§第一話§遭遇or再開
森を走って走って走って・・・たどり着いた先は未知の世界だった。
草花なんて数えるほどしかない固いコンクリートと灰色のアスファルトが辺りを包み込む世界・・・その名も街
少年は未知の世界こと街を歩いていた、途中で買ったクレープを美味そうに食べながら学校の場所を誰かに聞こうと歩いていると途中で人だかりを見つけた、周りの人間の声を聞いてみると何やら魔法を使った喧嘩らしい、興味本位で中央辺りまで来ると五人の男一人の少年が互いににらみ合っている。
「おいガキっ!!今俺らのことなんつったっ!!」
五人組一人が少年に近寄りながら言った。
「聞こえなかったのか?準人は準人らしく媚び売っとけばいいって言ったんだよ」
少年は呆れたように言うと五人組は怒りをあらわにして何の前触れもなく魔法を使った。五人とも得意な魔法は同じらしく指先から電撃を発生させ少年に向かって放った。少年は少し笑みを浮かべ軽く足踏みをする、すると足元から烈風が吹き少年の体重を軽くする、少年は自然な動きで舞うように電撃を避けると五人組の眼前にまで突き進む、そこまで見て進は少年の避けた電撃が進んでいく方向を見た、そこにはたくさんの野次馬が・・・。
少年は手の平に大気を圧縮した風の塊を作り出し五人の鳩尾に放つ、五人はそれぞれ別の方向へ吹き飛び地面に叩きつけられる、とその瞬間少年の後方で爆発が起きた。振り返ると自分と同じぐらいの少年が立っているのが見えた、そう進だった。
「作りの甘い電撃で助かった・・・。」
進は周りの安全を確認すると少年の方に歩いていった。
「君・・・名前は?」
少年は怪訝な顔をして見せた
「何でお前に言う必要がある?」
その言葉を聞くとそれもそうだと納得したような顔を見せた進だったがいきなり進は少年の手を掴んだ。
「名前は教えなくていいよ、でも彼らには謝ってもらうよ?」
そう言って進は後方にいる先ほど電撃を浴びそうになった野次馬を指差した。
「はぁ?何で俺が・・・。」
「君はここで戦った、ってことはそれなりに理由があったのかもしれない、でもそれに周りを巻き込んじゃいけない。たとえそれが勝手に集まった人たちでも自分の行動で危険に晒したならそれなりの代償を払ってもらわないといけないからね」
その言葉を聞いて少年は笑う、
「ばっかじゃねぇ〜の?こんな一般人いくら死んでも代わりなんていくらでもいるだろ?」
この言葉には温厚な進を頭に来た。
「死んでもいくらでも代わりがいるだって?ふざけるなっ!!そんな考え根本から変えさせてやる」
そう言って進は身構える
「やるんなら・・・後悔すんなよ?」
少年はさっきと同じように足踏みをする、身体が軽くなったのを感じ攻撃しようとしたところで進が手を叩く音が聞こえた、すると身体が元の重さに戻りその場に立ち止まる。
「ちっ、反魔法で魔法を打ち消しやがったのか・・・。」
少年が次に行動しようとした時には進は地面を叩いていた、すると野次馬と戦っている二人を分けるように水色の壁が現れた。
「これで周りへの被害対策も完璧だ」
「お前・・・なめてんのか?」
怒りをあらわにする少年に進は手を振って否定する。がそれを無視するように少年の両手から風弾の嵐が蹂躙する。進は手の平をふぅ〜と息を吹きかける、すると手の平を通過した息が炎に変わった。
風弾が炎の中を通過すると風弾は消えた。
「なっ!!ただの炎に俺の風弾が負けただと!?」
「負けたんじゃないよ、上昇気流に返っただけさ」
そして呆気に取られ散る少年に向かって進は指先をピンと鳴らす、音が反響し合い壁の中は音波が飛び交う。少年は平衡感覚を失ったのか耳を押さえながら方膝をついた。
「まだ・・・やるかい?」
そう言うと少年は苦々しい顔になる。
「降参と見ていいね?・・・じゃあ謝ってもらおうか」
やはりムカツクらしく少年は立ち上がって殴ろうとしたところで転んだ、足を見てみると靴の裏が地面と氷でくっ付いていた。
「ちっ、分かったよ・・・謝るから外せ」
進は指を鳴らして氷を溶かした、少年は進を一度睨むと野次馬の下に向かっていって「すまなかった」と小さく言って帰って来た。
「おい、お前名前は?」
進は一瞬呆気に取られたが笑いながら答える。
「天野進、覚えてくれてたら嬉しいかな」
「あぁ、しっかりと覚えておくぜ・・・それと戦いの前に俺の名前がどうとか聞いていたな、俺の名前は鳳成二別に覚えてなくても構わない、次会った時嫌でも覚えさせるからな」
そう捨て台詞を吐いて何処かへ走っていった。
「さてと・・・学校探さないと・・・あっ!!ここで聞けばいっか」
ということで進は野次馬の一人に
「ここらへんに武陽中学校っていう学校があるって聞いたんですけど・・・知ってませんか?」
するとその人は丁寧に簡単な地図まで書いて教えてくれた。
その人に礼を言う事を忘れずに進は地図通り進んでいると巨大な門までたどり着いた。門には武陽と大きく書いてあり間違いないと分かった。
生唾を飲み込み一歩一歩中に進んでいくと外来用と書かれたドアを見つけた。進は中に入ると窓口に行き中にいた人に書類を渡した。
書類を見た中の人は丁寧に職員室まで案内し頑張ってと言っていた。どんな未知の世界が広がっているんだろうと不安と期待の入り乱れた気分で職員室の扉を開けると中には数人の大人しかいなかった、きっとあの大人が教師と言うものだろう。すると一人がこちらの存在に気付き近づいてきた。
「君だね転校してくる子っていうのは、歳は・・・十四だね、誕生日は五月だから・・・あっ!!二年生だね、って資料があったか・・・ん?うわぁ〜あの鳳くんのいるC組か・・・、えぇ〜と天野くん忠告しておこう、同じ組の鳳くんにはあまり関わらない様に努力しなさい、後々面倒な事になりますから、おっと話が過ぎたね、じゃあ教室へ行こうか、そうそう僕の名前は北條時久っていうから覚えておいてね」
北條といういかにも新米っといった若々しさを感じさせる先生は一通り話し終えると進を連れてC組へ向かった。
コンコン、と音をたてて
「僕です北條です転校してきた子を連れてきました。」
するとガラガラという音とともにいかにもやる気ありません、といった感じの男が出てきた。
「あ〜・・・入って」
淡白な言葉とともに進は北條に一礼をしてC組に入っていた。と同時に
「あっ!!」
と言う聞いた事あるような声が進の耳に入ってきた。目を向けてみると少し前にあった鳳成二という少年に似ていた。
「他人の空似って凄いや、さっき会った鳳成二って人に似てるよ」
アハハと笑っている進と声を上げた少年は何故かふるふると拳を握っている。
「お前・・・本人だっ!!ほ・ん・に・ん!!」
声を荒げている成二を前に進はクスクスと声を頑張って殺そうと口を押さえて笑っていた。
「なんだ?お前等知り合いか?」
「一応そういうことになりますかね」
それからは普通の転校生と同じように自己紹介が始まった、まず自分の名前を黒板に書き、皆の方を向き
「えぇっと、天野進です。これから二年間一緒に勉強させてもらうのでよろしくおねがいします」
と自己紹介をした。
それから質問タイムとなった。
「前の学校って何処?何で武陽中学校に?」
「前の学校ですか・・・秘密です、それとここに来たのは殆ど偶然のようなものです」
「好きな女性のタイプは?」
「一緒にいて楽しい方なら誰でも」
「得意な魔法は?」
「魔法自体あまり得意じゃないので、今のところ無しですね」
その質問の答えに成二が進を思い切り睨みつけたのは言うまでもない
「休日はいつも何をしていますか?」
「僕の前住んでいたところは森の奥深く似合ったのでバードウォッチングや昼寝が殆どでした。」
「よし・・・これくらいで勘弁してやれ」
担任である先生が気だるそうに止める
「先生、そういえば貴方の名前は?」
「言ってなかったな、大石智之だ、よろしく」
簡単な握手を交わした後大石が席を決めようとして先ほどのやり取りで鳳の隣に決めた。
「てめぇには何かと縁があるみたいだな」
成二が睨みながら言うと
「この縁は大切にしないとね」
と真顔で答えた。とその時成二の耳に風を通じて声が入る。
「成二なんか因縁あるみたいじゃねぇか、しめるか?」
同じような声が次々と入ってくる、その全てに成二は同じように返した。
「お前等じゃ相手になんねぇよ」
返したところで成二は進がこちらに笑顔を向けている事に気がついた。
「な、なんだ?」
「君って・・・意外と優しいね。皆を護る為に僕に近づかないように言うなんて、しかし転校初日でみんなの敵意を買うなんてなぁ」
成二はその言葉に驚愕した
「何で会話がわかった・・・。」
「簡単だよ、風の通信を掠め取って聞いたのさ」
この時成二は進が少し怖く感じたがすぐに冷静になった。
そして授業が始まった。




