雑題:お土産を渡したり、アイテム作ったり、眷属が増えたりした件について
ダンジョンの小屋に帰ってきて、さっそくお土産を公開して盛り上がる。
「ホミカちゃん、お土産のリボンだよ!」
「わーい、ありがとうです♪ プレゼントってもらったら嬉しいですね☆」
「良かったですね、ホミカちゃん。私にはありますか?」
「ほら。オウレンにはこれだ」
「えっ、羽?」
「ああ、羽だ」
「なんだか……趣向と言いますか、おもむきがスタイリッシュですね」
「なんかのアイテム作ってがんばってくれ」
「私のプレゼントの嬉しさ成分だけ、自家発電すぎませんか!?」
ぷりぷりと怒りながら はむはむとリズムサンドを食べるオウレン。イチイも食べている。
「あら、これ、おいしいですね」
「うんっ、おいしかったよ! あとは、カリカリのラスクスティックとかあって、いろんな色の綿毛もおいしかったし、すっごく楽しかったよ!」
「そういえば思い出した。町だとロトパイが好評らしいから買ってきたぞ。今更だがアイテムボックスって温かいまま持ってこれたんだな。すげー便利だ。これ、夕飯代わりだからな」
「おにいちゃん。さらっとすごいことを言ってなかった? あたたかいままってことは、時間が止まって……あれ?」
「ミーヌちゃん。マスターさんを深く考えちゃいけませんよ☆ この人は、気合いで料理を出したりできる人ですから」
「あっ。分かるかも。なんでも出来そうな気がする」
俺の存在という概念がついに身内にまでチート扱いされた。
「おや、ロトパイを買ってくれましたね。言うのを忘れていましたけど良かったです。なんとなくお祭りと言ったらこれのイメージがあります。たしか4種類あって、1つだけレアらしいですね。わたしはトマトとひき肉のパイが好きです」
「イチイも大好きだよ! トマトとお肉のやつと、グラタンと、おイモとお肉のやつと他には何があるんだろう」
「聖女をしていたときに食べたことがある人がいましたね。レアは辛いものらしいですよ。好きな人はペロリと食べれてしまいますが、苦手な人はひとくち食べただけでも無理だったかしら」
「すごそう! イチイも食べてみたい!」
ロトパイは8個買ってきたから1つくらいレアが入っているかもしれない。ひとくち貰ってみたいものだ。
ロトパイを配って食べてみる。イチイがレアを引いたが、ワンコ族には辛すぎたのかリタイアする。俺が食べていたグラタンのやつをとられた。なんでおまえは俺のやつを率先して取りたがるんだよ。
えっ、俺の食っていたやつだからだって? タチが悪いやつだ。
ちなみにレアのパイはみんなで分け合って食べてみた。ピリ辛のベーコンとポテトのやつだった。
「あむっ。わたしのはグラタンですね。久しぶりに食べました。お祭りで食べ物以外にも何かありましたか?」
「イチイ、輪投げをがんばったんだよ!」
「コイツはぜんぶ得点が高いところに入れてたよな」
「うん。すごかったよね!」
「えへへー。ご主人さまは、にぼしだったよね」
「あはははっ。マスターさん何をもらってるんですか☆ 他に面白い話は何がありましたか?」
「うーん。おにいちゃん達と行ったオバケ屋敷がすごかったよね」
「どんなオバケさんが出てきましたか?」
「たくさん布切れが落ちていると思ったら、急に動き出して、さわさわーって集まってきてオバケになったのがビックリしたかも」
待て。それ以上話すのは止めるんだミーヌ。イチイがマナーモードみたいにプルプルしてるから。
「うぅぅ……。幽霊なんて死んじゃえばいいのに」
あいつら、元から死んでるよな。
「なるほどー。イチイちゃんがダメダメだったのですね☆」
「懐かしいです。あれは苦手な人は苦手ですからねえ」
「あぅあぅ……。思い出したら怖くなってきたぁ……!」
イチイが、ととっと駆けてきて、俺の腕にすがり付いてきた。
「ふぇ~ん! ご主人さまぁ……」
よしよしと撫でてやる。
すがりついて、撫でられて、それでも満足できなかったのか、俺のひざの上に向き合うようにあがって抱きついてきた。
「オバケ、わたしも嫌だな……」
その呟きを聞いたホミカがニタリと笑い、ミーヌがターゲットになる。
「そういえば♪ ここは夜寝るときは真っ暗ですから、オバケさんとか出そうですね☆」
「ひぃぃうっ! おにいちゃん、ここってオバケは出ないよね?」
「見たことはないな」
「ふぅ……。良かった」
「マスターさんは筋肉キャラなので霊感が無さそうじゃないですか。アテにならないですよ。そこでインテリ派な妖精のホミカちゃんが助言なのです☆ 血統的には精霊に近いと言いますか、霊的なものを感じやすかったりしますよ。実は教えていないだけで意外とイロイロ分かっちゃったりしてます☆」
「あぅっ、うぅ……。おにいちゃんっ!」
よしよし。今度はミーヌを撫でてやる。
「あらあら。困ったですね。町には明かりがありましたが、ダンジョンには無いですから。夜は暗くて大変かもしれませんねえ」
「はぅぅっ!」
オウレンがミーヌへ追撃をしかけてきやがった。この確信犯め。よしよし、とミーヌを撫で直してやる。
「ああぁぁ……。おにいちゃんにぎゅっとしてもらわないと、寝られないかも……」
当分のあいだ、夜は寝苦しくなりそうだなと思った。
◇◇◇
翌朝の早朝。
早く起きてしまい暇を持て余したのか、虹色の羽で想像力が刺激されたオウレンがまた何か作り始めた。俺も仕方なく起きて日記を書くことになった。これは朝食前のひとコマである。なお虹色の羽は結局使わなかったらしい。
◇◇◇
オウレンの融合にっきver.2
◇◇◇
①『アホ毛バーガー』
材料:『無線型マウス』+『クサいニンニク』+『かちかちのパン』
効果:食べた相手にアホ毛のアンテナを生えさせて、脳内の情報を乱す。敵を混乱状態にする。
オウレン「アンテナが外部情報を種類も問わずに集めさせて、大量の情報で頭を混乱させてしまいます」
ホミカ「いっただきまーす♪ あむあむ……。のうぉわぁー! ものしり屋さんになってきちゃいます!」
オウレン「妖精は楽観的な性格で、普段は必要以上の情報を取り入れないですから。ホミカちゃんには効果が薄いのかもしれませんね」
ホミカ「( ゜Д゜) フォぉぉ――ッッ! みなぎってキマしたーッッ!」
俺「その顔は止めろ。怖ぇよ」
ホミカ「おやや? ダンジョンコアの奥にある宝箱の中身が、いま読み取れそうです☆ むむむぅっっ! はだかの絵の表紙の本が見えました!」
俺「あー。それはたぶん、最初のガチャで出た『えっちな本』だ」
②『もっと評価されるべきまな板』
材料:『古銭』+『さっき拾った木の板』
効果:貴様は、まな板の真の凄さをまだ分かっていない……! 相手へ投げ、あなたのレベルに比例したダメージを与える。
オウレン「えっと、これはどう使うのかしら?」
ホミカ「作った本人も分からないのですか?」
俺「この持ちやすい適度な薄さ……。この鋭角なフォルム……。素晴らしい、投擲の道具に最適だ!」
ミ-ヌ「投擲……。投げるのか。うん、うんっ、強力かもっ!」
イチイ「ミーヌちゃん、どうしてそこまで感じ入っているの?」
◇◇◇
朝食は冷凍うどんを食べた。朝の気だるさを吹き飛ばしてくれるさっぱりとした味わいが素晴らしい。特におあげさんが絶品だった。ああいうインスタント系に入っているおあげさんは、独特の甘さがあって癖になる味だよな。
さて、ダンジョン運営について真剣に考えよう。前回の戦いで学んだことは、人手が少なすぎるという点である。
仲間が欲しい。というわけで、もっとガチャをしよう! モンスターをゲットだぜ!
オウレンの材料集めもかねてランダムガチャを引くことにする。ホミカにやってみるかときいたら、ハズレしかなさそうだから嫌だといわれた。よし、俺が引くか! ガチャってワクワクするよな!
ランダムガチャ。10回+1回サービス分だ。さあ、来い!
ブロンズカード、ブロンズカード、ゴールドカード! ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、ブロンズカード、シルバーカード! シルバーカード!
ノーマル
すべてを越えしモノ、ニンニク
全ての存在を過去にしたニンニクである。
ノーマル
超・特盛りカレー ※模型
高さ30センチのご飯がそびえ立つ。見てるだけでお腹がいっぱい。
スーパーレア
こんにゃくゼリーの極意。
10ポイントで15個入っているのをお届けします。魔王様セレクション版は20ポイントで12個入りです。
ノーマル
すべてを越えたモノ、キンニク
ニンニクという存在すら超えたもの。それはキンニクである。 Byマッスル神
ノーマル
伝説の健康サンダル
今でも形を残しているトゲトゲのついたサンダル。
ノーマル
ゆでたまご
なんかデカい。なんの卵か分からないから食べたくないかも。
ノーマル
貝の化石
シジミみたいな貝が入っている化石。
ノーマル
小さな花の化石
ちっちゃい花が入っている。かわいい化石。
ノーマル
血塗れたラブレター。
狂気の愛がつづられており読むと発狂するらしい。光に透かして読むと、クンカクンカとか書いてあった。
レア
奴隷の首輪・上級。
お互いに契約をひとつずつ指名する代わりに、強制的に隷属をしいる首輪。
レア
奴隷の首輪・上級。(2個目です)
お互いに契約をひとつずつ指名する代わりに、強制的に隷属をしいる首輪。
なんでピンポイントに『こんにゃくゼリー』が権利になっているの!? つーか、魔王様セレクションってなに!? 魔王様、こんにゃくゼリーが好きなの!? これ、なんでスーパーレアなんだよ! 金のカードだから喜んじゃねーか! 魔王様が独断でレア度を決めてるの!?
「おにいちゃん、それ……!」
「ん? 奴隷の首輪だな」
どうするかなこっちは。役に立つときが来るのかすら疑問である。しかも2個ときたものだ。
たまにあるよな~。確率論から考えると二回連続で同じ物は出ないはずなのに、なんか出てしまうガチャの不思議法則。
ミーヌとイチイがこしょこしょと何か話している。
「あのねっ、ご主人さま! いらないならイチイにして!」
イチイ。おまえは今、なんて言ったんだ。
「おにいちゃん。わ、わたしもっ!」
「いや、マジで待て! 言っている意味が分かんない!?」
2人の話を聞くと、奴隷の首輪・上級はセイントリングが元に作られたものらしい。
このセイントリングは、お互いの命の一部を交換してリンクさせるアイテムらしい。これは本来は愛し合った者同士がやる秘伝であり、その流れを模倣して汎用性を高めたのが奴隷の首輪らしい。奴隷の首輪・上級は、上下関係が決まる契約内容があるだけでほぼ中身はセイントリングと同じらしい。だから、命を少しずつ交換ができるとのこと。
えっ。命ってヤバそうな響きなんだけど大丈夫なのか? マンガでよく見る、魂の共有 的な何かを薦められるなんてファンタジーっぽいけど実際に強要されたらマジで怖いんだけど。もちろん、言いたいことは分かる。要するに、お互いに移植し合って共有するってことだろ。でも、単位が命だからめっちゃ怖い。これって、もしかして呪いの道具だったりする? 俺、幸運が低いしマジでその説が否定できない。すごく捨てたいんだけど。
ああ、でも俺も魔力で眷属化してるから、それの凄いバージョンなのか? なんか魔力を送ったあとは気が抜ける感じがするし。それのお互いバージョンって考えれば受け入れられそうな気がしてきた。まあ、したくないけどな。
「おにいちゃん。あのね、戦いでも役に立てるようになるんだよ。えっと、命を交換した人同士は、お互いのステータス異常とか、生きているかとか分かるから」
俺の脳髄に稲妻が走った。まさか、こいつは……!
「つまりアレなのか。マンガの『なに、○○の霊圧が消えた!?』みたいなカッコイイことができるのか!!」
「れ、レイアツ? よくわからないけど、そういう感じかも?」
ひゃっほう! ヨッシャ、それなら協力してやるぞ!
というわけで、2人につけることになった。
「奴隷の首輪・上級。発動!」
俺達はお互いに首輪を通して魂がリンクされた。
イチイとミーヌの生きている鼓動を感じられた。繋がった絆。繋がった距離感。離れていても手を繋いでいるような不思議なぬくもりを体の内側で感じられた。
◇◇◇
昼飯はチキンライスを食べた。ケチャップの酸味と旨みの絶妙なバランスを絡めたお米に、タマネギのほのかな甘みが見事にマッチしている大変に美味なご飯である。口の中に放り込めば、鶏肉の出汁が米のひと粒ずつに染みていていくらでも食べれてしまう。満足な昼飯だった。
「食ったあと唐突に思い出した。ミーヌは眷属化してなかったな」
「え? 首輪は眷属じゃないの?」
違います。というわけで、ミーヌに魔力を送って眷属化しよう。戦力の補強である。
俺はミーヌに手をかざした。すっと熱と共に力が抜けていく感覚がする。熱を持った魔力がミーヌの体の中に注入されていく。
お互いの魔力が送られ合い、体が内側から書き代わって行く感覚がした。
血液が喉元まで上がっていく感覚を根性で押し潰す。
「ふぅ。今回は安全だったな……!」
さすがに三度目になると勝手が分かってくる。オウレンのように悪のりでもされない限りは安全だろうし、ミーヌの良い子加減に関しては信用しているので大丈夫だろう。
「体があったかい。これがお兄ちゃんの力なんだね」
「ああ。これで俺たちは繋がった。ダンジョンの仲間だ」
俺の言葉を聞いたミーヌが少しだけ頬をほころばせてはにかんだ。
「仲間……。繋がり……。嬉しいかも」
家族という共同体の繋がり縛られていたミーヌ。
そんな彼女だからこそ、こんな言葉で嬉しくなれるのかもしれない。
「ありがとう、お兄ちゃん」
もじもじとした顔をあげて、すくっと背伸びをしたミーヌ。
俺の頬に柔らかな唇の触感が当たる。
「ゴハォああァァ!?」
久しぶりに吐血する俺。今日は元気よく耳からもブシャー!ってなって、森のグリーンな草原が俺の周りだけレッドアラートに染めた。
「えっ、お兄ちゃん!? だいじょうぶっ!?」
「俺の女嫌いを忘れて、いや、お前には言って無かったか。つーか、誰の指示だ?」
「オウレンさんが、終わったらキスしたって言ってたから。わたしも……」
キスしたらどうなったかまでは言わなかったらしい。確信犯だ。
泣きそうに目を赤くして、ひくりと息を飲んでいるミーヌ。
「だいじょうぶだ、ちょっと驚いただけだ」
俺はミーヌを抱き寄せる。自分からやる分には意識が強く持てるから構わない。だが、吐きすぎて意識が白みがかってる。
気を強く持て、俺! ここで倒れたら一大事になるぞ!
「ほんとうに?」
胸元で見上げてくるミーヌ。不安に揺れたか細い声が問いてきた。
「本当だ」
「痛くないの?」
気分的に聖騎士のときよりもダメージを受けた気がした。
「い、痛くなかったぞ」
「うん。本当は唇の予定だったけど、恥ずかしくなっちゃった……」
やめてくれ。マジで死ぬ。
ぽんぽんと頭を撫でてミーヌと離れ、スマホで固有スキルを確認した。
キジュミーヌ・マーズキ
lv、6
体力(HP)42
魔力(MP)38
打撃攻撃31
打撃防御21
魔法攻撃25
魔法防御26
素早さ27
幸運21
固有スキル
七宝染銃
込める魔力の波長によってダメージや効果が変化する。
スキル
狙い撃ち
離れている距離に応じた命中減少、ダメージ減少を抑える。
援護射撃
あなたの攻撃射程内にいる敵が、あなたの味方を攻撃しようとしたとき一定確率で発動する。敵へ先制攻撃をして割り込むときがある。
悪い子の約束
援護射撃の発動確率が上昇して、味方を守りやすくなる。
結魂の交わり
結魂した人物の状態がわかる。結魂した人物が同じ戦闘に参加しているなら、あなたの全てのステータスが少し上昇する。
まずスキルがめっちゃ増えていて驚いた。
ひとつずつ見ていく。固有スキルは、これだけ見るとどう使うのか分からないな。実践でのお楽しみということか。援護射撃という新しいスキルは、聖騎士との戦いが鍵になって覚えたらしい。悪い子の約束は、お祭りのことだろうか。結魂の交わり は奴隷の首輪・上級の効果のようだ。
ダンジョンマスターの勘がピンときた。冒険者が侵入してきたようだ。




