4-3.魔法使いとレンジャー?と……
「そーいえば、サネツグはどんなスタイルで育成してくの? このゲーム、職業とかはないんだけど、早いところ育成の方向性決めないと後で苦労するよ? あたしみたいに、変に手広く習得してたら弱くなっちゃうし」
アイラは得意げに先輩風を吹かせる。
「そういえばスキルっぽいスキル一個も取ってなかったな。西に出向いて銃とか買い揃えるつもりだけど――」
銃と聞いてロッタが立ち上がり、慌ててレンが止める。いい加減、気付かないふりにも疲れてきた。そもそも、頭上表示を消し忘れている時点で変装もクソもない。
「銃ですか? そうなるとかなり育成が難しいですよ。器用さ重視で育成するとなると、筋力値が疎かになって剣での攻撃が弱くなりますし。弾代もけっこうするとか」
ウミネの言い分は、ロッタ先生の講座で言われたこととほぼほぼ同じ。先生本人も腕組をしながらウンウン頷く。
しかし、俺のお師匠様(のAI)はその逆を言ってくる。
「剣士の筋力信仰は、お前には当てはまらないぞ。器用さは弱点へのダメージが上昇する数値だ。持ち前の精密ささえあれば、最終的に時間火力は筋力バカよりも高くなる。銃も剣も扱えれば、対応できる情況も広がるしよ」
彼の言葉を聞く間、悩むふりをしてやり過ごす。結論が出たよう装って、ウミネに言葉を返した。
「それでも、弱点狙えば重装筋力重視のプレイヤーに火力で勝てるって聞くし。やっぱ俺は、ガンナーと剣士両方行ける器用さ重視かなぁ」
「わぁー、茨の道だ。西のガラルに住んでる銃使いは、別ゲームで廃人だった人が揃ってるって聞くし」
その廃人や有名プレイヤーを狩るのが趣味だったので、板娘の心配は無用。
ワイルドオプスやAO0で悪名を馳せたガネシというプレイヤーは俺のことだ。生放送中の有名プレイヤーを襲撃したり、ギルド戦に一人で参加して数十人規模のチームを倒したこともある。もちろん、現実でも訓練を積んだ。
ガチャ爆死でAO0を引退してからはコンシューマーゲーム漬けだったので、勘は少し鈍っているけれども。
それに、ワイルドオプスのプレイ期間のほうが長い。なので銃に頼りたい気持ちも大きかった。
「そういえば、二人は、魔法使いと……何だ?」
ウミネはどう見ても魔法使い。予想が外れて重装戦士かなんかだったら、ミスレニアスを全裸で一周してやる。
「あ、はい。私は攻撃魔法重視で、多少支援魔法も使えます」
セーフ。全裸マラソンは回避だ。
アイラは手広く習得していると言った。外見は盗賊かレンジャーのようだが……
「あたしは……何だ?」
「いや自分で分かってないんかい!」
思わず突っ込んでしまった。
「レンジャーとか盗賊の類じゃないのか?」
「いやー、最初はそのつもりで弓と短剣使ってたんだけど、攻撃魔法でずががーんとやりたくなって。ついでに回復魔法とか、偶然手に入れた魔法銃も使い始めちゃったし……。気づいたらぜーんぶ微妙なステータスと熟練度ってわけですよ」
「なるほど、こうはならないようにしよう」
アイラの評価を上げようとウミネは必死に擁護する。
「でもでも、使えるスキルの幅が広いおかげで、二人だけでもいろんな場所に行けるんですよ。私が習得していない、変な魔法が重要になるダンジョンもありましたし」
今「変な」っつったよな。その件があるまでは絶対いらないと思ってただろその魔法。
「なるほど、便利な青狸ポジションってことか。劇場版で大体ポケットとか壊れるけど」
「青くないよ! 緑だよ!」
自分の髪を指差してずいっと身を乗り出してくる。胸に服の生地を押し付ける圧がないので、前かがみになると隙間から見えてしまいそうだ。
「そ、そうか。じゃあ緑狸で。なんか蕎麦みたいだけど」
「いや狸でもないよ!」
流れで狸を認めるかと思ったが、引っかからなかったか。
ネリン酒に続きペタ茶も飲み干すと、腹がタプタプになる。体内で液体が揺れ動く感覚も現実と変わらない。
「さーて、俺はそろそろ行くか」
俺は立ち上がり、ウミネのお胸様に向かって二礼二拍手一礼する。
「旅のご加護がありますよーにっ!」
「参拝しないでくださいっ!」
ロッタはその様子を見て、自分の虚無をスカスカと音がしそうなほど触っている。安心しろ、そこのアイラよりは成長する素質があるぞ。てか、もう既に勝っているまである。
「ありゃ、もう行っちゃうの? これから一緒に狩り場とかどうかなと思ってたんだけど」
二回会っただけの野郎を誘ってくれるのは純粋に嬉しいが、先に片付けなきゃならないことがある。アイラの場合、歪んだ下心が含まれているのだろうけど。
「ちょっと用事があってしばらくは無理なんだ。また今度誘ってくれよな」
「そっかぁ、残念。あのレン君も誘って、二人の仲良しプレイとか見たかったのに」
やっぱそれが目的か。
「じゃあな」
凸凹に別れを告げ、会計を済ませた。
俺が店を出ると、レンとロッタがバレバレな追跡を再開する。
店内に残ったアイラとウミネも、もちろんそのことに気づいていたようだ。
「あの変装はないよねー」
「ちょっと目立ちすぎかも。名前も消し忘れてたし」
アイラは首と手をブンブン降って否定した。
「いやいや。そうじゃなくて、レン君の女装だよ。やっぱ男の格好して男同士ってのがいいと思うんだ! でも、年上に恋する男の子ってのは燃えるッ!」
「あはは、そういうの私には分かんないや」
よく分からないけど「アイちゃんが楽しそうならそれでいい」とウミネは思っている。
でも「もっと私にも興味を持って欲しい」という、複雑な心境は拭えなかった。




