それぞれの夏休み。
テーマパーク旅行から悶々とした日々を過ごす俺。表面上は和を乱すことなく仲間付き合いを続けているが、心の中は複雑だ。恋心という満たされない想いは自分の中でどんどん大きくなっていて爆発しそうだ。でもこのタイミングで夏休みがやって来るのは俺にとっては良いことなのかもしれない。会えない間に頭を冷やそう。俺は明日からの夏休み期間中、近所のコンビニでめいいっぱいバイトすることにした。
「伊藤っち、夏休みコンビニでバイトするんだって?空調が効いて涼しくて良いね。僕はカフェの厨房だから暑いよね?料理が出来るのは嬉しいんだけどさ。」
「ああっ、せっかくの休みだし空いた時間を活用しようと思って。夏休みの稼ぎはデカいからな。倉田は厨房のバイトか。熱気で痩せんじゃん?まかないとか食い過ぎなければ休み明け別人だったりしてな。」
ぽよんとした倉田の腹の肉を摘まんで引っ張った。
「あははっ。休み明け別人か。だったらいいなぁ。でも、僕食べちゃうからなぁ。たぶん無理だよ。っていうかあそこのコンビニならいつでも行けるし、たまに偵察に行くよ。伊藤っちがちゃんと働いてるかどうか。」
「私達も行きまーす。」
文香と涼子と桃香がはしゃいでいる。
「来んなよ。金持ってねぇ学生は営業の邪魔だ。」
「伊藤っち、悪いな。俺はひと月まるまる海の家に遠征だ。お前や倉田の働きが見られないのが残念だ。」
望月がウキウキと話し出す。従兄弟がやっている海の家のバイトに毎年繰り出すらしい。彼女と離れて淋しくないのかとコッソリ聞いたら彼女も一緒の遠征だということで。そりゃウキウキもするだろう。
「女子グループはバイトしねぇの?」
「私は今もやってる書店のバイトを引き続きやる感じ。」
涼子が答えた。
「ウチらは夏休みは休日を満喫予定。暇になったらみんなのバイト先に顔出すよ。もてなしてね。」
桃香と文香は2人揃ってニートな夏休みを決め込んだようだ。
「これを親に見せて、ひと山越えれば明日から私達自由だね。」
桃香がひらひらと通知表を振る。
「山にもいろいろあるからなぁ。なだらかなら良いけど俺らエベレスト並みじゃね?」
望月が桃香の肩を掴んで揺する。
「一緒にしないでよ。私、望月みたいにスポーツ馬鹿じゃないんだからね。」
「おぉ怖っ。失礼。じゃぁ、俺明日早いから帰るわ。じゃぁな。」
望月が軽い足取りで帰っていく。少し羨ましい後ろ姿だ。
「俺も今日、コンビニ寄って帰らないとなんないんだ。明日からの制服合わせでさ。じゃぁな。」
「そっか。じゃぁまたね。マジでバイト先、みんなで行くから。」
「分かったよ。じゃぁな。」
俺たちは校内で別れてそれぞれの夏休みに突入した。




