心情:ウチの魔法戦士が実はチョロいかもしれない件について
町から渡された資料に目を通していく。セリ村の住人は一時的にサース町へ全員が引っ越して、防衛訓練を受けはじめたらしい。防衛のコーチは主にギルドマスターがやっているが、教える人数が多いだけに冒険者の手も借りているらしい。
「ふぅ……。読み終わった」
「お疲れさまですわ、オーナー」
資料から目を放すとコウカがいた。今日はコウカが最初にマッスル神の特訓を終えたらしい。
「コウカか。町の話だがギルドマスターは、引っ越してきたセリ村の住人への対応で、今日は予定があるらしい。唐突に俺は休みになった」
「いい機会だと思いますわ。骨休みにはちょうど良いかもしれません」
「そうだな。それにしても、ギルドマスターって忙しそうなんだな。前も用事があって定時報告にも遅れてやってきたし」
「そうですわね。人をまとめる仕事ですし、情報交換は直接会うのが基本ですので。他のギルドマスターに会うために出かけることも多かったですわね」
「今更だが、ギルドってどんな仕事をしているんだ? そんなに頻繁に会わないといけないものなのか?」
コウカはひとつ咳払いして、説明しはじめた。
「ギルドは登録されている冒険者を、人手が欲しいところへ送る場合がありますからそれがメインの仕事だと分かれば話は早いですわ。例えば討伐などの命に関わる仕事もありますので、グループを組むうえで、誰が合う、合わないというのは非常に重要なことですわ。だから、実際に人なりを知っているギルドマスター同士が会って、相談するのがベストということです」
人が足りないところへ送ると聞いて、派遣社員の全国版のようなものかと思った。
「もちろん、戦い以外にも人手が足りない場面でもギルドが動くことがありますわ。例えば今回の防衛のためのトレーニングコーチ。お祭りなどの臨時の町の警備だったり、職種はさまざまですわね」
「なるほどな。冒険者をひとくちに送るといっても幅広い知識を求められるのか。なら、全体を知っているギルドマスター同士が話し合ったほうが早いとか、そういう場面もありそうだな」
「理解が早くて助かりますわ。本当にオーナーは頭の回転が良くて素晴らしいです」
「トゲのある言い方だな。なんかあったのか?」
言いづらいことなのか少しだけ逡巡してから、コウカが言った。
「あの妖精。ホミカはなんとかならないですか? オーナーの権限で……!」
怒りを必死に耐えるように、語尾を震わせながら言い放ったコウカ。
ヤバイ。なんか地雷を踏んだ気がした。
「初めて会ったときはかわいい子だなと思いましたけど、笑いながら釘バット(国民的ハリセン)で襲いかかってきたり、なんなのですかあの子は!」
「ああ。うん……」
「しかも重度のサボリ癖が酷すぎます! あまりにも逃げたりしてるから、そばにいるわたくしが追ったりとか、任せた仕事を途中で放り投げ出したフォローとか、誰もやらないからわたくしが見てないといけないじゃないですか!」
「た、大変なんだな……」
イチイとミーヌは子供で自分のことに精一杯だろうし、オウレンは快楽主義的なところがあるから、むしろもっとやれと悪ノリするときも多い。よく考えてみたら、一番に苦労を背負っているのは新参のコウカなんじゃないかと思った。
「よりにもよってマッスル神さまのトレーニングを抜け出すとか……。ダンジョンの信仰の中心の神様を相手にサボるとか正気じゃないですよ! アホなんですか、あの妖精は! 残されたこっちはマッスル神が機嫌を損ねないか気が気じゃないというのに、なんなんですかぁぁ――っ!」
「とりあえず、落ち着け」
「落ち着けませんわよ! ダンジョンは共同体です。ひとりがサボッてそれを許したら怠けてもなんとかなる雰囲気が出来上がってしまいます。みんなが協力し合って生き延びていく在り方を、あの子は壊しているのを理解していないのです。イチイちゃんに、ミーヌちゃん、オウレンさんとワケありで、ここ以外には生きるのが難しい方がいます。あの人たちを路頭に迷わせるつもりですか? 本人は自覚していなくても、誰かのために生きているということを知らなければ、ダンジョンはすぐに破綻してしまいますわ」
「なんというか、あれだな。コウカも、けっこうダンジョンのことを考えてくれているんだな。仲間思いで、優しくて、とても助かる。いろいろ考えてくれて、ありがとうな」
「べっ、別にたいしたことないわよっ! わたくしは……その……っ!」
ごにょごにょと言いよどむコウカ。やっと止まってくれた。発言を止めるよういさめるよりも、こういうことを言えばいいようだ。
にしてもコウカはちょっと誉めたりして揺さぶりをかけるとすぐに素が出るんだな。だからホミカがチョロいヤツだと弄りにくるんじゃないのかと思った。
「とにかく! そういうワケでこの機会に、ホミカ以外にもダンジョンのあり方について徹底的に教育することをオススメいたしますわ」
言いたいことは分かる。それは大切なことなのだろう。だが、ちょっとだけ引っかかるところがあった。俺はそれを口にする。
「コウカ。おまえ、頑張りすぎないか?」
「頑張ることの何がいけないのでしょうか?」
「悪いわけじゃないが、コウカって頑張りすぎて空ぶるタイプっぽい気がする。だからホミカに弄られてるんじゃないのか? ホミカ以外にも、冒険者だったときに弄られまくるの経験したことありそうだけど?」
「えっ? う、うぅ……。まあ、そうですわね」
「コウカは自分のことだから感じにくいだろうけど、まわりにいるやつらはずっと気を張っているのを感じて過ごさないといけないから居心地が悪くなるだろ。もっとゆるく考えろよ。ツンとしてたらもったいないぞ。顔も整っていて美人なんだし、かわいいところもあるんだから」
「かっ、かわいいって! そ、そそっ、そんなこと……っ!」
カァーっと顔を赤くして、手をぶんぶん振って否定するコウカ。そうやって取り繕うところがとてもかわいいとオウレンのもっぱらの評判なのだが、そう言うとまた地雷を踏み抜く気がするので黙っておく。
ん? 俺にとって? いや、俺は女嫌いだぞ。それ以前の問題だし。
「べっ、別にかわいいとか言われても、わたくしは何とも思いませんわっ! あなたはダンジョンマスターなのです。ならば、もっとこう……威厳をもって切り捨てるようにズバッて言うべきですわ!」
「威厳と言われてもな。何をすればいいんだよ」
そんな抽象的なことを考えるのが面倒くさいとは口が裂けても言えない。とりあえず表面上は合わせることにする。
「たとえば、『オイ、そこの女! こっち来いや!』みたいな感じに」
「…………そういう風に扱われたいのか?」
「その目はやめなさい! 違いますわ!」
わたわたとするコウカ。こいつは、行動よりも理論が先に出るタイプでそのうえ真面目すぎるから、自分から地雷に突っ込んでいくときがある。
「落ち着け。分かってるって。強さに裏打ちされた、威圧感がありそうな言葉遣いとか振る舞いとか、そういうことなんだよな」
「~~~~ッ!」
分かってるじゃないかと、俺を睨みつけてくるコウカ。ぐぬぬ、という感じに拗ねている。
「まあ、いいですわ。やさしいのは良いことですが、なんと申しますか……ダンジョンマスターは横暴なイメージがあったので、正直に言うと戸惑っている部分があります。どうしてあなたは優しいのですか?」
「優しいねえ……。なんかあったか?」
ヤレヤレと言ったようにため息を吐かれた。
「ミーヌちゃんのこと、聞きましたよ。それとオウレンさんも保護をしていますし、イチイちゃんも奴隷として配下に加えているのに手荒には扱っていません。わたくしのことも、そうですわ。極端な話、適当に口車でも乗せて一方的に脅して働かせることもできたはずです。いいえ、むしろ効率だけで言えばそれが一番ですわ。あなたは、どうして優しいのですか?」
言われてみるとなし崩しとはいえたしかにおかしな話である。女性嫌いなのに、積極的に保護をして守っているのだ。
「……引け目があるからかもしれないな」
俺には前世があり、それの影響なのかもしれない。
いじめが原因で他人は、特に女性は嫌いだと精神に刻み込まれている。存在の根本を否定されたことによるトラウマが今も根付いているのだ。しかし、だからこそ自分を慕ってくる人間にはせめてやさしくありたい。そんな価値観が基準になって今の状態があるのだろう。
「それと今、ダンジョンバトルが始まろうとして、改めて他のダンジョンもとい、他人の存在を意識した。だから、ちゃんと生きているか。ちゃんとダンジョンを経営できているか。色々なことが分からない不安があるのかもしれないな」
自分の居場所を守れているのか。害意によって塗り潰された前世だったからこそ、せめて害意のない人間くらいは守ってやりたかった。前世があるからこそ余計に俺ができることはなんなのかと考えてしまうときがある。
少し目を瞑って深く考えたコウカが、わたくしが言えた義理ではありませんが、と前置きしてから言ってきた。
「その話を聞いていろいろ思いましたけど気にしすぎですわ。感情はあくまでも思考の一部です。ですから、感情を飲み込みすぎると考えるスペースが少なくなってなにもできなくなってしまいますわよ。そもそも、そういったものは自分の中ではいくら考えても堂々巡りで結果はでません。きっと、考えた時点で失敗の類の問題だと思いますわ」
コウカにしかられる俺。
「……まあ、良いのではないでしょうか。わたくしはダンジョンに勤めるのは初めてですが、あなたが頑張っていることは知っています。ベストを尽くしているのですから、胸を張って自信をもってください」
「そうなのか?」
「ええ、とても尊い心得だと思います。オーナーは立派に生きていますわ。だから、わたくしが保障します。それが信じられなくても、今は虚勢でもいいですので自信をもってください」
コウカはそう言って微笑んだ。
「分かった。そこそこ持つことにしとく」
「はい。それがベストですわよ、オーナー」
さっきまで拗ねたり、怒ったり、プスッとしていたコウカの顔が、とても優しい微笑みに変わった。
そういうところがオウレンにかわいいと言われるのだが、怒られそうだから言わないでおく。
「つーか、今日は休みだが結局は町に行かないといけなかった。あまりしゃべってると夜になっちまう」
「そうなのですか。わたくしも町に用事があるのでついていきますわ。荷物はありますか?」
「1個あるな。今から持ってくる」
俺は戸棚からドサリと袋を取り出した。これはポンコツ丸が廃材から作った鉄のインゴットだ。俺達の武器のために鉄をとっておいたが、余ったから交換に出すことになった。
金属がこすれる重たい音がする袋を見たコウカが小さく笑う。
「貿易ですか? ちゃんとダンジョンマスターをしているじゃないですか」
「ん? 当然のことだろ? 他のやつは特訓で疲れているんだから」
「そこを当然と言い切るところが、ちゃんとダンジョマスターをしている証拠だと思いますわよ。さて、ソレはわたくしが持ちますわ。せっかくのお休みですから、オーナーはお体を大事にしてください」
「そうは言うが、これは重いぞ?」
「――っ! い、意外と重いですわね。冒険者をしていたから、自信はあったのに」
「俺向けの量だからな。ほら、返してもらうぞ」
「そうしますわ。では、他の指示をお願いします、オーナー」
さりげなく指示を伺うところが、コウカの気をつかえる優しさだと思った。
ギルドを含めた町の話もでき、戦闘も、訓練の指示も出せる。対人関係はお嬢さま生まれの上品さもあり、相手に不快な思いをさせない。むしろ優美と感じられ惹かれる部分すら持ち合わせている。とてもハイスペックな人間であるが、ちょっと抜けてる感じがあるがそれは愛嬌とも言えるだろう。
◇◇◇
町の武器屋で、鉄のインゴットを魔鉱石と交換してもらった。ポンコツ丸いわく、コウカの武器に仕込む魔術回路を作るのに必要だったらしい。これで俺の用事は終った。
「一身上の都合で、申しわけありません。ありがとうございますわ、オーナー」
「どうってことない。これで終わりか?」
「はい。冒険者ですから定住することに慣れてなくて。気づかない間に持ち物がシビアすぎてましたわ。いざ定住するとなると困りましたが、これで大丈夫です」
コウカの用事は日用品の買い物だった。俺はそれの荷物持ちになっている。
「俺よりもダンジョンのことを知っているのに、過ごし方は知らないなんてチグハグな知識っぽく見えるな」
「まあ普通は知りませんから当然のことですわ。知識は冒険者で稼ぐのはダンジョンが一番ラクですから、一通りは叩き込みましたわ。たとえば、ダンジョンの管理人は時間が隔離されている話は有名ですわね」
「マジか。知らないんだけど」
「そ、そうですか? ダンジョンマスターは信仰する悪魔の眷属です。まあ、わたくしたちの場合はマッスル神ですが、信仰という形で恩恵を得るのは一緒なので由来する力は同じものと考えて結構です」
「神と悪魔の違いは前に勉強したな。たしかアイツらは、魔法の究極の形みたいな感じだったかな。崇拝という形で願いが媒体になって、ダイレクトに召喚するような感じに覚えていた気がする」
魔法というのは念じて使うもので、心で思うものである。なので、たくさんの人間に思われているものは、強い魔法状態というわけだ。それが崇拝という形で思われているものは神や悪魔と呼ばれ、例えば重力などの当たり前の原則と思われているものは概念と呼ばれている。
「さすがオーナー、いいセンスですわね。この崇拝がダイレクトに実現化されているのがポイントなのです。例えば悪魔が、時間が経つにつれて老けていくなんて想像できませんよね。信仰を母体にした、老けそうにないという概念によって悪魔は存在しています。神も同様ですわね。これは精密に言えば、魂の強度が猛烈に高く、さらに不変の存在であるという概念が後押しして、魂の損耗がまったく無い状態になっている状態です」
崇拝を通じた願いがあり、それを実現するために現実に合った適正として、魂が頑丈になるということらしい。
「オーナーはマッスル神に眷属化されているので、概念を共有しているのです。ですから、オーナーの魂の形が不変です。ですので、時が経っても老化はしないのです」
「そこだけ聞くと、俺が不老不死になったみたいだな」
「怪我はしたりもするので夢物語のようなものでなくて、不老って言い方が正しいですわね。魂が固定化されているので、それ以上は歳をとらないです。逆に万が一に若返ることがあっても、『不変の魂』の概念のせいでまた元に戻ってしまうでしょうね」
「眷属化なら、俺がコウカ達にもしたよな。あれはどうなるんだ?」
「鋭いですわね。眷属化は概念を共有するのですので、連鎖的にわたくしたちも不老になっていますよ」
コウカが皮肉げに小さく笑った。
「年齢的にあと少しだけ成長できたかもしれませんが、わたくしにとってみれば成長するとしてもいらないところですので問題はないです」
非常に破格に育った胸をゆさりと揺らしたコウカ。
胸が大きいのがコンプレックスとか前に言ってたよな。これ以上大きくなっても困るということか。
「待てよ。つまり、成長できないと言うことは、イチイとミーヌは……」
「お久しぶりですね。顔合わせ以来でしょうか」
聖騎士、ビスマスが声をかけてきて思考が遮られた。
「あら、この立派な鎧の方はどなたですか?」
「この町の聖騎士をしているやつだ。いや、そんなことよりも、ちょっと待て……」
うわさに聞くエターナルロリータになってしまったぞアイツら。ウン百年生きてもロリ属性というマンガみたいなキャラの誕生の瞬間である。それはそれで、ファンタジーだが実際に俺が発端となると、なんとも言えない気持ちになった。
ヤバイ。ああいうキャラって歳をとれないことがトラウマになって、その原因を深く恨んでたりするのが多いだろ。アイツらに『オトナになれないから責任取って』って言われたらどうしよう。
「はじめまして。オーナーの眷属のコウカと申しますわ。鎧を着込まれているようですが、いったいどうしましたか?」
帯刀し、兜までかぶって完全防備である。
「聖騎士は自衛団の長もかねている。それの巡回中だ」
「性が出ますわね。でも、わざわざ長が出なくても、よろしいのではありませんか?」
「長が出てきたほうが本気出して警備していると思えるだろ。効率だけなら拠点で構えていたほうが良いが、未然に防ぐことを前提にするならこれが正しい。特に今は人の出入りが激しいから、それにかこつけて悪事を働こうとするやからもいるだろう。なおのこと悪事を起こさせないように分かりやすくアピールする必要がある」
俺達の間にシュタッと誰かが空から下りてきた。
「ビスマス殿! 繁華街の件は姫さまが制圧しました。一件落着です」
「おい、アマチャ。おまえ、どこから降ってきたんだよ?」
「んん? おお、いたのかダンジョンマスター! どこからって、屋根に決まっているだろう? 忍びは目立つ場所から現れないからな」
フフンと胸をはるアマチャ。そういえば伝令をしているといっていたが、どうやらビスマスとの事だったようだ。
「あいつらの話で思い出したが、アラウザルってどうやって覚えたんだ? 俺でもできるものか?」
キキョウも習得していたし、どうなのだろうか。俺のチート加護に匹敵する力があるスキルだから、うちのダンジョンメンバーの誰かひとりでも覚えれば戦力としてかなり期待できるはず。
「できますが、すぐにマスターできるものではありません。自分の夢を紡いでいく覚悟をすること。それがアラウザルの本質ですから」
「詳しく聞いていいか? 今後の参考になるかもしれん」
「わたくしも良いでしょうか? アラウザルの発現者は存じておりましたが、実際に会ったのは初めてです。発現する感覚をぜひ、聞いてみたいですわ。ええ、今後のダンジョンの発展のために、ぜひ聞いておきたいです!」
コウカが目を輝かせている。こいつ、ダンジョンの発展じゃなくて、未知に惹かれているだけだろ。
ビスマスが語り始める。
「発言する方法は、自分の夢は何なのかを見極めて、決意することです。魔法とは願いを媒体に具現化したものであり、アラウザルは願いの上のランクである『決意』を媒体に具現化したものです。
自分が信じているものは何なのか――。世界を知っているほど精度は高まっていくでしょう。選ぶ対象が多いほどに、より本心に近い夢を吟味できるからです。その反面に世界を知るほどに迷いが生じてくるでしょう」
「魔法よりも上位となると、確かに強力ですわね。しかし、それは感覚的ですか? データとして報告されているものですか?」
「一応ですが報告はされています。刷り込んだ夢、人工の夢を発現された例があり、そのデータがあがっているらしいです。ちなみに、その偽りの夢で発言させたアラウザルは、その発現させたヒト自身を食い殺したらしいです」
なんかめっちゃ怖い設定が来た件について。
「決意という大いなる意志によって行動が変わり、すなわち連鎖的にその人の運命が変わります。すなわち運命よりも決意の方が、力は強いということです。
もしも偽のアラウザルを覚えたあとで本心に気づいた場合。本心は、偽りの夢で作られた決意に反したことになります。しかし、決意は極上の願いである。ゆえに本心よりも決意の方が強いため、決意がその運命を飲み込んでしまうのです。その結果として、夢に食い殺されるのです」
「怖いですわね。自分の描いた夢に、自分が殺されるなんて」
「ですからアラウザルの発現は慎重になるべきです。強制的に開花させるのではなくて、一種の達観のようなものですから自然に任せるのが一番かと思います。戦力の補強として期待はしない方が良いでしょうね」
発現したらラッキーだったと思う程度に考えろって事か。期待こそしていなかったがいざ難しいと言われると胸にくるものがある。これからのダンジョンバトルで戦力の補強を考えなくてはならないから、心が過敏になっているのかもしれない。
「つまり、姫さまはアラウザルを覚えているから最強ということだなっ!」
こいつは能天気でうらやましいな、と思った。




