4-9.銃こそパワー、妹こそベスト
前後の二人からの同時攻撃。その動きはネコ科の動物のように素早かったが、練度は低い。というより、攻撃自体に慣れていない印象がある。
体を捻って小さく回避し、後方から来ていた仮面の男を斬首した。
素早さこそはあるものの、耐久力は低い。剣の一撃でも急所に当たれば、辛うじて即死させることができる。
恐らく、低いステータスを武装で補っているのだろう。所詮、雑魚戦闘員みたいなものだ。
消滅した仲間を見て、恐れの声の代わりに身動ぎする。そいつに恐怖心を克服される前に、頭を撃ち抜いて終わらせた。
「今日だけで三人も殺させやがって。俺の優しい心が痛むなぁ!」
「どうせ、夕飯食ったら治っちまうんだろ?」
「その前のおやつが限界だな」
クグツと一掛け合いしてからリボルバーを戻し、両手で剣を持って突撃する。
死人を目の当たりにすることで、敵は自分の姿に死を当てはめ、萎縮してしまう。冷静さを取り戻す時間を与えてしまったら、こちらが人数的に不利。
獣のような雄叫びを上げ、相手の恐怖を増幅させ、自分は流れに乗る。怪物になった方が戦いに勝つのはいつの時代も同じだ。
へたり込むマイの方に意識を配りつつ、全力の一撃を乱れ打ち、敵の攻撃ごと叩き潰す。ファニー・オストリッチは経験値も多く、器用さが大幅に上昇していた。そのお陰もあり、頭部や臓器の集中する部位へのダメージが飛躍的に上昇している。
無茶な攻撃で旅人の剣は折れてしまい、再び銃を抜く。マイに迫る二人を撃ち抜き、残り二発。
ハルバードはこの戦いでは不利で、短剣も耐久度が足りていない。こんなことなら、使いにくくても、上等な剣を買っておくべきだった。
しかし、その程度のことで悔やんでいられない。使える手があるとしたら、クグツのインストール。
「インストール、使えるか?」
「疲労が脳に残っている。死んでもいいなら、何発でもブチ込んでやるけど?」
「やめとく」
強化能力に制限は付き物。安々と使える能力では、ミスレニアスの公平性を保つシステムに弾かれて使えない。
俺の排莢から次の射撃までの時間は遅くて二秒。それさえどうにかすれば、銃だけでも戦えるはずだ。
残りの二発を捨てるように、悪趣味な二枚の仮面へ叩き込み、その生涯を終わらせる。
俺がリロードを始めると、一人が待ってましたと言わんばかりに飛びかかってくるので、脚だけで巴投げのように対処した。その時、弾倉からマグナム弾を全部落としてしまい、それを見た連中が一斉に飛びかかってくる。路地裏からどんどん湧いてくるので、その数は十に近い。
「クソォッ!」
誰かを組み伏せ、人質にしようとしたその瞬間、視界に無数の線が走った。
それは、俺を苦しめたマイの剣筋。風魔法が付与されていて、仮面の男達を吹き飛ばす。
「私は死にたくない。お兄ちゃんも死なせたくない。だから、戦う!」
「マイッ!」
その言葉で俺の調子が良くなり、リロードの速度も段違いになる。
オートマチック拳銃の連射力に負けず劣らずの勢いで弾丸を放ち、胸や頭を貫いていく。ヤケになって突っ込んできた敵は、マイが斬って動きを止め、俺が蹴飛ばす。
妹の助力は銃の真価を発揮し、弾丸が次々と敵を屠る。マイも容赦なく敵を殺そうともしたが、仮にも元仲間。とどめは奪い取るようにして、全部俺が請け負った。
「お兄ちゃん。私、覚悟できてる。だから気を使わなくても大丈夫」
そのことはあっさりバレていたようだ。
「全部終わるまで、その覚悟は付き纏う。いいんだな、マイ?」
「うん。お兄ちゃんと一緒だと楽しい。だからその時間を守るだけ」
お互いの思いを確かめ、兄妹の戦いは歯車のように噛み合っていく。
次々現れる敵をマイが浮かせ、無防備になった獲物に弾丸が食らいつく。そして、短剣と投げナイフを取り出し、仮面男二人と鍔迫り合いをして拘束。俺の身体を器用に避け、レイピアが敵を貫く。
今度は、マイの超速の突進をサポートするため、蹴りをジャンプ台にし、リボルバーの弾幕で道を作る。
俺達は、完璧なコンビネーションで次々倒していった。いや、今の所は完璧だった――




