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§第八話§執行部

やっとの思いで個人闘技場にたどり着くと館内から戦闘音が聞こえた、急いで中に入ると目の前から火の玉が飛んできた。突然のことで驚いたが上体を無理矢理ひねって紙一重で避ける、数センチ横を火の玉が通り過ぎ髪の毛が少し焦げる、と同時に子の魔法を放ったであろう少女から怒号が飛ぶ

「何避けてんの!!時間に遅れた罰なんだからしっかり受けな・・さ・・・い・・・って進だったの!?」

放った本人である千秋は口をあんぐり開けてポカンとしている、どうやら進と誰かさんを間違えたらしい、そして間隔をあけずに

「オイーッス!!」

と挨拶をしながら成二が入ってくる、その光景を見ていた東はやれやれと肩をすくめて首を横に振っていた。先ほど以上の危険を感じた進はその場から退避し東の横に立つ、状況が理解できていない成二は戸惑いを見せていたが目の前に強烈な魔力の気配を感じで身構える。そこにはいつもの三割増の暴走を見せる千秋がいた、その手には炎が灯っておりまるで今の心情を表すように手の平で暴れ回っていた。

「この・・・。」

「ん?」

千秋の小さい呟きを聞き取る事が出来ず聞き返す

「この・・・ばかぁっ!!」

そして千秋の絶叫にも似た叫び声が辺りに響く、と同時に手の平で暴れ狂っていた炎が直径五メートルの炎の塊に肥大化し成二に襲い掛かった。いきなりの攻撃に慌てた成二だったが二つの風の刃を放ち相殺しようとするが・・・。

ボォオという音とともに風の刃は飲み込まれ逆に炎の大きさと勢いが強まった。

(やばいな、半端な攻撃は逆効果だ)

本格的に打つ手無しとなり防御の姿勢をとる成二、何故か我を失って暴走している千秋にはそれが分からず攻撃を続行する。だがその時成二の前に厚い氷の壁が立ちふさがった、

「そろそろ正気に戻れ千秋」

そう言って東は二人の間に割って入った、すると先ほどまで暴れ狂っていた炎が嘘のように治まっていく、進はその様子を見て東がとても凄い人に見えた。

「ご、ごめん・・・。」

それはもう芋虫のように小さくなって千秋は謝った、成二は殆ど呆れ顔になりながらも「もういい」と頭を掻きながら言った。

「何はともあれ、さっきはさっき今は今だ。早速訓練を始めるぞ」

成二はそう言うと指の関節を鳴らしながら部屋に中央に向かった、そして言葉を交わす事無く東も中央に向かって行った。そして一呼吸置き二人は向かい合った。

「ねえ千秋さん、あの二人なんか妙に慣れてるんだけど」

進の質問に

「まあいつも訓練はあの二人の手合わせから始まるからそりゃ慣れちゃうよ」

と二人を眺めながら千秋は淡々と答えた。

そして進が目を離しているうちに手合わせは始まった。

先に突っ込んだのは成二だった、向かい合ってから二秒と経っていないのに両手には高密度の空気の塊が作り出されている、展開と攻撃双方の速さが全系統の魔法一の風系の魔法を得意とする成二だからこそ行える最速の一撃といえるだろう。東は氷の刃の生成を半分ほど行ったあたりでいったん生成を中断し生成した氷を握りつぶした、そして粉々になった氷を突っ込んできた成二の顔に投げつける。成二は今の速さを維持したまま突っ込めば氷によってこちらも被害を受けると思い速さを緩め腕で顔を防御した。腕に冷たい物が触れる感触がする、と同時に腕でその感触のもとである氷の粒を一気に振り払う、だが拓けた進路上には東の姿は無かった。

後方左斜め後ろの方向に微弱な魔力の流れを感じる、前々から戦いの中で狩人の如く鋭敏な感覚と天性のバトルセンスを見せていた成二は、進と毎日行う戦闘訓練により鋭敏な感覚をさらに磨き上げ、魔力を使って風を操り周りをる方法を教えられていた。それにより段々と迫ってくるものを後ろ向きのままで感じとれた。約三秒後に成二を襲う攻撃、振り向いてから反撃しては間に合わないだろう。そこまで考えた後の成二の行動は早かった、先ほど使わなかった両手の高密度の空気を地面にぶつけ粉塵を起こす。そしてその場に止まる事無く飛び退き東の攻撃を避ける、最後までどんな攻撃をしてきたかわからなかったがビュオッと横を通り過ぎる音を聞く限りかなり巨大な質量のものと推測できた。だが今はそんな事を気にしない、しかし万が一ということもあり一応忠告をしておく。

「気を付けろよ」

(千秋の近くには進がいるからまあ大丈夫だろう・・・それに時間が無い)

そして成二は自身の周りに風で結界を張ると両手を前に出して結界の外に小さな小さな火花を起こす。その瞬間辺りを轟音と衝撃波が蹂躙すし地面を抉りながら煌々と燃える紅色の炎が結界を張る成二の辺りを通り過ぎる、爆風が収まったところで結界を解く。

「話に聞いてた粉塵を利用した粉塵爆破、こ、ここまで威力あるとは・・・。」

あまりの威力に呆然としていると目の前の煙の中から氷の弾丸が放たれ、成二は身体をひねって避ける。そして煙が晴れるとそこには片膝をついてぼろぼろになった東の姿があった。

「ま、前とは動きが格段に上がったな、背後からの攻撃で決まったと思ったが・・・何で避けれた?」

「俺には有能なコーチがついてんだよ」

そう言って成二は不適に笑いながら進の方向を見た、進は目線を逸らして頭を掻いていた。そして千秋が目元を吊り上げて怒っていた。

「あんたなんて攻撃をこんなところで使ってるの!?進が死んじゃうじゃない!!」

成二は千秋の怒りに

(いやぁ、進は全く心配してなかったし)

と心の中で苦笑しながら思っていた。

そしてどうやら戦闘はこれで終わりらしく二人は一礼して中央から下がりそれぞれの傷の手当てをしながら自らの反省点や良かったところなどを話し合っていた。話し終えると成二は進の所へ満足げな顔で行き自慢げに小さな声で語りかけた。

「どうだ強くなっただろ?」

自信満々に話し掛けた成二の思いとは裏腹に進は溜息混じりに答える。

「最初の相手の反撃の時に片方の風の玉で攻撃を弾き飛ばしたらもっと早く終わってたかな、それに展開が遅いよ・・・しかも人を気絶させるのにあんなに魔力を込めた風の玉はいらないし」

と批判ばかり受けた成二は肩を落として戻っていった。そんな成二を会話の内容を知らない千秋は殆ど無視してパチパチと手を鳴らして視線を注目させた。

「さてと、二人の戦いも終わったし、今度は誰と誰が戦う?私と進は授業で戦った事あるし・・・進と成二が戦ってみる?東はさっきのダメージぬけてないみたいだし」

その言葉を聞いて進はあからさまに嫌な顔をして成二の目はキラリと光った。

「僕は・・・やりた「おぉ!!そんなにやりたいのか進、なら戦おうぜ」」

と成二は大きな声でわざと声を隠すように言い進の腕を引っ張って中央まで連れてきた。

「お手柔らかに頼むぜ・・・進」

そう言ってニヤリと笑う成二を見て進は手をグッと握っていた。

(成二くん・・・きっと僕が本気でやらないって言ったからだろうな)

そしてそうこうしている間に戦闘が開始された・・・のだが、ガッという音とともに開かれた扉から入ってきた人達のせいで戦闘は中断された。その人達は共通して腕に『執行部』と書かれた腕章をつけていた。

「お前たち・・・聖徒戎の・・・。」

成二は憎々しげに言い千秋と東は驚いて目を見開いていた。するとその人達の中でも背の高く体格の良い男子が歩いてきた。

「こんなところで何をしているんだ!!」

男子のいきなりの怒号に驚いた千秋だったが眉をひそめて言い返す。

「見て分かりません?明日のための練習です。」

互いに一歩も引かない睨み合いが続く中、進はなにやら考え込んでおりムーっと唸っていた。と思いきや顔をパッと上げ先ほどから考え込んでいた疑問を体格の良い男子にぶつけた。

「えっと・・・それで貴方達は何者なんですか?」

その質問を合図に全ての腕章をつけた人達の視線が集まった、特に質問をぶつけられた男子の視線は近かった事もあり非常に怖かった。

「ん?見たことない顔だな・・・誰だ?ブラックリストにも載ってないし・・・」

まじまじとさまざまな角度から見られては片っ端から男が名簿をチェックしていき一つのページで止まった。

「なんだ転校生か、なら知らないのもしょうがないな。我々は聖徒戎と呼ばれる組織の執行部と呼ばれる役職を担当している者だ。そして俺が執行部の全てを任せられている三年の宍戸拓真ししどたくまだ。覚えて置いてそんは無いから覚えておくが良い」

凄く偉そうな喋り方する奴だなぁ、と進は思ったがせっかく説明をしてくれているので黙って話を聞いていた。

「そして素行に問題のある奴等を取り締まるというのが執行部の役割りだ。そして君の周りにいる三人はブラックリストにも登録されているほどの問題児共だ。学園の中で数少ない二つ名持ちだというのに聖徒戎には入らない、逆に邪魔ばかりする・・・おっと二つ名って言うのはだな「二つ名については知ってます。丁寧な返答大変ありがたかったです・・・ですけどなんで聖徒戎に入らないといけないんですか?そもそも聖徒戎のやってる事って正しいんですか?僕の知り合いに聖徒戎の人がいますが・・・その人のやった事が僕は良い事だとは到底思えない。でも彼等は違います、いきなり屋上に呼び出して戦わされたりする人や時々暴走する人やあんまり考えてる事がわからない人達ですけど心は優しいと自身を持って言えます。つまり・・・」

一呼吸置いて息を溜めて大きな声で進は拓真に向かって

「貴方達なんかよりもよっぽど彼等の方が信用できるんですよっ!!」

と言い放った。

その言葉に拓真は怒り、左手に電撃の溜め放とうとした。だが不意に巻き起こった突風により背中から倒れてしまう。

「よく言ったぜ進、流石は俺が見込んだ男だな」

成二がそう言って風で浮かびながらスタっと進の隣りに降り立ち

「そうね・・・好き勝手に私たちの事馬鹿にした時はどうしてあげようと思ったけど・・・やっぱり最高ね」

千秋は笑みを浮かべて親指を立てて言うと極大の大きさの火の玉を作り上げ執行部目掛けて投げた。流石に他の魔法使い達との戦闘に慣れている執行部らしく素早く結界を張って対応するが・・・

「あまいよ・・・それは私の炎って事忘れてない?」

炎は結界ごと執行部の連中を地面に沈めていき・・・上半身半分ほど埋まったところで炎は消えた。

「最後の後始末をする俺の事も考えてくれないか?」

その呟きとともに辺りは一面の氷の世界となり、執行部の連中は下半身が氷で埋まってしまうという結果となった。そして千秋は進の隣りへ東は成二の隣りへ行き忌々しげに睨む拓真に向かって成二が最後にこう言い放つ

「どうだ、最高のパーティーだろ?」

そして成二、千秋、東は満足げに出て行った。そして進は少し可哀相な気もしたが一礼して出て行った。

「ブ、ブラックリストに天野進を・・・追加しなければな」

そして朦朧とする意識の中、根性でブラックリストにその名前を書き終えると拓真はそのまま意識を失った。

一方進たち四人は帰り道、進のセリフが良かっただの、私はそんなに暴走しないだの、巻き込んですまないなど色々話し、寮が近づいた辺りで解散となった。

進は自分の部屋に戻ると作り置きしておいたカレーを温めなおして食べ、腹を満たすとすぐに寝てしまった。


とうとう明日は試験の日

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