4 大村純忠の場合
私は島原半島の有馬家に生まれたが幼い頃大村家の養子になった。
それからいろいろあって・・・・今はローマに居る。
これでも一応一国の大名であるから、もちろん替え玉は置いてきた。
この使節団では少年たちの教育係ジョルジェとして同行している。
わしは、国も民も全てを捨ててこの地に来た。
どうしてもこの目で南蛮を見てみたかったからだ。
このままこの地で朽ち果てようとも悔いは無い。
「スミタダ、用意は出来たぞ。ゆくか?」
「うむ、四郎、よくここまでついてきてくれたな。お前はここに残るが良い。主従の関係は切れた、自由に生きろ。」
四郎はただの少年に見えるがもとは三城に住んでいた化け狐だ。
コンスタンチノと名を変えて同行している。
「自由に生きろというか、こんな所までつれてきておいて。ならばわたしもゆく。死ぬときは一緒だ。」
「ははははは・・、好きにするがいい。」
「ジョルジェせんせーーーい!」
そのとき庭園の向こうからミゲルが走ってきた。
「ねえ、大変なんだよ。マンショもジュリアンもマルチノも姿が見えないんだ!みんなでどこか良いところに行ったに違いない!」
他の少年たちはすぐにわしの正体に気づいたがこやつだけは気づいておらぬ。
わしの甥っ子なのにだ・・・。
「ミゲル、みなは何か用事があるのだ、そのうち帰ってくる。」
「もしかしてだけどーーーー、もしかしてだけどーー」
そのとき、四郎が手のひらを上に向けて息を吹いた。
たちまちミゲルはパタンとたおれ、寝息を立ててる。
「寝床につれてゆく。」
「うむ、頼む。」
ミゲルの寝顔はまるで天使のようだ。本当に整った顔立ちをしている。
わがままでおかしなやつだが、なぜかみなに好かれている、不思議なわしの甥だ。
晴信の従兄弟に当たるが、あやつも大のお気に入りだったようだ。
ミゲルよ、お前は生きて帰り、日本のキリシタンを守れ。
私はキリシタンの武士として最後まで戦おう。
さあ、戦だ!