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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
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最終回

 俺は動かなかった。

 Hさんの歩みは結構遅く、俺と警察のちょうど真ん中あたりにいた。

 俺はズボンのポケットに手を入れて立っていた。

 もう少し、警察のほうに行ってくれたら……。

 俺は、コンビニを出たときからちょっとしたことを思いついていた。

 Hさんを解放したのと同時に、気持ちは少し落ち着いた。


 実にくだらないことだった。

 ああ、ずるい。

 卑怯だ。

 卑劣だ。


 どんな言葉が俺に投げかけられるだろう。

 

 何をいまさら。

 それだけのことを俺はしてきたのだろうが。

 

 俺は右手をひそかに動かし、背中に手を回し、上着の中に入れた。

 その時、ちょうどHさんが警察に到達しようとしていた。

 一方、向こうにも動きがあった。

 SATの後ろで刑事らしきスーツの男たちが動き回っていた。多分、俺を逮捕しようとしているのだ。

 俺は一歩踏み出した。

 そして、上着の中に入れた右手を引き抜いた。銃身が四十センチほどの、巨大なリボルバーを握り締めて。

 そう。M500である。

 俺はそれをHさんの背中に向けた。


 危ない!

 

 田中が叫んだ。

 その声に彼女は振り向いた。しかし、そもそも弾が入っていない。

 でも、警察はそのことを知らない。

 SATの銃が一斉に火を噴いた。

 俺の視界はすぐに暗転した。

 全身に痛みが駆け巡った。

 痛くないところがないというほどに。

 銃声は聞こえ続けていたが、それも徐々に小さくなっていった。


 俺がM500を抜いたのは、こうなるためだった。

 自分で死ぬこともできないから、警察を使って自分を殺させる。

 ただの責任逃れだ。

 人々は俺を非難するだろうが、死んで行く俺に、その声は届かない。

 頭に食らったらしい。意識が途切れた。

 しかし、不思議と俺は納得していた。

 これでいいんだ、これで終れる、と。


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