0-1.始まりは、芳しく
あゝクソッタレ。
とにかく、そうとしか表現できない事件が起きた。
ちょっと昔のテレビゲームを堪能してから、トイガンコレクションのメンテナンスをしていたときのこと。
甲高いガラスが割れる音と同時に、円筒状でカーキ色の物体が床の上に落ちる。
それには、はっきりと英語で「スモークグレネード」書かれていた。
FPSなんかでは、俺はあまり使わない一品。
まもなく大量の白煙を吐き出し、玩具の類ではないことを理解する。
この時点でミリタリーオタクは、特殊部隊が突入してくると予想するだろう。
――クソッ、残念だが正解だ。
全身を黒い装備で揃えた大柄の男が、窓を蹴り破って飛び込んできやがった。
玄関の扉は爆破され、残りの三人がなだれ込んでくる。
思わず手元にあったハンドガンのM9にマガジンを放り込み、窓からお邪魔してきた男に向けてぶっ放した。
コツンと6ミリのプラスチック弾が、ゴーグルで跳ね返る。
「あ、すんません」
俺の愛銃は、所詮ガスガン。素肌に当たって初めて悶絶する程度の威力しかない。
分かってはいたが、この早撃ちを少しは褒めてくれ。
瞬く間にゴリラみたいな男達に拘束され、結束バンドのようなもので後ろ手に縛られる。
もみくちゃになった挙句、むさ苦しい男臭さを嗅がされると思いきや、上品な甘い香りに包まれた。
(どいつもこいつも……いいデオドラント使いやがって……)