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新しい日々へ。


何となく早く目覚めてしまい特にやることのない俺はいつもより早く学校に行った。がらんとした朝の教室はいつもとは違う雰囲気を漂わせている。張り詰めた空気を変えたくて窓を開け風を入れる。


心地良くなり、俺は座席でうたた寝をした。時間は充分にある。20分位寝ただろうか?ドサリと頭に衝撃を感じ慌てて目を覚ました。


「痛ぇ。」


落下してきたものを確認すると、黒い学生鞄で無数のマスコットが取り付けてある。持ち主は確認しなくても分かった。頭を上げると桃香と文香がいた。笑いを堪えている。


「伊藤っち、おはよう。早いね。よく寝てるからつい邪魔しちゃった。」


「ずいぶん手荒いな。ってかお前らもいつもより早いじゃん。」


「うん。なんか目が覚めちゃって。寝てられなくてラインしてたんだけど、早めに登校しようってふたりで来たんだ。そしたら伊藤っちが寝てたからついね。鞄落としちゃった。」


「子供か。」


「子供だもん。」


楽しげに笑うふたりを見ていると全てが上手く回っていくようなそんな気がしてきた。ぽつぽつとクラスメイトがやって来て望月と倉田もいつもより早く登校してきた。


「おはよう。」


「おはよう。そろそろ来るな。」


それぞれが緊張の面持ちで木村涼子の登校を待つ。始業時間ギリギリに木村涼子はやって来た。スッと入ってきて真っ直ぐに自席にやって来る。俺達は声を揃えて


「おはよう」と言った。


「•••おはよう。」


一拍遅れで木村涼子から返答があった。俺達は驚きと喜びで顔を見合わせた。授業が始まりそれぞれの席へ戻るのが惜しいくらいだった。授業も良く耳に入らないまま1限目が終わり休み時間を迎えた。木村涼子は本を読んでいる。いつも通りの光景だ。沈黙を破ったのは文香だった。


「木村さんって読書が好きなんだね。」


「・・・うん。」


「私も読書好きだよ。乾くるみが好き。イニシエーションラブ。知ってる?」


木村涼子の顔がパッと輝いた。


「私もその本好き。面白いよね?どんでん返しが秀逸だった。」


「そうそう!!女はしたたかなんだぞっていう。」


ふたりで大盛り上がりだ。こんな木村涼子を初めて見た。こうして見ているとどこにでもいる女子高生そのものに見えた。俺は会話に加わろうと話し掛けてみた。


「イニシエーションラブってそんな面白いの?」


「面白いよ。今度皆で回し読みしようよ。持ってくるから。」


文香が喜々としている。


「そういえば、文香、初めの頃本ばっか読んでて木村さんと感じが似てたな。」


望月が思い出すように言う。


「そう。私、人見知りでさ友達作るの出遅れてて本ばっか読んでたら、桃香が話し掛けてくれたんだよ。そこから皆でつるむようになったね。今日からは木村さんもウチらの仲間だね。楽しくなるよ。」


やっぱりなと思った。俺、倉田、望月、文香、木村。俺達は桃香によって結び付けられた仲間だったんだ。頭の中で点と線が繋がった。


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