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§第六話§戦いの多い日

屋上を蹂躙じゅうりんした紅き炎は水を蒸発させ終えると一箇所に集まっていった。そしてその集まっていった場所に立っていたのは・・・千秋だった。千秋は冬至を睨みつけながら進むに歩み寄り手を差し伸べる。

「進、大丈夫?怪我ない?」

進は手に浮かんで立ち上がると「大丈夫」と笑いかけた。千秋はそれを見て安心したように微笑むと左手で進を押しやり冬至から引き離した。

「冬至っ!!よくも私の仲間をこんな目に合わせてくれたわね、ここでもうこんな事しないように実力の差と次やったらどうなるか・・・教えてあげるわっ!!」

「それは怖い怖い、でも千秋さん・・・目上の人への話し方がなってないですね。しっかりと身体に刻み込んであげましょう」

会話が終わると同時に冬至は二対の水の刀を鞭のようにしならせ左右から攻撃する、だが千秋は握り拳ほどの大きさの火の玉を回りに十個ほど創り出し冬至の攻撃を無視して冬至に放った。と同時に空高く飛び上がり水の刀の攻撃を避ける、だが水の刀は互いの刀身を千秋の真下で混じり合わせ巨大な水の柱となって千秋襲う、その時には先ほど放った十個の火の玉は冬至の眼前にまで迫っていた。冬至は持っていた刀の柄を一つ地面に置き、空いた手を火の玉に向けて手の平に魔力を込める。すると冬至の魔力に従って手の平に水の結界が現れる、が八発の火の玉の急襲を受けた時点で水の結界は跡形も無く蒸発し残った二発の火の玉が冬至に炸裂する、思いのほか魔力の込められていない火の玉は大したダメージを冬至に与えないまま消えたが爆発によって生まれた煙により冬至は千秋を見失っていた、操っている残った一本の水の刀の先を追い詰めた姿の見えない千秋の下へ急いで延ばした、もう片方の水の刀コントロールが途切れてしまったせいで一本分の威力を持たない水の柱だったがどんなに先を延ばしても千秋を捕らえられないのに一種の不安を冬至が抱いた時だった。先ほどの攻撃で目隠しとなった火の玉の煙が霧散していくと同時に左手の手の平に真っ赤な炎を放出させ空中を加速しながら近づいてくる千秋の姿を冬至は捕らえた、急いで置いた水の刀を拾うと同時にもう片方の水の刀の水の束縛をいったん解除しもう一度再構成して短い高密の水の刀身へと変える、そして千秋は勢い良く炎を纏わせた足で蹴り飛ばそうとする、炎と水か互いにぶつかり合い拮抗きっこうする。

だがその時冬至は拾った刀に水を集めると千秋に振りかぶる、がその時一瞬冬至の視線が受け止めている方の刀に移る、刀身はボコボコと音をたてて沸騰していた。冬至がまずいと思った瞬間受け止めていた刀身は勢い良く蒸発し留め金を失った炎の足は冬至の鳩尾に食い込み、サッカーボールを蹴るかのごとく冬至を弾き飛ばす。弾き飛んだ冬至は危険防止のための金網にあたり・・・金網が壊れて屋上から地面に落下する。

「なっ!!と、届けぇ・・・。」

急いで指先に引っ掛かるように持っていた水の刀を鞭のようにして金網に引っ掛けるが・・・連鎖的に金網は壊れていき多少勢いを無くさせつつも冬至は地面に落ちていった。驚いた千秋は金網を掴んで落とさないようにするが所詮は女子の力、男子の体重と一緒に落ちていった金網の重さに耐えられるはずも無く一緒に落ちていきそうになる。そこに成二が先ほどの余った二人の手下のような者をボコボコにし終わって周りを見渡し二人の現状に気付き風の魔法で浮かせようとする、だが殆ど落ちている状態の千秋と落ちている冬至、そして一緒に落ちている金網を一気に浮き上がれさせるための魔力を溜めようとするには明らかに時間が足りなかった。こうしているうちにも冬至は地面に落ちていく、そして冬至と地面との距離が二メートルほどとなったときだった。澄み渡った高原の風を思わせる風が成二の背後から吹き、その風は千秋の横を通って冬至まで届く、すると冬至は地面すれすれのところで静止し・・・上空へと跳ね上がった。跳ね上がったのは冬至だけではなく金網と千秋もだった、が冬至は空中で大気に揉まれるように回転していてこの行動には故意があるのは一目瞭然だった。

呆然と見ている成二に進が近くに来て耳打ちする。

「後三秒後君にこの風のコントロール移すから合わせて・・・三、二、一、零ッ!!」

急な事で慌てた成二だったが得意の風の魔法ということもあり、難無くコントロールを受け取ることが出来た。とそこでやっと周りを見る余裕が出来た千秋は成二を見て笑いながら

「ナイス成二、おかげで助かったよ。後でアイス奢ったげる」

と感謝を述べていた。当の本人は「やったのは俺じゃなくて進なんだけど・・・本当のこと言ったら進に怒られるだろうな」と思い苦笑いを浮かべていた。

「凄いね、一瞬でこの人数を浮かべる魔法を使うなんて」

と白々しいまでに進が成二を見ながら言ったので成二は少し進との関係をよく考えようと心に決めた。

そして成二はゆっくりと二人と金網を降ろし面倒になりそうだったので進の腕を掴むと屋上から逃げるように出て行った、するとゆっくりと冬至が口を開いた。

「今回は僕の負けのようですね、でも何度でも挑戦させてもらうよ」

そう言うと冬至は二人の気絶した部下を放置して屋上から出て行った。それを見送った千秋は短く溜息をつき携帯の時計を見て急いで教室に戻っていった。

そして午後の授業も無事に終わり放課後となった学校の個人闘技場に進は来ていた、用事はもちろん成二の訓練なのだが朝約束したとおり今日は武器を使った訓練をするらしいので学校で借りた練習用の模擬剣を進は持っていた。剣の素振りを軽くして握り方を確かめながら待っていると十分ほどして長い布を巻いた何かを持った成二がやってきた。

「悪い、少し準備に手間取っちまってな・・・ってお前の武器って模擬剣か!?」

「そうだけど・・・成二くんの武器ってやっぱり魔道具なんだよね?魔力の出力の最大値どの位?」

「12000くらいだぜ、凄いだろ?」

そう言って布を取ると出てきたのは蒼い槍だった。蒼穹を思わせるようなその槍の色に思わず見惚れていた進だったが目的を思い出して模擬剣を構える。

「模擬剣って確か練習用で大量生産されてるやつだから魔力の出力の最大値って700ぐらいじゃなかったっけ?」

「そのくらいだね・・・。」

ここで先ほどから話に出ている『魔道具』『魔力の出力の最大値』について説明させてしようと思う、まずは魔道具、これは魔法の道具のことで魔科学や錬金術と言われる魔法によって産まれた魔法を付加させ易くした物や付加させた物の事を指す、次に魔力の出力の最大値だがこれは魔道具の武器に込められる魔力の量の最大値とも言う、魔道具の武器は込められた魔力を破壊的な魔力へと変化させて放出するため込められる魔力が多いほど戦闘を有利に進められる事となる。魔道具は魔科学や錬金術によって作られるのは先ほど説明したが現在の人間が作ることのできる魔道具の魔力の出力の最大値は約4000と言われている。ではそれ以上の魔道具が何故あるのか?それは遺跡から発掘されたからである、古代の魔科学力や錬金術は現代よりもかなり秀でていた事がこのことから分かる、少し話が逸れてしまったがつまり魔力の出力の最大値が高いものほど希少な物なの物で価値のあるものなのだ。なのでここで一つの疑問が生まれる、それは何故天人ってこと以外普通の中学二年生である成二がそんな武器を持っているかということだ。

「その武器って・・・成二くんなんだよね?どうやって手に入れたの?」

「それは・・・これが俺の家の家宝みたいなもんだからだな」

「家宝?」

「あぁ、俺の家って一応西園寺家の分家でさ・・・俺の親父は権力争いって言うのには興味が無くて手切れ金っていうかそんな感じでこの魔道具を手に入れたんだ。んでそれが家宝となって今俺の手元にあるわけ」

「西園寺の分家・・・。」

(西園寺の分家って、みぃちゃんの家そうだったような・・・。)

「あんまり広めんなよ?俺はあんまりこの事好きじゃねぇんだ」

「大丈夫、僕は広めたりしないよ」

「そっか・・・じゃあ訓練始めようぜ?」

「うん」

そして二人は向かい合い睨み合った、刻々と静止したままの状態が続き、静寂を破って先に動いたのは成二だった。槍に魔力を込めつつ槍を突き出す、そして進が横に飛んで逃げた刹那突き出された槍の先端から小さな竜巻が発生し削岩機のように地面を抉る、が槍の威力は止まることなく後方にあった直径五メートルほどの大岩を粉々に砕いた。

「ちょ、そんなのが当たったら僕死ぬって・・・。」

「どうせ結界で防御するんだろ?」

成二は振り向き様に槍を横に薙いで巨大な鎌風を作り出す。進は模擬剣に魔力を込め振るう、刀身から魔力の塊が三日月型の斬撃となって放たれ巨大な鎌風に当たる、が巨大な鎌風は勢いを衰えさせる事無く斬撃を消し去りなおも迫ってくる、進はその様子に動じることなく次々と斬撃を放ち合計七発目で相殺させる事に成功する。

「はぁ〜、最大出力で放って七発でやっと相殺する事が出来るなんて・・・これじゃ武器無しで戦った方がマシだよ・・・。」

たまらず進は愚痴を漏らすが成二は意に介する事無く攻撃を続ける、突いて、払って、薙いで、回す、一つ一つの動きをする度に行動が攻撃となり襲い掛かり。進は結界で防御したり、多くの斬撃をわざわざ放って相殺する。

「なぁ進、わざわざ武器使わなくてもいいぜ?普通に魔法使った方がお前は強いだろ?」

「それは・・・そうなんだけど・・・。」

「このままじゃ勝負にならないだろ?」

「・・・わかった」

進は持っていた模擬剣を投げ捨て向かい合う、あまり構えているように見えない自然体が進にとっての構え、一寸の隙も見せないように身体に魔力が満ち溢れ出した魔力が部屋全体を覆う。

(やばい・・・飲まれてる)

成二は苦虫の噛み潰したような顔になり体の重心を低くして身体を落として構える。刹那進が視線を上に移す、すると成二の真上から十数個の火の玉が現れ降り注ぐ。

(視線だけで、目だけで魔法を生み出すなんて・・・進の本気っていったいどの位なんだ!?)

成二は一瞬戸惑ったものの槍を振るって一つ残らず火の玉を消し飛ばす、と同時に手の平から風弾を放つ、すると進の足元の影が動き出しスッと手を伸ばして風弾を掴み、握りつぶす。

(闇の魔法か・・・珍しいな)

成二は影ごと進を吹き飛ばそうと最初のように槍を突き出す、やはり小さな竜巻が生まれ削岩機のように地面を粉々に抉っていく、進は自分の影の上に手を置くと魔力を込める、すると進の手が手首まで影の中に入り込み影の表面が水面の様に波紋を作り出し影から巨大な影の手が現れる、その巨大な影の手は迫ってくる小さな竜巻に向かって手を開き、そして受け止めた。激しい衝撃のために辺りは砂煙に覆われる、その時砂煙に人影が映し出される人影は成二だった。成二は勢い良く砂煙を飛び出し進の上に跳び上がると勢い良く槍を振り下ろす、微弱に魔力が宿っているようだったが先ほどのような力強さは無かった。

「魔力が尽きたみたいだね・・・終わりだよ」

そう言って進は手に魔力を集める、左手には風の魔力を右手には氷の魔力をそれぞれ集め・・・一気に解き放つ。すると成二に向かって竜巻が巻き起こる、しかもただの竜巻ではなかった。それは小さな氷の粒がその身を凶器として襲う氷の竜巻だった。直撃を食らった成二は槍を盾にしてやり過ごそうとしたが四方八方から襲い掛かる氷の粒にその身を切り裂かれていく。そして氷の竜巻がやむと身体に多くの裂傷を作った成二が地面に膝をついていた。

「耐えたんだ、成長したね」

「あんまり・・・うれしく・・・ないな」

そして気を失って倒れそうになった成二を進は支え、進は目を閉じて手に魔力を集中させる。白金の魔力が手を通して成二の身体を包み込んでいく、すると傷だらけ身体から傷がスッと消えていく・・・そして五分後完全に回復した成二を進は満足そうに見てから個人闘技場から出て寮に帰って行った。

ついでに成二が目を覚ましたのは日を跨いでからの事だった。

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