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種なる正義が咲かせるもの  作者: 記野 真佳(きの まよい)
藪(ヤブ)から棒にスタイリッシュダンジョン生活
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プロローグ

アクセスしてくださり、ありがとうございます。


 この世は理不尽により縛られている。

 あらゆるものが偽善に染められている。


 例えばそう――。


 日常の歴史。共同体グループでの閉鎖的な異常世界。

 家族や同級生と言うえにしを利用した善意の鎖。虐待で塗り固める弱者への凌辱。

 人間性を見ず、その繋がりには絆があるはずという美意識により、全ての悪事が理想を根拠に正当化される。

 他者を酷遇する優越感に、加害者の意識は容易に酪酊し闇へ堕ちていく。

 外からは博愛の楽園に見えても、内では暴君による地獄絵図であった。



 例えばそう――。


 優雅な歴史。王宮での排外的な愛憎世界。

 善意と言う縁に加工した渇望。建前で塗り固められた弱者への圧制。

 貴族の姦計によって己の欲望は闇色に粘りついた民意へと化ける。その日の気分次第で無関係な幾多もの人生が、悪意の波に飲み尽くされていく。

 見た目の煌びやかさとは裏腹に、それは悪魔の楽園であった。



 例えばそう――。


 正義の歴史。神域での排他的な断罪世界。

 公正と言う縁に正当化した狂信。刷り込まれた正義により塗り固められた識者への糺弾。

 正しさを心の拠りどころにし、信心を極めた暴徒達。次第に己は正義の人間であると疑わなくなり、同志以外を糾弾し続ける機械と化す。

 思考放棄していること気付けないがゆえに、本当の正しさは永遠に気付けなくなる。

 それは魂の束縛である。疑わないがゆえに正しいと思い込んだ精神世界に住み続ける。

 縛られていることにすら気付かず、何も成せず静かに死んでいく。



 ゆえに、人間は生の開始から、生の終焉まで偽善の縁に苦しめられている。


 人間とは、一人では生きていけないとうたいながら、弱者を家畜として束縛し、必要になれば共同体の他人ナカマの魂を喰らって生存し続ける悪魔イキモノだったのかもしれない。


 他人を喰らうのは、飾り彩る自己愛を充たすため。

 他人を喰らうのは、欲を形作る富を充たすため。

 他人を喰らうのは、空虚な誇りを充たすため。


 自分はいったい誰のために生きていたのだろう。

 自分はいったい誰の正しさを信じていたのだろう。

 自分はいったい誰なのだろう。


 分からない。分からないからこそ、縁を断ち切って独りで生きていくことを決意した。

 誰かに喰らわれるくらいなら孤独でいい。

 誰かを喰らうくらいなら孤独でいい。

 その結果、悪として誅じられようが、構わない。

 孤高こそが真の正義である。そう、思っていたはず、だった……





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