4-11.恐怖のAxe&Gun
ガンモードに変形させたガンスマッシャーで連射するアキラ。弾幕で敵の行動を制限し、自分の戦いやすいように戦場を操っている。
独特の甲高く乾いた発砲音は、マガジン交換を挟むことなく続いた。
「な、なんですかあのおもちゃ屋で売っていそうな武器は。もうめちゃくちゃですよ!」
ロッタの小言は気にせず、弾幕を抜け出してきた男の一人に対応するため、アックスモードに手動で切り替える。誇張された金属音を鳴らしながらの変形は、ロマンがあっていいと俺は思った。
「フンッ! ウォラァッ!」
音速すら超える剣の動きを見切り、短い手斧で余裕のある打ち合いをする。それどころか、最小限に簡略化された体捌きで速さに追いつき、敵を押している。
残りの二人が加勢に入るも、アキラは敵同士が相打ちになるような立ち回りをして、攻撃の頻度を落とす。
女の繰り出した鉄爪攻撃が二本の短剣を持った男を掠め、剣の男は伸ばされた腕を切りつけないよう、動けないでいた。
その瞬間を見逃さず、斧に赤いプレートを挿入するとシステム音声が鳴り、刀身が赤熱する。
「灼熱の刃、全てを塵に!!」
ヒーローは詠唱のようにそれを叫び、回転斬りを繰り出す。振るった刃先から強烈な炎が発せられ、敵を焼き切る。
爆炎の熱気はこちらまで届き、煙焔が彼らを隠す。
それが晴れると、仮面達は吹き飛ばされた後だった。それだけでは全てのHPを削り切ってはいない――というよりも、わざと手加減をしている。
今度は、別の青いプレートに差し替えた。
「氷の弾丸は、時をも凍らせる!!」
再びガンモードに戻し、宣言通り氷の弾を地面に放つ。
足元は凍りつき、決まった位置にしか移動できない敵の攻撃は更に鈍り、俺でも避けられそうなほど。
アキラは三人の脚と腕を凍らせ、完全に動きを封じた。
「その素早さと正確さ。俺が思うに、脳の思考速度を無理やり弄って得た能力だろう? それでも、身体の速さに少し追いつけていないみたいだな。だから、脳が一度決めた行動を『キャンセル』することができない」
アキラの余裕の解説をしていると、氷漬けになっていた双短剣の男が炎魔法を発動させ、氷を溶かすが――
その男が自由を取り戻した直後、みぞおちから背中へ拳が突き抜ける。ポリゴンの隙間を抜けてしまうほど鋭い正拳突きは、炎の斬撃を超える勢いで命を削る。HPは底をつき、俺があれほど苦戦した相手を一人仕留めた。
「俺は心優しいヒーローだ。だから、無駄な人殺しをしたくない」
アックスモードに切り替え、それを回しながら残りの二人の近くを歩き回る。その振る舞いは悪の幹部そのもので、次に殺す人間を品定めしているようだった。
「その氷が溶けたら逃げ帰るといい。その前に何か余計なことをしたら、容赦なく殺す。いいな?」
肉厚の刃をそれぞれの首に這わせ、念押しする。
敵に背を向けて俺達の方へ歩いてくるが、付け入る隙は全く存在しなかった。
「行くぞ、ここを離れる」
その場にいる全員に目配せをし、付いてくるよう促す。
彼が敵を見逃したのは、正義の心や慈愛でもない。俺がマイを泳がせたように、あの二人に自分の生存をディモに知らせるための策略。
あえて一人殺したのは、彼自信が優先的に命を狙われるようにするための行為。
「助かったぜヒーロー。ありがとな」
俺がそう言うと、アキラは背を見せたまま、どこか恥ずかしそうに手を振った。
凄まじい光景を目の当たりにし、皆は黙ったままだ。俺とアキラは談笑しながら、例のビルへ遠回りして帰還する。




