席題:俺が変体扱いされたときの対応を考える件について
次の日になった。
オウレンがなんかアイディアがひらめいたようで、書くことになった。
◇◇◇
オウレンの融合にっきver.3
◇◇◇
①『ダンディなクレヨン』
材料:『赤い粘土』+『すべてを越えしモノ、ニンニク』+『すべてを越えたモノ、キンニク』
効果:このクレヨンで描いた人物が、ダンディな雰囲気で少しの時間だけ実体化する。5ターンの間、フィールドに『謎のダンディ(破壊不能の障害物ブロック)』を出す。
俺「な! なんだこのイケメンな男は!」
イチイ「ご主人さまだよ。ミーヌちゃんが描いたんだよ!」
ミーヌ「(こくん……)」
俺「ミーヌは絵が上手なんだな(でも、ちょっと美化されてないか……?)」
オウレン「このクレヨンで描いたものは、少しの時間だけ立体になるみたいですよ。動かないですけれども」
ホミカ「ホミカも描きましたよ☆ マスターさんです、どうですか♪」
ミーヌ「あぁ、うん……。一生懸命、描いたね」
イチイ「強そう! かっこいい!」
俺「うわ……(前衛芸術にケンカを売っている絵だ)」
オウレン「なんと、これは……(酷いオーラを感じる。邪神の類でしょうか?)」
NEW! ホミカの絵と併用でアイテムを使用すると、固有スキル『威圧のオーラ』を持つ『謎のだんでぃ?(破壊不能の障害物ブロック)』が出るようになりました。
②『すごいコントローラー』
材料:『コントローラー』+『死ぬ死ぬ鷺サギ』+『エゴバック』
効果:体の一部を飛ばして操れる。武器を持った手に使い、攻撃射程を+2まで伸ばせる。
ホミカ「飛んでけパーンチ! あははっ! 面白いです!」
オウレン「かなり細かく設定できますよ。例えば小指の先もできました」
イチイ「わわっ、手が飛んでる!? 面白い発明だねっ! そういえば、ご主人さま! ミーヌちゃんが射撃練習の的を欲しがってたよ。これで手だけ飛ばしたら、ご主人さまが玉を持ってびゅーんって飛んでるのを撃ち落せば練習になるかも? あれ? ご主人さま? おまたを抑えて顔色が悪い?」
俺「俺の玉を……!? いっ、いいや。別になんでもないぞ。(その玉の発言は男にしか分からないおぞましさなんだろうなあ……)」
◇◇◇
オウレンの合成素材が少なくなってきたらしいので、ランダムガチャをすることにした。
さあ奇跡をまわせっ! 10回+1回サービス分をおりゃっとまわす!
ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ゴールドカード! ゴールドカード!
ノーマル
艶やかなクギ
新品のクギ。色気がにじみ出ている。
ノーマル
木製バット
子供用の小さめな木製バット。ふりまわすと危険!
ノーマル
クリアファイル
中身がスケスケなファイル。スケスケって言葉、なんかエロいよね?
ノーマル
すごい彫刻
不気味の谷で信仰されているモッコース神の彫像。
ノーマル
高級なローション
めっちゃぬるぬるする。
ノーマル
きたない縄
ちょっとにおう。
ノーマル
きれいなダンボール
企業や商品の名前が入っていない新品のダンボール。逆に新鮮に感じるね。
ノーマル
白チョークの粉
黒板の受け皿から白だけを厳選してがんばって集めた。
ノーマル
ニンジャの化石
そう、やはりニンジャは伝説だったのだ……!
スーパーレア
アルミの胸当て(女性用)
純度100パーセントで、留め金や鎖もアルミで出来ているこだわりの一品です。
スーパーレア
1階の権利
地下へは作成できません。上に1階分だけ伸びます。
金のカードが2枚だ!
ひとつ目はアルミの胸当てだ。アルミって1円玉の素材じゃないかよ。これはネタ装備か? 大人サイズだからぎりぎりオウレンが着られそうだけど、鎧とか着たら疲れて動けなくなりそうと言っていたから死蔵になるかもしれない。
2つ目は、ついに来たダンジョン改造の権利だ! ひゃっほぅ!!
なになに、モデルを投影できます、だと!? スマホでウチのダンジョンを二階建てにしたモデル画像を出してみる。
……城壁の上に、小屋がちょこんとある。なんですか、この建設途中っぽいのは。プレハブみたいじゃん。つーか、小屋は残るのかよ。その発想は無かった。
うーん。外に出にくくなるから逆に不便になるかもな。じゃあ、まだとっておこう。何よりもカッコ悪いし。
ふと違和感がした。誰かがダンジョンに入ってきたようだ。イチイとミーヌに声をかけて、ダンジョンに誰が入ってきたのかを確認させる。
少し経つと2人が人間を運んできた。
「ご主人さま、捕まえたよ! えらい?」
「すごくえらいな。いい子だ。眠っているからミーヌがやったのか?」
「うん。見つけたのは、ぬいぐるみだけどね」
ねーっ、と話しかける2人に、ピシっと敬礼で応えるテディベアのぬいぐるみ人形。おまえ、前から思っていたけど行動がイケメンだよな。
「よく見たら、昨日の盗賊たちとカッコイイマント君と一緒にいた女の方じゃないかよ。まさかひとりで来たのか?」
この女、なんのために来たのだろうか。
「まあいいや。とりあえず、昼飯が優先だな」
「やったぁ! ごはん!」
「おにいちゃん。本当に放っておいていいの?」
「戦うつもりはなさそうだしな。大丈夫だろう」
ダンジョンの攻略に来たなら複数人数で来るはずだ。ひとりで来たということは、そういうことなのだろう。
さて、今日はカレードリアの日だ。ホミカには大きすぎるので、お弁当用のミニグラタンを出した。
みんなでわいわいと食べていると、女戦士が起きた。
「あの……あなた方は、なにをしているのでしょうか?」
「見て分からないのか? メシを食ってる」
「おいしー!」
「香りがいいですね。癖になっちゃいそうです」
「ミーヌちゃん♪ ミニグラタンの海老をひとつあげますので、ドリアをスプーンひと口だけ交換してください☆」
「うん。はいどうぞ」
俺は昼飯を食っていると説明してやったのだが、女戦士が頭を抱えた。なんだこいつ、何を悩んでいるんだ。
「いちおうわたくしは敵ですよ。それは分かっておいでですよね?」
「おかわりー!」
「はいはい。新しいの出すから、ちょっと待て」
「ダンジョンですから、例えば牢とか、まあそんな感じのところに監禁するとか……」
「マスターさん! これは新発見ですよ! とっても美味しいです!」
「ホミカ、いちいち報告しに来るなよ。あー、ハイハイ、分かった。追加のドリアが欲しいんだな。アツアツのヤツが食いたってことだな。これ、3個ずつだから前のグラタンみたいに食べきれるかわかんねーぞ」
「せめて抵抗できないように、縄とかですね。これはどういうつもりで……」
「おい、テメェ! イチイ! 俺のドリアだけ上の焦がしチーズが半分なくなってるじゃないか! どういうことだ!」
「ぷぷぷっ。怒られてますよ☆」
「イチイだけじゃないもんっ! ホミカちゃんも食べてたもん!」
「ダンジョンマスターという存在がですね……。――あなた達、人の話は聞くべきですわ!!」
「うるせー! メシ時にたずねてきやがって、勝手に叫んでんじゃねーよ! うわっ、また取られちまったじゃないか!! ふざけんじゃねーぞ! 俺の焦がしチーズがぁァァ――!」
「おにいちゃん。わたしのチーズ、半分あげるから落ち着いて」
「あのですね。申しわけありませんけど、わたくしとお話してくださいませんか。怒ってもスルーって、どれだけあなた達は殺伐としているのかしら!?」
「旦那さま。向こうの人が、何か言っていますよ」
「うるせー! 神聖なる食事どきに関係ない事を言うほうが悪いんだよ! こいつらにジャッジメントが先だ! さあ、食べすぎたテメェらに罰を与えよう。食べた料理の数だけ、己の罪を悔いるがいい! いでよ、冷凍コロッケ召喚! ふっははは! 新しい料理だぞぉ! おまえら、腹がいっぱいで食えないだろう! うまいぞー、超うまいぞー! うわっ、久しぶりに食ったら、マジで旨い……!」
「旦那さま、ちょっともらえますか。あら、これは素朴な味わいでいいわね」
「おにいちゃんのコロッケ、おいしい。あれ、こっちのコロッケは味が違うんだ。この色はカレー味なのかな?」
「ぐぬぬぬっ! マスターさんが意地悪なのです!」
「食べるもん! ナポリタンのときは失敗したけど、今回こそは大丈夫だもん!」
女戦士がまったく会話に入れない。というか、密度的に次々と会話が更新されるから、話題に埋もれて無かった事になっている。そう、これがウチのダンジョンの名物、みんなスルースキルの術だ。
ぬいぐるみ人形がポンと女戦士の肩を叩いて、ドリアを持っていってあげていた。女戦士は半分泣きながらドリアを食べた。そして、あとでさりげなく混じっておかわりしてた。
◇◇◇
「それでですね。聞きたい事は2つです。ひとつ目、わたくしをあの時はわざと逃がしましたわね。それはどうしてなのでしょうか?」
「目を離したらどっか行ってた」
「本当にですか! 白状しなさい!!」
いや、なんで俺の方が怒られるんだよ。
まあ本当の理由は眷族が戦力外だから追撃する余裕が無かったのだ。だって俺を除くと、最高戦力が チーム幼女なんだぜ。あとはみんな裏方だ。自分のことながら心配すぎる戦力のバランスである。
「それにしても、逆に驚きましたわ。妖精が住むにしては大きすぎる小屋ですし。やはり、ダンジョンマスターはあなただったのですわね」
えっ、ホミカのやつ、なんかやったの!? ウチ以外でも迷惑をかけていたらスマン。いや、敵だからいいのか?
「もうひとつ質問です。わたくしが危険を犯してやってきたふたつ目の理由です。わたくしのお姉さまがバルバロインという名前の男を探しています。知っていますか?」
「………………聞き覚えは無いな。知らない」
「そう。ダンジョン側のネットワークならもしかしてと思っていましたが、ハズレでしたか」
さも残念ではなさそうに言い切った。どうやら、何度もこの質問を尋ねているらしい。質問が終わったのを見計らって、イチイが好奇心旺盛にキラキラした目でやって来た。
「おねーさん! なんて名前なの? その人ってどうして探してるの?」
「わたくしの名前はコウカ・ベニナーバ。探している人は、ウチのお姉さまの思い人というところでしょうかね。まあ、片思いですけれども」
「ふーん。コウカおねーさんは、大変なんだね」
「わたしは全然ですわよ。……きっと、あなた達の方が大変かもしれませんね」
そっとイチイの奴隷の首輪を撫でた。そして、ミーヌの奴隷の首輪に目をやる。
「幸せそうにしている奴隷は初めて見ましたわ。とても愛されていますわね。まあ、妹さんがそうなら、必然的に感情移入してしまうのかもしれませんわね。ワンコ族のお嬢さん、あなたがもらったお名前を教えてもらっていいかしら」
「イチイはねっ。イチイ・タネブクロって言うんだよ」
「たっ、タネブクロっ!?」
あわあわと慌てているコウカ。錯乱したようにブツブツと何かをつぶやいている。
「タネブクロ……。子種の袋。奴隷商が売り買いするときの性奴隷の暗喩……。 っ~~~~!!?」
「よく分からないが、たぶんお前は誤解しているぞ」
「そ、そうですわっ。きっと誤解ですわよ。ふぅ、良かった……」
「イチイは、ご主人さまが付けてくれた名前なんだよっ!」
「付けた……。所有物……。こんな幼子とダンジョンマスターは、毎晩も……っ!!」
コウカは冷静に考えようと目を閉じて、沸騰したように顔が赤くなっていった。
「ひゃぁ――っっ! もう考えられない! 恥ずかしい! これ以上は無理ムリ! ちょっと、え? ふえぇ!?」
「あと、ミーヌちゃんと首輪はおそろいなんだよっ!」
「うん。おにいちゃんが付けてくれたんだよ」
「つ、付けたの!? 奴隷商人に付けられたんじゃないの!? えっ? ええぇぇ――!?」
「ご主人さまとミーヌちゃんもすごく仲良しなんだよ。毎晩、ご主人さまが一緒に寝てくれるんだよ」
ねーっ、とイチイと一緒に同意するミーヌ。もっとあわあわするコウカ。
「実の妹にも手を出してる!? へっ、ヘンタイじゃないの!! 破廉恥ですわ!」
「よ、よく分からないが誤解だ!」
「じゃあどんな仲なのですの?」
イチイとミーヌが声をそろえて言う。
『せーのっ、結魂した仲です!』
「結婚ですって!」
カァァ!っと顔をさらに赤く染め、耳まで真っ赤になるコウカ。
「こんな小さい子と結婚して、奴隷にして毎晩言うこと聞かせて、熱い夜にしちゃって! 最悪! 最低! 変体! ドヘンタイ!」
「ちょっと待て。なにを勝手に暴走しているんだ。さっきから誤解だといっているだろ」
「わたくし、知っていますわよ。男の人ってそうなんだって! 本で読みましたから!」
「本で読んだからって、おいおい……」
情報ソースが本って、こいつ、実は男と付き合ったこととかないのかもしれない。実は滅茶苦茶ウブなんじゃないか。恥ずかしがり屋でウブすぎて勝手に暴走している様子である。
「コウカさん、わたしからも言いますが誤解ですよ」
「そ、そうよね。何を勘違いしていたのかしらわたくしは。恥ずかしくなってきましたわ」
「旦那さまは懐が広い方ですからね。わたしも毎晩、ご一緒させていただいています」
「ぴゃ――っっ! 旦那さまって言った! 毎晩も一緒に寝ているの!?」
「マスターさん♪ 今日もホミカも一緒に寝ますね☆」
「妖精を相手に!? アブノーマルすぎます! どんな内容なの!? わたくしでは想像しきれない!! ふ、ふぁ――ッッ!?」
コウカが手をわたわたさせて過剰興奮している。コイツ、反応が純粋すぎるぞ。
「本気で落ち着け。妖精が出てきたあたりから気付けよ。お前の想像が間違ってる」
「うぅ……。たしかに……。はい。なんだか頭がクラクラしてきましたわ。し、失礼させてもらいます」
今度は冷静になったのか、しょんぼりとするコウカ。自分の過剰反応しすぎた妄想の度合いに反省しているようだ。
「あら? 胸当てが壊れていますわね」
捕らえるときにミーヌの銃弾が貫通したらしい。七宝染銃の固有スキルで異常状態以外の特性を付けられないかと気軽に試してみたら貫通してしまったと言っていた。
いろいろとパネェ能力じゃねーかよ。イチイのときも驚いたが、神の加護を受けている俺だからか、俺の派生としてあげられる能力もどうやらチートっぽいな。
「そうなのか。防具なしは大変だろう。コイツを持っていけ」
これはちょうどいいと、俺はガチャで当てたアルミの胸当てをやる。誰もつけないならこのダンジョンにあっても無駄になるからちょうどよかった。
「あら。ありがとうございます。もらっていきますね」
「ついでに、こいつもやろう。俺からの餞別だ」
「えっ? あ、はい。とりあえず、もらいますね」
ついでにクマの着る毛布 (赤茶色)←春の新色、を渡したらもらってくれた。どうやらコウカはいいやつだったらしい。
「マスターさん。毛布で人柄を決めるのはどうかと……」
毛布の布教ができて上機嫌な俺には、ホミカのツッコミが聞こえる隙は無かった。




