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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
39/134

4-11

 博多での抗争も俺の記事に関連して乗っていた。

 二つの組は以前から対立していて、博多区内でも何回か衝突を起こしていた。最近でこそ派手なぶつかり合いはなかったものの、たまに組員同士が喧嘩して警察の世話になることがあるくらいだ。

 二つの暴力団組事務所近辺からの話によると、事務所に入っていく人数は次第に多くなり、それらしき姿の人間も町の中を徘徊するようになった。

 結果として組がなくなったことに近辺の一般市民は安堵しているようだった。さすがに抗争のあった日には生きた心地はしなかったらしいが。

 

 事件の前、俺が殺した人たち。

 彼らのことは載っていた。

 俺が殺したのではないか、という推測の域でしかないのもいるが。

 まず、最初に殺した上司、こいつの体から弾丸が出てきた。

 それが俺の犯行を裏付けた。

 事件当日、博多での抗争で俺が使った銃と同じ銃を使ったので当然といえば、当然。

 二人目も、俺が同じ職場にいて、いつも怒鳴られていたことから俺がやったとされている。が、断定はされていない。

 このほか、俺がやった殺人事件も載せられていた。

 あの時はいつも頭痛がして、幻覚が見え、幻聴が聞こえていた。それを振り払うためというのは、言い訳にもならないだろう。

「別の自分が出てきて、そいつがやった。気がついたら殺していたんだ。へっへへへ」

 こう言う奴と同じレベルだ。

 どう見ても小物だな。

 でも、現実にこんな奴はいないだろうがな。

 ただ、俺が関係していない殺しも俺のせいになっていた。しかも、それが佐賀県や大分県など別の県の、何もしていない時間に起こったものでも。

 俺は福岡県から一歩も外に出ていないぞ。

 それに、一時間程度で大分県大分市から福岡県宗像市に戻ってきていたりする。そりゃ、現在なら移動手段がないわけじゃないけれど、俺がこんなにすばやく動けるわけがない。

 この記事の最後に、こんなコメントがあった。

「これらの事件は全てSがやったとは断定できない。しかし、偶然にしてもわずかな間に殺人事件が集中して多発するのは、不自然なことである」

 確か、記事の中に俺を表す言葉で『殺しの天才』とあった。

 いくら、俺が『殺しの天才』でもこんなには実行できない。どこでもドアがない限り、不可能だ。

 全く、むちゃくちゃだよ。確かに俺はやりすぎたかもしれない。

 しかし、この期間内に俺以外に殺人を犯した奴は、のうのうと生きている。俺が放心状態で山の中で過ごした間にも、こいつらは世間の目が俺に向いたのをこれ幸いに、安心して日常を過ごしているのかもしれない。

 とくに、俺が宗像市で事件を起こした後、俺を隠れ蓑に、俺に便乗して事件を起こした奴らがいる。

 こいつらは、自分たちの犯行を俺のせいにし、こっそり逃げるつもりでいる。雑誌や新聞の記事でも、

『Sによる犯行』

と、書かれている。

 ちょっと待て。

 俺は宗像市での事件の後、誰も殺していない。

 警察はちゃんと調べたのか? 他に怪しい奴はいなかったのか?

 俺は手に持っていた雑誌を引きちぎりそうになった。爪が雑誌に食い込み、手が細かくそして不規則に動き始めた。

 怒りをみせるな、と自分に言い聞かせた。自分の姿は既に十分目立つものになっている。これ以上目立つ必要はない。

「大丈夫だ、大丈夫。俺に便乗した奴らなんか、すぐに捕まるさ」

 不祥事も続くが、それでも日本の警察は世界レベルから行けば上のほうだ。勝手に真犯人を挙げてくれるさ……。


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