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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
37/134

4-9

 俺はコンビニや公園のゴミ箱から新聞紙や週刊誌を拾い、事件のことを調べた。

 俺は集めた雑誌や新聞を抱えて、公園のベンチに座った。公園は広く、子供を遊ばせているお母さんたちも多い。

 だが、俺の近くには誰も近づかなかった。

「あのひとなーに?」

「目を合わせちゃだめよ。あっちに行きましょ」

 こんな会話が聞こえてきたが、当然だよな。

 周りに誰もいないのは幸いだ。誰にも邪魔されずに事件を調べられる。


 一番新しい日付を見てみると、事件から十日が経過していた。

 事件の翌日の新聞はさすがに見つからなかった。古いといってもせいぜい三日前。一方、週刊誌には事件のことが大々的に報じていた。

『宗像爆破テロ事件! 宗像百人殺し! 犯行は単独犯によるもの!』

 こんな煽り文句が飛び込んできた。

『容疑者S、依然行方不明! 死傷者百人、殺しの天才! 博多区の暴力団抗争にも関与』

 こんなことで天才なんて呼ばれたくない……。

 実際には宗像市での死者は半分程度。

 あとの半分は全て怪我人らしい。それに、博多での暴力団の死傷者も加えられているらしい。

 それでも死者は百人には満たない。

「もっと少ないかと思ってたのに。やりすぎたかな?」

 俺が事件当日やったことは、実家に放火、そして爆破。そのあと、集まってきた消防車や野次馬たちに向かってダイナマイトを投げた。

 雑誌には「犯人は黒い服を着ていて」とあった。事件が夜中にあったことと、外灯が少なかったために黒ずくめの俺の姿は目立たなかったようだ。

 サブマシンガンで電柱を撃ち、停電を発生させた。サブマシンガンは群集や警察にも向けられ、これによって多数の怪我人が出したらしい。

 追ってくるパトカーにダイナマイトを投げた。それがちょうどいいタイミングで爆発した。ダイナマイトはパトカーのボンネットに乗った直後に爆発。パトカーや警察の特殊車両は玉突き事故を起こしてしまった。

 その夜、俺は主にサブマシンガンを撃ちまくっていたらしい。ダイナマイトは数が少なかったこともあり、すぐに使い切ったようだ。ただ、ガソリンスタンドに投げ込んだりと、被害をいたずらに広げたとかかれてあった。

 サブマシンガンが弾切れを起こした後、追ってくる警察や逃げる一般人たちを拳銃で撃ち殺した。時には強盗のように民家に押し入り、水と金を奪ったともある。

 その夜、福岡県警からヘリや増援が出動したが、その前に俺は姿を消したらしい。


 俺については、博多でのことも書いてあるな。

「Sは暴力団A組に近づき、銃器を入手。組長の岩村氏に、それまで対立しているB組刈井氏の殺害を以来。目撃者の話によると、Sは酒に酔った振りをして刈井氏の車に近づき、持っていた銃器で殺害。近くにいたB組組員も全員射殺。S一人による犯行である」

 そうだったっけ?

 そうだ。確か、その襲撃に成功してM500をもらったんだった。

 続きが次のページにある。

『その襲撃の後、B組はA組に報復を仕掛けた。付近住民は銃撃と怒鳴り声が長時間にわたり聞こえてきたと証言する。SはA組にいて、くつろいでいたようだ。この抗争によって死者は約四十名にものぼる。その襲撃の現場にいた暴力団員の村井氏は「Sにやられた」ともらしていた。村井氏はすぐに病院に運ばれたが、まもなく死亡。この抗争でどちらの組も壊滅。ただ、Sだけが生き残り、金と武器を持ち、行方をくらました。宗像での凶行の一週間ばかり前のことだ。Sは数日前に勤めていた工場を退職したもよう』

 とっさに顔が思い出せなかった。

 刈井襲撃のときに俺と一緒に来たやつだったか?

 生きていたのか。

 姿が見えなかったので死んだと思っていた。よく考えれば、姿が見えないのは、死んだという証拠にはならないよな……


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