窓辺の透明な彼女。
木村涼子。
クラスメイト。
クラス内に多分友人は居ない。
趣味は読書なんだろうか?
いつも本を読んでいる。
席は窓際の1番後ろ。
始業時間ギリギリにやって来て1日を過ごし帰っていく。
彼女はその席に確かに存在しているのにクラスメイトには映らない。いや、彼女自身が自分の存在を消していて透明な存在で誰にも見えていない事にしているのだ。
そんな透明な存在の彼女にどうやって近付けばいいのだろう。俺は悩んだ。彼女が意思をもって現れる瞬間、それは授業中だけだ。彼女は授業中にだけ意思を持って現れる。バンバン手を上げ教師の出す問題に答えていく。それはどれも正解でその時間その空間はほぼ彼女のものになる。そこを狙うしかない。どうにかして木村涼子の思想に自分を残す。そしてアピールするしか自分にはないと思った。
その日の四時限目数学。
俺の苦手分野だ。しかし木村涼子にとっては得意分野。分からなくても良い手を上げよう。俺は決意した。出される問題全てに手を上げた。意味の分からないものまで全て。
木村と俺の一騎討ち。
授業の終盤はそんな感じになった。
数学担当の遠藤が呆れる位に手を上げて答え続けた。
ほぼ俺は不正解なのだけれど。
手を上げて答えを黒板に書き自分の席に戻るまでの時間、木村涼子の視線を俺自身に感じた気がした。
爪跡を残しただろう。
そう確信した俺は四時間目終了後、木村涼子に声を掛けた。
「木村さんさぁ、数学得意なの?俺も頑張ろうと思ってるんだよね。良かったら教えてくれないかな?数学。」
「・・・。」
無言のまま木村涼子は消えてゆく。
俺の惨敗だ。自分の席に戻り座席に崩れ落ちる。
「伊藤っち、苦戦だね~。4万はそうたやすく手に入らない」
桃香がパックジュースを飲みながらニヤニヤ近付いてくる。
「お昼に行こうよ。作戦会議も兼ねてさ。文香、倉田、望月も行ける?中庭。」
「行けるよ。行こう。」
みんなそれぞれ弁当を持って中庭に出た。