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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
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6-1

 俺はすぐにコインランドリーを離れ、足早に歩き続けた。

 俺は、昨夜あれだけ反省したのに、今となってはそのことをすっかり忘れていた。いやなことがあっていやな気分になっても、一晩眠れば大体解消されている。

 それは昔からだった。

 おかげで、結構忘れっぽいところもあった。

 忘れたいことはいつまでも覚えているのに、結構肝心なことは忘れてしまう。全く役に立たない記憶力だ……。


 ふと横を見ると民家の陰から朝日が差し込んでくる。

 今日も晴れそうだ。

 暗かった夜空が色を帯び始めてきた。

 俺はうつむき、歩を進める。

 やはり朝は寒い。首筋につめたい空気が流れ込んでくる。亀みたいに首を縮めこみ、急ぐ。

 あのままコインランドリーにいてもよかったが、一箇所に留まったままでは危険な気がした。


 住宅街がどこまでも続く。

 酒がまだ残っているようだ。

 歩いていても時々まぶたが重くなる。顔が火照っているのを感じる。足取りがおぼつかないときがある。

 腹は減っていない。だけど、水がほしい。口の中が乾く。

 思うように足が動かない。あの事件以来まともな場所で寝ていないからな。ドラえもんの空き地みたいな場所はないだろう。ましてや土管なんか見たことがない。

 どこかの公園に住みつき、ブルーシートをテントにしてそこで寝るか。肝心なのはその場所だ。

 どこかの田舎に住むとして、食うのはどうしよう。

いつまでも、今のまま何も食べなくても平気だということはならない。そんなの不可能だ。

 そんなことより、銃の弾がない。

 またどこかのやくざの組に押し入ろうか。でも、そんなのどこにあるのだろう。

 一般市民に

「やくざの事務所はこの辺にありますか?」

なんて聞けるかよ。

 ホームレスがなんのようだと警察に通報されてしまう。

 それに、ここが福岡のどの変なのかわからない。俺はどの方面に向かって逃げたのかもわからない。もし、小倉か博多のどちらかの近くにいるのなら、その場所に行けばいい。そこなら人が多いから、俺一人ぐらい紛れ込むこともできる。


 昼近くになり、少し寂れたところに来た。民家の密集具合が緩やかになった。坂が多い山間の町だ。距離を置いた民家の間には空き地か、時々畑が見える。民家も最近立てられたようなものが少ない。主に木造モルタルの、瓦屋根が多い。

 人どころか車ともすれ違わない。だからといって誰もいないわけでもない。人の話し声は聞こえてくるし、ちょっと古びた小さな商店には客が入っている。

 俺は見当をつけながら歩き回った。とはいっても、ほとんど道をまっすぐ、突き当たれば何も考えずに右か左に曲がる。


『○×駅まで五百メートル』

 へえ、駅があるのか。俺はその看板にしたがってみることにした。

 駅の近くということもあり、それまで紺色だった道路が赤と白のレンガ敷きに変わっていた。そして、その場所から商店街が続いていた。

 そこは今まで歩いてきた場所と違い、結構人がいた。

 主に買い物に出ている主婦と、学校帰りの学生がメインだった。

 商店はさまざま。昔からあるような商店街だった。

 どこからか店の宣伝らしき放送が流れてきた。

 が、俺には関係なかった。その店に入ろうとは思わない。

 駅に着いた。

 最近立て直したのか、白いペンキが塗られた近代的な駅だった。駅そのものは改札、切符売り場、駅員事務所、プラットフォームとこじんまりとしていた。

 駅前には地図があり、俺はそれで居場所を確認した。

 北九州市内の聞きなれない場所だった。だが、線路の上り方面には小倉があった。

 俺は笑っていた。

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