2-6.パーティー結成?
正式にロッタに頭を下げ、いつの間にか付いてくることになったレンと共に北の【ザンヘル】行きの馬車の手配をする。
ザンヘルはミスレニアス最大の都市で、旅人に欠かせないアイテムが安く、美食の街でも有名。景観は地球上のどの都市よりも美しく、花と細い水路、自然と石畳の調和が素晴らしいという。
しばらくするとNPCが操る簡素な馬車が用意され、それに乗り込んだ。座っていると流石に剣が邪魔なので、装備を外す。
ロッタは座るやいなや、干した赤い木の実が入った袋を取り出し、見せつけるように食べる。やはりまだ怒っているようだ。ある程度稼いだら、ザンヘルで一番いい店で食事を奢ると誓う。
三人で座るにはそこそこ余裕のある座席だったが、レンは無理矢理くっつこうとするので、それから逃げていたら隅まで追いやられてしまった。
仕方なくメール機能を開き、本部へ報告文章を作る。
「無事協力者と合流。特殊なチュートリアルに遭遇し、前例がないとのこと。後に詳細を送る。それと、至急調査をして欲しい人物がいる。ディモの組織に誘拐された人物で『レン』に該当する人物の素性調査を要請したい。一部怪しいが、協力者であり保護対象になる可能性があるので、白か黒かの判断を求む。フレンド登録情報から解析することが可能なはずだ。最後に、北の雪山について優先的に情報を送って欲しい。自分の仕事はエニアス探しだが、ヤツらの雪山に対する必死さが引っかかっている。何かがあったとき、こちらもそのことで動けるようにしておきたい」
そう書き終えたが、出発してからほんの数分。荷物の整理でもして時間を潰したいが、アイテムは数えられるほどしかない。
外の景色は星空のせいで夜にしては明るく、隠密作戦がやりにくそうだ。
暇そうにしていると、ロッタから口を開く。
「そういえば、レンは特殊なチュートリアルというものを聞いたことがありますか?」
先程の事件と通り名のせいでレンは一瞬彼は構えたが、自然体を装って答える。
「いや、聞いたことないけど。もしかして、サネツグが遭遇したの?」
「そんな感じだ。俺が壁にした剣あるだろ? あれと、旅人の短剣に付与された強撃がその戦利品って感じだな。エンシェントヒーロー・ロットンミートってのと戦った」
レンは何かを思い出したように、少し食い気味で言った。
「エンシェントヒーロー!? それなら、セントラルタウンから大きく離れた地域に住んでいる人から聞いたことがあるよ。ストーリークエストの一種で、ミスレニアスに存在した古代文明の謎を追うクエストで出てくるとか。戦える可能性はすごく低いらしいけど。多分、僕のステータスでも勝てないと思う」
「ギリギリまでHP削ったんだけどな。何ていうか、あいつとは通じ合えるものがあって、パルべライザーと武器の強化を置き土産にどこかへ行っちまった」
「やっぱすごいや、サネツグは。このまま強くなったら敵なしだよ」
ロッタは小腹を満たしたのか袋をしまう。そして身を乗り出し、忠告してくる。
「対戦で早速使ってましたけど、それほど珍しい武器なんです。無理矢理奪ったりする機能はないとはいえ、現金の束を握って歩いてるようなものなんですよ」
「あ、ああ。肝に銘じとく」
レンとロッタが徐々に打ち解けた様子になったところで、ロッタ側から提案があった。
「そうだ、レンもサネツグの鍛錬に付き合ってくれませんか? 私は魔法特化ですから、近接武器について教えられることに限界があると思うんです」
「もちろん!」
即答。だが、俺の求めるスタイルは剣士ではない。
「いやぁ、でも俺はガンナー志望というか。近接武器も使うけどさ、やっぱ銃がいいなって……」
「ダメです! ハルバード装備のサネツグをタンクに。レンがDPSで私は魔法支援。そういうパーティープレイをしましょう! 銃なんて弱いし、タンク役は成長が早いですよ!」
レンは恐る恐るか細い声で割り込む。
「えっと……銃も場合によっては剣よりも火力出るよ。弱点を集中攻撃できる腕があれば、ソロプレイヤーでも大型種狩りができるし。唯一の難点が、弾の管理ってだけで弱い武器じゃ……」
「そうなのか? じゃあ明日にでも西の方へ――」
そう言いかけたところで、ロッタが胸ぐらを掴んできて駄々をこねる。
「ダメなんですよぉ、銃なんて雰囲気壊す武器使っちゃあ。剣と魔法で冒険しましょうよぉ。ファンタジーなパーティプレイやってみたかったんですからぁ」
ぼっち少女に揉みくちゃにされ、ついでにレンも参戦する。静かな夜の平原に、馬車だけが賑やかに揺れていた。




