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種なる正義が咲かせるもの  作者: 記野 真佳(きの まよい)
傍若無人なシニカル・ウォー
33/53

策動:命を賭けた奇術師のギャンブラーがいた件について

◇◇◇



「ハハハハッ! トリック・オア・アライヴ! アタチが5で、そこの男は2、女は1だネ。アタチのマスは打撃攻撃アップ! そこの男は素早さがアップに、女のほうは打撃防御がダウンなのサァ!」


 黄影のその目は肉食動物に近い質だった。圧倒的上位という存在が、獲物を狩ろうと見下ろしている。


「ふしだらな視線……。下衆ゲスの極みですわ」

「言いたいだけ言えばいいサ。不利だった理由集めは弱者の特権だからネェっ!」


 浮かべる笑みは禍々しく、楽しんですらいる様子である。余裕すら感じられるその顔に、ビスマスが切りかかる。


「ならば、自分の愚かさに死を知るのも特権だがな!」

「いいねェ、その顔! さあ、来なよ!」


 敵は攻撃してくるが、こちらは攻撃するたびにダイスが投げられるという攻撃制限がついている。しかし、一度追いやられたなら巻き返しが難しい。ならば互いに攻撃が見切られていない今こそ、出し惜しみしない全力攻撃が正解だとビスマスは判断した。


「おっと。そいつは怖いネェ」


 黄影はヘラヘラと笑いながら、手首のすそから大量の金属玉を落とした。それは刃のように冷たい銀色をしており、ところどころがヒビ割れているビー玉のようなサイズの玉だった。


 突如、その金属玉が跳ね飛び上がり瞬時に変形していく。数え切れないほどに大量なやいばと化してビスマスへ跳び上がった。


「くっ!」

「さあ、グズグズしているとアタチがゴールしちまうよ。そらッ!」


 黄影が近づいてきていたビスマスにハイキックを蹴り上げる。ビスマスは剣で薙ぐが、ガインッ、と金属同士がぶつかった音が黄影のブーツから発せられた。おそらく、ブーツに薄い鉄板が仕込まれていると直感する。


「隙ありですわっ!」


 コウカが黄影の背面から水の剣で切りかかる。ビスマスの攻撃速度が激しいため黄影とビスマスの一騎打ちになる形が多いが、コウカも決して素早くないわけではない。むしろ、単純な数として戦闘経験から見ればコウカの方が多いため、ビスマスよりも下地に則った戦闘の勘が優れているとすら言えよう。適度に風弓で援護しつつ、慎重に会心の一撃を狙う機会を狙っていたのだ。


「おお、こわい。でも……そういや、アタチはこんなの持っていたなァっ!」


 突如、黄影の体から肋骨や肩甲骨が弾け飛んだ。


「えっ!?」

「引けぇ! コウカ!」


 しかし、骨に見えたそれは骨ではなかった。いわゆる腰帯剣というもので、腰に巻きつけることができる薄い刃であった。背中と腹に十本ずつ貼り付けてあり、魔力で弾けるように起動させることができる暗器であった。


「くぅ、キャァ――ッ!」


 攻撃を仕掛けたと思ったら、気づけば攻撃されていた。慮外な攻撃にコウカは左脇腹、右肘みぎひじを貫かれて血を滴らせる。


「さて、すぐに! トリック・オア・アライヴ! アタチは6が出たぞ! おまえらは、2人とも1だ。かわいそうになァ。あはははっ!」

「コウカ、大丈夫か?」

「貫通したのが幸いですわ。応急処置で止血できるから、戦闘は続行できそうですわね」


 それは惜しかったなとでも言うように、黄影がけらけらと笑う。


「だいたい気づいているようだけど。まァ、言ってやるよ。アタチは暗器使いなんだよねェ」

「自ら本性を言うなどとは……。それが貴様の正義なのか?」

「正義じゃなくて趣味だネ。言うだけお前さんたちがドツボにハマるだろう?」


 警戒されることも含めてあざけることができてこその奇術師なのである。少し行動するだけで、これは裏がある誘いかもしれないと気を尖らせる。いいや、そもそも考えること自体がすでに相手によって操られていないだろうかと勘ぐってしまうだろう。


「考えるほどに分からなくなっていく。だからこそ、勘という運命に身を任せる! それがギャンブルみたいで面白いんだろう?」

「ギャンブルだと!? 貴様、人間の命をなんだと思っている!!」


 ビスマスは激怒したが、黄影は鼻を鳴らして呆れかえる。


「命は命サァ。むしろ、アンタはギャンブルを馬鹿にしているクチだネ。ギャンブルは悪だと言うつもりなのかい? だいたい正義ってひとくちに言ってもねェ。美意識によって変わるものだろう?」


 みなが平等であることこそ正義なら、競い合うことは悪なのだろうか。それが悪でないとしても競い合うということはどんなに美化したところで勝敗が存在する。勝ちがあるからこそ、負けが生まれるものである。それが現実の世界である。

 たとえば、くやしさを胸に勝者になろうと立ち向かう人間もいるだろう。くやしさを学び自分の居場所はここにないと去る人間もいるだろう。勝敗の感情に対してどのように接するかは個人の自由である。ならば、例えばジェットコースターのように元来からスリルを楽しむものが如く、敗北するスリルすらも楽しく感じることは悪なのだろうか。それならば、負けた過去があるからこそ、苦労して勝てたときの喜びを感じるのは誤りなのだろうか。


「単におまえがギャンブルという言葉が嫌いなだけなんだろう? 正義に狂ったお前さんが偏見に満ちているだけなのサ。正義が偏見を持っていないと保てないなんて、それは悪との違いは無い気がするけどなァ」


 大人になるにつれて理解してくるだろう。世界は不条理でできている。大人の世界でも合理性はなくて、人の顔を見て成り立っている不条理な世界も蔓延している。仮に節度を守ったギャンブルをしていても、ギャンブルだからきっと悪いことだと偏見に満ちた正義を振りかざす人間もいるだろう。


「仲良しこよしでみんなが平等だァ? そんな嘘っぱちな世界感なんか薄っぺらすぎて全然感動できないネ。みんなが勝つのが正義なのかい? 違うだろう。勝利も敗北も作った本人の責任で、本人が背負うべきものだろう? アタチも含めてここには挑戦者しかいないんだ。勝利の美酔も、敗北の苦汁も、全てが自身への裁判なんだよ。自身によって裁かれるべきであって、本人が味わうべき問題なんだよ。他人の意見なんか、そもそもはさめる次元の問題じゃないんだ」


 美意識というのは個人の生き様が感じる問題であり、人類全てが一致することなどありえない。現に争いは良くないと叫びながら、宗教は対立し、戦争が起こり、皆がひとくちに平和は素晴らしいと同じ事を思っていても、美意識のせいで決してあい交えることはない。

 それでも多数派というものが存在するが、多数派だからその美意識が絶対正義であると言えるのだろうか。きっと人数が多いから正しいと盲信している群れを前に、考えたうえで違う意見だと叫ぶ人間は存在してはいけないのだろうか。運命のめぐりで偶然にも少数になってしまうことは罪なのだろうか。


「いま目の前にあるこの世界すごろくが、アタチの力なのさ。これが考える力を持った生き物のサガの結果なんだよ……!」


 人間には好き嫌いがある。あれが好き、これは嫌い、多種多様の心を認めているからこそさまざまな意見が出てきて人類は発展し続けてきた。これが、人類が他の生物とは一線を画している、人間として足らしめている複雑性である。


「持っている感情の中で特化した感情。その長所を成長させたヤツがどうして叩かれるのサ? 成長していなくて真面目に生きろと怒られるならともかく、成長して怒られるなんて意味が分からないネェ」


 黄影がギャンブルによる恍惚こうこつうたいあげる。


「気軽にアタチ自身の命を賭けることの何がいけないんだい? 熱い情熱に身を焦がしながら生きる事のどこがいけないんだい? それが生きる事と、どう違うんだい? それが死ぬ事と、どう違うんだい?」


 生きているもの皆が魂を輝かせていたいと思っている。賭けの対象にすることによって発生する輝かしい付加価値。自分の命を輝かせて何がいけないのだと叫ぶ黄影。


「おまえらは、あの世からの歓声が聞こえるかい? こっちに来いよと手招きながら、ハラハラとこの世を見ている姿が見えるかい? アタチ達の命は今、ステージの上に立っているんだよ。この世で最も輝いている瞬間なんだ!!」


 黄影が叫ぶと同時に魔力を込めたその瞬間、コウカへ飛び散り床に落ちていたはずの刃が跳ね上がりビスマスへ殺到した。


「ぐあっっ! しまった……!」

「暗器使いがペラペラと話して時間を稼いでいたなら、それなりの理由があることくらい察するんだネ。奇襲するからこそ暗器なのサ」

「下がってください。わたくしが前に出ますわ」

「すまない。どうしてか、アラウザルの力が入らないんだ……」


 コウカは血塗れた腕を掲げて武器を創り出そうとするが、何を選択すればよいのか迷ってしまう。

 剣が最も威力が高いが、暗器使いの奇襲に近接で対応するのは辛いだろう。弓は距離が必要であり、ビスマスを守りながら動くのは難しい。そうなればと中距離から攻撃する槍を選択した。


「さあ、わたくしが相手です。これ以上、あなたの遊びには付き合ってられないわ」

「いいねェ、その意気! おまえさんもなかなか楽しそうじゃないのサァっ!」


 トランプを投げて翻弄する黄影。燃やし払っていくコウカ。戦況は出合ったときの再演という形になった。

 コウカは目ざとく、トランプの中にいるダーツを見抜いた。


「フッ! やぁ――っっ!」


 ダーツを弾きながら槍に込められた魔力を開放する。突きの攻撃の衝撃波を繰り出した。ドームを横にした形を連想させるような燃え滾る炎のエネルギーが突撃する。

 パチン、と黄影が指を弾くと、トランプの壁が出来上がった。コウカの炎でトランプはなすすべなく燃えていくが、そこには黄影の姿は見当たらない。


「ハハッ、アタチはここにいるぞ!」


 滑り込むようにコウカへ前進していた黄影。派手に燃え上がるトランプのせいで黄影の姿を見失っていたのだ。またあのトランプに騙されたとコウカは歯噛みをするが、もう遅い。


「くっ、やぁ――っ!」


 振り上げる炎槍に対し、胸を逸らすように両腕を広げる黄影。


「近接攻撃なら勝てると思ったのかい? ああそうだな、貧弱な暗器使いは多いから、近接戦では勝てるかもしれないなァ?」


 コウカは黄影の足下に気を向ける。ビスマスとやりあったときの、鉄板入りの仕込み靴を警戒した。 

 しかし、黄影の両腕のそでが破れた。


「近づいたのはわざとだよ。アンタにミスリードさせるようにネェ――ッッ!」


 無骨な太さがあり人の腕ほどの長さの刃が袖を破って広げられていた。左右で一対のハサミのように、黄影が腕を閉じてくる。


「よし、もらったサァ!」


 閉じられる死の恐怖。しかし、コウカの瞳のほむらは消えていない。


「もらったのは、こっちですわ!」


 コウカは槍を黄影へ投げつけるように手放し、槍に送っていた魔力を開放した。魔槍は魔力の塊であり、形を作っていた魔力を手放されたならそれは純粋な魔力の塊となる。槍は身を守る衝撃波となって、持ち主の身を守った。さらに、至近距離からその衝撃を受けた黄影は無事では済まされない。


「ガァァ――ッッ!?」


 それは炸裂する破壊の爆弾。束となっていた魔力が一斉に解き放たれて、小規模ながらも炸裂を起こした。圧倒的な威力を黄影に叩きつける。


「いまですわ。そこっ! やぁ――ッッ!」


 さらに追撃。新しく魔力を練りこみ風の弓を練成し、風矢を連射するコウカ。渦巻く旋風が黄影を消し飛ばしにかかる。


「くがッ、ァァアアッ! やるねェ……。こいつは降参レベルの痛手だよ」


 黄影の左肩から下がひしゃげていた。暗器を隠していた服も原型をほとんど保っていなくなり、立つことすら精一杯のように肩を上下して息を荒げている。


「本当はおまえらごときに使いたくなかったんだけど。いつかウチのボスと遊ぶときに使いたかったが、いよいよここまで追い詰められたら仕方ないサァね」


 黄影の顔が上がり、にらみつけるようにコウカ達を見据える。その目に灯っているのは、貪欲に勝利することを望む怪物の光だった。


『――勝利は鋳造された自由である。ゆえに我は破滅の底に堕ちず、栄光の天へ昇らんと望む』


 黄影が呪文を唱える。世界を起動させるキーワードによって、魔法陣の骨格が変質していく。

 きしむ音を立ててひずんでいく世界。一変して変わった雰囲気の気質に、コウカとビスマスは鳥肌を立たせた。


「くはははっ! これ以上はビタ一文も無い! この身ひとつの大勝負! これがアタチの正真正銘の切り札だァ――ッッ!!」


 フラッシュが焚かれる。黄影の前にある全てのマス目が『1マス進む』のマスになった。


「こうなっちまったら最後。一度ダイスを振っただけで永遠に進む無限連鎖になっちまう。あはははっ!」


 今までの戦いなど児戯に等しいとばかりに、盤面を覆した黄影。ここにいる黄影はギャンブラーとしての本質を捨てて、詐欺師として生まれ変わっていた。


「……さて、先にゴールにたどり着いた方が勝ち。今の状況で誰が先にあがりになれるかな?」


 マスの進みは違いがある。コウカとビスマスは1から3までしか出ないイカサマダイスで、黄影は4から6が出るイカサマダイスである。したがって、以前から多くマスを進んでいた黄影に追い付くのは手遅れなうえに、盤面を黄影の都合よく改造してしまったのだからどちらの方が先にあがれるかなど言うまでもない。


「つまり、わたくし達があと一回でも攻撃したらこの戦いは終了ということ……!?」


 残された勝利の道は一回の攻撃のみ。いいや、攻撃できるならまだ救いはあった。攻撃するだけでダイスを振る権利が得られるのだから、判定次第では攻撃の構えをした瞬間ですらダイスを投げてくる可能性もあるのだ。すなわち、今から少しでも攻撃の挙動を見せた瞬間が、コウカ達の敗北が決定となる。


「不思議そうな顔をしてるな。おかしいなァ? このゲームを用意したのはアタチなんだよ? ここの世界は誰の都合で動いてると思ってるんだい?」


 勝利を確信した黄影が運命を嘲笑うかのように、金属玉を右手の上でころころと転がしている。黄影によって、はじめから手のひらの上で躍らせれていたのだ。


「つまり、わたくし達は勝てないゲームで遊ばされていたということね」

「悪いとは思っているサァ。自身の命をかわいさに、アタチが自分で戒めていたルールを破っちまった。おまえらとの遊びは楽しかったが、こればかりは仕方ないネ」


 その手は悪事を染め上げた手。黄影の右手を空に掲げて、運命のダイスの落下を待つ。


「さあ、お前たちの命もわずか。もう逃げられない。ゲームの代金の支払いの時間なのサァ。ここで、アンタらの命を精算する」


 この世の中は諸行無常。どれだけ頑張ったところで運命は絶対に決まっている。それは努力という成果を嘲笑うギャンブルのように……。黄影という詐欺師と対面した瞬間から、コウカ達の敗北は決定付けられていたのだ。


「――それは結構だ。一撃もあれば充分だからな」


 ビスマスが立ち上がり、剣先を鳴らした。


「ようやく、アラウザルが発動してきた」

「ちょっと。もう、大丈夫なの? あなたは、えっ……!?」


 コウカはビスマスが攻撃するのを止めようと目をやった瞬間に戦慄した。

 彼から莫大なエネルギーを感じられる。あまりの強烈な力に失神しかけてしまった。これがオーナーの言っていたアラウザルなのかとコウカは身震いした。このような存在とオーナーは渡り合っていたのかと、ビスマスと共に自分の管理者オーナーに対しても畏怖すら感じられた。


「あっ、アンタ! なんだその力は――!」

「それは貴様のお陰だよ」


 ビスマスのアラウザルの効果が発揮できなかったのは、黄影がゲームという形式であれど公平だったからであった。お互いにランダムにパロメーターが上下するという事象は、黄影の公平な信念があったため、ビスマスは完全にはアラウザルの効果を発動できなかった。正義はルールに基づいて行われるべきものであり、多少の有利や不利があってもそれは運が悪かっただけか個性の範疇である。一種の信念によってルールに従った戦いならば、いわば特殊な形式の決闘である。正義を重んじているビスマスのアラウザルと、黄影の決闘ゲームは相性がすこぶる悪かったのだ。


 無論、イカサマのダイスは悪であるが、それを公言したうえでそのイカサマに基づいた勝つ方法を相手へ提示している。変則的ではあるがルールには違いない。悪事というものは、公平に見せかけて圧倒的な不利がある場合、それが悪意に則って行われたならば悪事なのだろう。


「おまえがルールをもてあそぶなら、俺は取り締まろう。それが、聖騎士の仕事だ」


 黄影は自らルールの公平さを失くしてしまい、悪事に手を染めてしまった。ゆえに、悪を許さぬという正義のアラウザルが誘発し、ビスマスは超強化される。イカサマという悪事を正すことは、正義の発動条件の規定の範囲にあったのだ。


「ケッ! 土壇場に来てこれなのかよ! だが、これでおしまいなのサァ!」


 ビスマスが剣を構えたため、手を振り下ろす黄影。宙に踊るダイスの数字。

 絶体絶命。スローモーションのようにゆっくりとダイスが落下し、地に小さく跳ねてワンバウンドする。


うるさいぞ。もう終っているだろうに」


 銀翼のビスマスは、すでに黄影を切り抜けて納剣していた。少し遅れて腹から両断される黄影。それから遅れて、ダイスの落ちる音が転がった。

 ビスマス以外の全員が、どのような現象が起こったのか分からずに唖然とする。


「うそ。なにこれ? え……?」


 コウカも理解が追いつかずに思わず言葉が漏れていた。

 黄影の失敗はもう一つ。ビスマスのアラウザルの威力チートを軽視していたことだ。ビスマスは正義に燃える男である。ゆえに、不正は正されるべきものだからこそ、その不正を正すまでどこまでも強くなれる。

 実はビスマス自身もどこまで強くなれるかは分からなかった。これは一種の賭けではあったが、成功するだろうと確信はしていた。それは、我らがダンジョンの主。あの異常な素早さを持った筋肉チート人間と同等の速度で戦っていたのだから、この程度の奇跡など当然の結果である。


「ぐはっ! くかかかっ、嘘だろ。アタチが負けちまったんだ、あははは……っ!」


 黄影が天井を見上げてながら笑い転げている。しかしそれはひとりごとではなく、誰かに語りかけている言葉のようにも見えた。


「まァ、いいサァ。あいつに自慢できる、良いネタを手に入れてやった……。じゃあネ、お嬢ちゃんと正義のヒーローさん……」


 天に語りかけるようにつぶやく黄影。天にいる誰かへ魅せていたギャンブラーの喜劇は、本日をって閉幕となった。




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