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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
69/134

6-13

 俺は一人の足を取り、力任せに引っ張った。

 蹴ってきた奴はつんのめって倒れ、別の奴にぶつかった。

 俺は素早く上半身を起こした。

 Aが組み付いているのでそれほど高く上がらなかった。

 それでもよかった。俺は自分の後頭部を地面にぶつける要領で振り下ろした。首の後ろでうめき声が上がった。

 それを三回ほど繰り返すと、首のしまりが弱くなった。

 正面にいた奴が足を振り下ろしてくる。

 逆上し、荒げた声を出しながら、俺の顔めがけて踏みおろしてくる。

 俺は腕を払いのけ、素早くよける。

 踏みおろしてきたのは岡本だった。

 岡本はAの腹を踏んでいた。Aは悲鳴を上げ、体を起こす。

 俺は懐からドスを抜いた。そして、Aの首に刃を押し付けると、一気に引き裂いた。

「かかはっ……」

 喉元から血があふれた。

 Aの服には血が大量に零れ落ちた。

 忙しく手で拭く。血を払おうとしているらしい。ぴちゃぴちゃという音に加え、ぬれた布を引っ張ったときに出るパンパンという何かがはじかれた音が聞こえた。それに、Aの狼狽の声も。

「お、おい……」

 岡本はAに弱気な声をかける。

 俺はそばで倒れている二人に目をやった。

「ひっ」

 俺がAを殺したのを目にしたらしい。

 BとCは逃げようとしていた。

 既に一人が俺に背を向けている。

 俺はそいつに飛びかかり、頭上からドスをおろした。ドスは背中に深く突き刺さった。どろっとした生暖かい液体が俺の手にかかった。

 そいつは何も言わなかった。

 もう一人に向き直る。ドスを放し、立ち上がる。

「うわあっ」

 もう一人の奴は腰をぬかさなかったようだ。

 素早く立ち上がり、逃げ出した。

 俺は後を追った。

 運動神経のない俺だが、身のときはすぐに追いつき、捕まえた。そいつがこっちを向いたとき、恐怖が顔ににじんでいた。

 そいつは何か言おうと口を動かす。が、何も聞こえてこない。

「何を言っている?」

「あう、あうう……」

「聞こえねんだよ!」

 俺は股間を蹴り上げてやった。そいつは股間を抑え、地面にうずくまる。

「痛いか」

 そいつは俺を見ることなく、首を縦に振った。

「お前、俺がやめてと言ったらやめたのか? 自分がされるのはいやだが、人にするのはいいのか? 虫がよすぎんだよぉ!」

 蹴り上げる。つま先が喉に食い込んでいた。

「痛いか! ああっ! 何とか言ってみろよっ! 俺を殺すんじゃなかったんか! 何とかぬかせ、コラァ!」

 腕をとり、ねじりあげる。かすかに悲鳴らしく物が耳に入ってくる。

 俺はその腕を両手で持ち、左足を支点にしながらひねる。肘が壊れた。

「うくぅぅああああ」

 岡本がやめろと叫んだ。

 俺はその声を無視し、そいつをにらむ。

 痛みに顔をゆがめ、涙をためていた。俺は左腕をそいつの首に回し、締め上げた。両手に力を入れ、首のロックが外れないように力を入れた。

「やめろって言ってんだろ!」

 岡本は叫んだ。

 俺はジャンプした。

 体を開き、地面に対し水平になるように。そうすると、そいつの首が大きく曲がった状態になる。

 そして、体を地面に落とす。

 岡本は変な声を上げた。ドスの聞いた声から急にソプラノ声になった。


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