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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
91/134

8-7

 右手で顔の血をぬぐう。

 俺は太った組員の右手をサブマシンガンごと切り落とし、さらに胴体にも一撃を加えていた。

 太った組員はよろけながらも体勢を保とうとしていた。

「俺は、Sだ!」

 刀を頭上から振り下ろし、返す刀で横になぎ払う。そして、切り上げる。刀で三角形を描く感じ。

 狭い部屋に甲高い悲鳴が響く。

 耳障りだ。

 刀を右手一本で持ち、刃が背中につくぐらい振り上げた。


 キャハハハハ、ミタ? シンジラレナイ。

 ナニカンガエテルンダ。オマエ。

 バカジャナイノカ?


 また幻聴。

 そして視界が揺らぐ。

 フラッシュバックも起ころうとしている。

 瞬きを繰り返し、意識をつなぎとめる。


 コイツバカダ。

 エロホンバカリヨンデルンジャナイノ?

 マタアイツガキタッテヨ。

 ミンナダメダッテイッテルヨ。

 ナニカンガエテルンダ!

 ナメテンノカ、コラ? アア? ナクカ? コノ。


 もうやめてくれ。

 どうして、今になってこんなに。

 そうだ。忘れそうになっていた。

 俺を取り巻くこの空気。

 俺はいつもこの中にいた。

 自分ひとりが違う世界にいたようだ。

 以前はそうではなかった。気がついたらこうなっていた。いつから始まったのかわからなかったが、消えたのもいつのことだかわからない。

 本当に自分の知らない間に、そういう空気が出来上がっていたかのようだった。

 何回かの瞬きのあと、視界が晴れてきた。

 銃声がした。

 俺は太った組員に気を取られすぎていた。

 振り向くまもなく、首を縮め、わずかに身を低くした。

 銃を撃ったのは組長だ。

 先の二発の弾丸は外れたらしい。そして三発目が聞こえた。俺の目はその方向を見ていた。

 弾丸の動きがとてもスローモーションに見えた。

 まるでビデオのコマ送りのように。だが、俺の体はそれよりさらに鈍重な動きしか取れなかった。弾丸はまっすぐ俺の右目に向かってきた。

 よけられない!

 俺は何もせず弾丸を見ていた。

 それはとても長いようで非常に短い時間だった。

 弾丸が近づき、大きくなった。右目に直撃と思われた弾丸は、微妙にずれていた……?

 ビチッ!

 俺は声をあげてのけぞった。だが、倒れはしなかった。

 意識はあった。

 俺は死んでいない!

 力が湧いてきた。怒りもあふれてきた。

 今度は記憶が飛ばず、意識もしっかりしている。その上で俺の体が勝手に動き始めたのだ。

 ほとんど全て、反射神経だけで動いているのではないか? そういう疑問も湧いてきた。

 まず俺は刀を太った組員に投げつけた。

 刀は組員の胸に深々と刺さり、背中まで貫かれた。組員はのけぞった。もう意識はないだろう。

 次に俺は、サブマシンガンを拾った。

 グリップに腕がついている。太った組員の腕を切り落としたが、腕はまだ銃を握ったままだったわけだ。

 その腕を組長に投げつけ、サブマシンガンの引き金を引き絞った。

「うわわわっ!」

 組長はあわてて机の下に隠れた。

 高価そうな黒っぽい木の机は細かな木屑を飛ばし、いくつもの穴を穿たれていた。俺はそのまま銃口を動かす。

 床に転がり、もう動かない死体を撃ち、さらに太った組員の体にも当たった。

 俺は部屋の隅にいる女二人を見つけた。

 まだいたのかとあきれたが、おそらく腰が抜けて立てないのだろう。

 そいつらは笑っていた。

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