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2-11.オペレーション・ニューヨーク第二段階

 開けっ放しにしていた窓からそっと身を乗り出し、足場になる突起に足を掛ける。

 かなり大きい建物を、この狭い足場だけで回り込む必要があった。なぜなら正面や裏口の扉は、開閉で大きな音がするようになっているからだ。


 自室隣の窓の下を通り過ぎようとした瞬間、おぞましいセリフが聞こえてくる。


「あぁん! ダメだよサネツグぅ! 人の家でこんなぁ!」


 怖いもの見たさで恐る恐る覗くと、抱き枕に襲われるレンの姿があった。枕を俺に見立て、それに襲われる遊びをしているらしい。


(見なかったことにしよう……)


 器用に抱き枕に襲われている彼のことは忘れ、風呂場を目指す。


 この屋敷に暗い場所は存在せず、常に明かりが灯っていた。窓からの光は俺を照らし、壁を伝う姿が目立ってしょうがない。これが敵地への侵入とかでなくて良かった。もしそうだったら、今頃歩哨に見つかって蜂の巣だ。


 建物の裏側まで難なく進んでいくと、一際可愛らしい部屋が目に入る。それはロッタの部屋だったが、幸いにも彼女は寝ていた。部屋の明かりも付けっぱなしで、大きなベッドに丸くなって寝ている。


(遅くに入るとは言ってたが、寝てるなら大丈夫そうだな)


 覗いているところを見つかったら問題なので、さっさとその場を後にし、風呂場へ窓から侵入した。


 改めて見ると、一軒家の風呂とは思えない。そこらのスーパー銭湯より広さがある。

 装備を外すと自動的に現れるインナーも全て外し、裸になった。天井からぶら下がった異国情緒溢れるシャワーを使って体を洗い、湯船に浸かる。思わず出そうになった声も念の為に抑え、心の中で唸り声を上げた。


 水の表現は現実そのもので、アニメ調やドット絵のような魅力は薄い。髪から落ちる水滴の感覚や、水中で動いたときの抵抗感。ゲームとしては過剰なリアリティだが、地球の代用品と思えば妥当な機能かもしれない。


「うっかりうっかり。思わず寝てしまいました」


「――!?」


 寝ていたはずのロッタが目を覚まし、脱衣所に現れる。曇りガラスの先に、装備を外した彼女の姿が浮かび上がった。


 頭を高速回転させ、打開策を導き出す。


(落ち着け俺……侵入に使った窓は高く狭い。しかも、ここからでは遠くて間に合わない可能性がある。この見通しがいい風呂場で隠れることが可能な場所はただ一つ。天井だ)


 これはゲームなので着替えは一瞬だし、声を出せば解決することだった。しかし、俺のラッキースケベに期待する深層心理が邪魔をして、その選択肢を打ち消す。それに「これで俺も、ラブコメの主人公だぜぇ!」とか思っていた部分がある。


 天井の角部分に飛びつき、両手両足を押し付けて張り付く。自由を得たマイサンが振り子のように揺れた。


(ヤバイ! この絵面めちゃくちゃ変態っぽい)


 いよいよ扉が開かれ、一糸まとわぬロッタが風呂場に足を踏み入れる。


(もしかしてこれ最悪の隠れ方なんじゃね? 見つかった時どう弁解するんだよ!)


 悔やんでも遅く、彼女は身体を流そうとシャワーに手を伸ばす。少し顔を上げた視線の隅に、俺の必死に貼り付く姿が映った。


(あ、目が合った)


 ここはとりあえず、爽やかな感じで乗り切らなければ。


「おいおい、まだ俺が入ってる途中だぜ。一緒に入りたいからって、押しかけるもんじゃないぞぉ。ああこの体勢? 筋トレ中」


 爽やかさなんて打ち消すほどの体位。彼女の声にならない悲鳴。


 ここで初めてロッタは武器を取り出す。複雑な装飾で大ぶりの杖を振るうと、あらゆる属性の殲滅魔法が繰り出される。屋敷は七色に煌めき、それが収まった頃には、ボロ雑巾が打ち捨てられていた。

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