夜中の恋愛相談。
皆、はしゃぎすぎたのか帰りの車内はとても静かでたまに誰かのイビキが聞こえてくるだけだ。俺は肉体的には疲れていたけれど、頭が冴えすぎて寝られなかった。どうにか寝てしまおうと右に左に体勢を代えてみるが寝られやしない。頭に浮かぶのは桃香の事ばかりだ。
「伊藤っち、寝られないのか?」
隣に座る望月が声を掛けてきた。動きで起こしてしまったのだろう。
「そうなんだ。望月悪いな。起こしちまって。」
「いや、いいよ。俺も何か目が覚めた。みんなが寝静まってる間に語らね?あんましねぇじゃんこんな事。」
「そうだな。でも望月、俺とお前でいったい何を語るんだよ。」
「そりゃ決まってるだろ。ラブだよ。ラブ。恋愛。お前、好きな奴いんのか?今日、最後のアトラクションで突っ込まれてたじゃん?」
いきなりストレートにぶつけられてたじろいでしまう。
「はっ?ってか望月は好きな奴居るのかよ?」
「うわっ、お前汚えな。質問に質問で返すなよ。まぁ、でもあえて答えるなら桃香かな?可愛いし。」
目の前が真っ暗になった。1番避けたいパターンだった。仲間内の奪い合い。桃香が1番嫌うシチュエーションだろう。
「伊藤っちって、すげぇ分かり易いのな。」
望月がからかうように言う。
「好きなんだろう?桃香の事。」
「••••••。」
答えられる訳が無い。
「はははっ。馬鹿だなぁ。」
急に望月が笑い出す。
「冗談だよ。俺には彼女居るし。日高高校の2年。同い年で中2からの付き合いだ。恋愛スキルは伊藤っちより俺の方が全然高いんだよ。相談乗るぜ。こう見えて俺、口堅いし。」
体中の力という力が抜ける気がした。安堵感とはこういうものだろうか。安心しすぎてつい口が滑らかになってしまう。
「何だよ。かまかけかよ。マジで驚いた。奪い合いとかあり得ねぇって。絶対に桃香嫌うだろう?ってか望月は彼女が居たんだな。知らなかったよ。」
「そこまで公言してねぇからな。伊藤っちの桃香好きはダダ漏れしてたけどな。」
「ダダ漏れって止めろよ。」
望月の言い方にカチンと来て咎める口調になってしまう。
「桃香も伊藤っちの事好きそうだけどな。お前ら2人とも周りを気にしすぎて面倒くせぇんだよ。ストレートに行けば良いんじゃねぇの?」
「行ければ苦労しねえよ。」
「だろうな。俺が出来るアドバイスはここまでだ。あとはお前がどこまでやるか。それに尽きると思う。やるかやらねぇかしかねぇじゃん。いつまでも罰ゲームだとか過去だとかに縛られてんじゃねぇよ。大事なのは自分の気持ちだろ?違うのかよ?何か眠くなってきた。俺も寝るわ。じゃぁな。」
言うだけ言うと望月は寝る体勢に入ってしまった。ひとり残された俺は、眠ることも打開策を見出す事も出来ず悶々と時を消費するだけだった。




