商品としての魔女
「別に、心配しなくても大丈夫よ。あなたが、何が得意で、どういったことをしたいのか、アイザック様は始めに聞いておきたいの。だから、素直に答えるだけで良いんだから」
「あの黒ヒゲのおっさん、妙に勘が鋭いのよね~。私の時は腹いせに出任せばっかり言ってたんだけど、あっさり見破られて、気付いたら本音で喋らなきゃいけない感じになってたし……。ずっと無視してたって子も、結局は同じ風になっちゃったらしいし。セリルも、変に意地を張っても疲れるだけだろうから、さっさと言いたいことを言って終わらせた方が良いと思うよ」
セリルは面談の前日、ステラとリンファから面談の内容について、別々に説明を受けていた。
それぞれで切り口の異なる助言は、ただ、ありのままの本心を明らかにした方が良いという点では、一致していた。
彼女達から話を聞いたセリルは、疑問に思った。
契縛された魔女は、既に商会の所有物であり、命も権利も全てを彼らに握られている。
なのに、そんな相手をただ好き勝手に酷使せず、今後の意向や希望を本人から聞き出しておく理由が、彼女にはまるで見当も付かなかった。
「なるほど。確かに君の先輩達の中にも、同じ質問をしてきた魔女は結構いたね。だけど、これは君達に対する当て付けや嫌みじゃあ、絶対にない。私が君達に教育の機会を提供し、各自の希望や願望を聞いておきたいというのは、魔女を魔女のままに帝国の発展へ利用するという、崇高な目的のために他ならないからだ」
問いへと即座に返された答えに、セリルは絶句する。
理解が追いつかずに固まる彼女を、アイザックはテーブルの上へと身を乗り出し、冷ややかな微笑を浮かべながら覗き込んだ。
「過去、帝国は魔女達より精製した、魔晶という高エネルギー燃料によって発展を遂げてきた。だが、乱獲によって魔女の絶対数は減少の一途を辿り、一方で高純度の魔晶を動力とする帝国の兵器も、大陸掌握に伴って実動の機会を失っていった。つまり、現在における魔晶の需要と供給は、戦乱期のそれと比べて共に数を減じているというのが実情だ」
「そこで、私は恐れた。社会的な秩序と安定が築かれつつあるこの時代、従来からの魔晶による商売では、この商会はいずれ行き詰まる。だからこそ、私は考えた! 魔女をエネルギー体としての魔晶ではなく、多様性と汎用性をもった、次世代にして新次元の労働力として活用することを!」
「君には釈迦に説法だろうが、魔女は個体によって異なる特性と力を有している。魔晶と化せば個性を失うその力は、最も相応しい、効率の良い形で帝国の発展へと活かすべきだ。だからこそ、私は長い年月に渡って莫大な資金を膨大な研究と探索へ費やし、遂にそれを現実のものとする方法を編み出した。魔女の持つ魔力を封じ、その出力を第三者が自由に制御できる術式、封魔術をね!」
「魔女を魔女のままに使役する術を手に入れた私は、次に煩雑で徒労の多い政治的な手続きと根回しを経て、魔女を管理・教育するための環境を整えた。魔女達はその出自や経歴の関係から、社会へと不適合な傾向の者が少なくない。それへと、社会貢献・奉仕に差し支えのない程度の知識と教養を与え、そして各自の特技・特性を矯正・強化させるのを目的として創設されたのが、昨日君もその一員となった魔女学園だ」




