促す。

 妙な高ぶりを見せる場の雰囲気に、セリルは恐る恐るステラを窺う。

 彼女は沸き立つ少女達を渋い表情で見つめながら、どこか諦めた様子で肩を落としている。

 もはや彼女達の好きに任せているステラに、セリルは求められるまま、自分がアクタに契縛された時の状況を語った。


「えと、鎖で巻かれてから、押し倒されて……それから、左の肩を叩かれて…………私の魔痕、ここにあるから―――― 」

「なるほどねー。やっぱし皆、当たり前だけど強引にやられちゃうのよねー。私の時も、そんなだったし」

「でも、それで一番ヒドイ目に遭ったのはリーミアじゃない? あなた、偶然あいつに見つかっちゃったもんだから、魔痕の場所を調べるために身包(みぐる)み剥がされたんじゃなかったっけ?」

「ううっ……あれは、いま思い出してもくるものあるから、聞かないで…………」

「何にしても、あのアクタ……マスターがクズってことに、変わりはないのよねぇ」


 自分達の主人を槍玉に挙げる彼女達の言動に、敬意や畏怖の気配は全くない。

 同時に、そこには自分達を捕らえた相手への恐怖や怯え、そして憎悪や絶望といった感情も、ほとんど見受けられなかった。

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