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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
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最終章-27

 テレビ局の車か警察の車かわからないが、その上に設置されているスポットがコンビニの入り口に向けられた。

 とても強い光だった。

 目を細めなければ、まぶしくて目がくらんでしまいそうだ。

 俺は彼女の手を握り、目を細めつつ、視界を確保しようとした。

 それに少々時間がかかったが、目は次第に慣れてきた。

 警察は俺が頼んだ通りに、駐車場の縁石にスピーカーを置いていた。

 俺は彼女の手を引き、スピーカーを手にした。

 コンビニを出たときから、場の空気が変わっている。

 その空気につられてか、ひどく緊張した。

 手足の先が冷たくなった。

 汗が引いたと思っていたが、外に出た途端に吹き出てしまった。

 外の空気は冷たい。息が白くなってしまう。

 多分、俺の体温が上がっているのだ。

 息がスムーズにできないし、口の中が乾く。

 その割には冷や汗が出てくるようだ。

 行動ひとつひとつに不要な注意を払ってしまう。かはーかはーと俺の呼吸が音を立てた。

「Sさん?」

 Hさんが声をかけてくれた。

 俺は意識を取り戻した。あのまま出て行ったら、俺は何もできずに逮捕されて終わりだった。

 深呼吸した。だが、まだ息が浅い。

 俺は大きく吸った。

 ずいぶんと時間がかかった気がした。

 たかが呼吸をするだけなのに。それなのに警察をずいぶんと待たせてしまった気がする。

 スピーカーを口に近づけ、声を出す。

 スイッチは入っている。声も増幅されている。

「すみません、田中さんはどちらさまですか」

 もう少し気の聞いた言い方があるだろうに……。

 その声に対し、白い光の中に一人分の人影が見えた。

 逆光なので、顔は見えない。

 が、姿だけはかろうじて見える。いい体格をしている。筋肉質で、がっちりとした体つきだ。目をさらに細めてみるが、やはり彼の輪郭しか見えなかった。

「Sか。私が田中だ」

「俺がSです」

「ずいぶん待たされたぞ」

「すみません」

「まあいい。人質を解放してくれ」

「その前に、田中さん。SATに銃をおろさせてください。このままだと、彼女まで撃たれてしまいます」

 そう言い、俺は彼女の手を引き、肩を抱き寄せた。首筋に右腕を回し、体を彼女の後ろに隠す。

 田中はいったん腕を挙げ、何度も下ろせという仕草を見せた。

 SATは銃をおろした。しかし、俺の体から緊張が抜けていない。

 もし俺が何かしたら、やつらはHさんごと俺を撃ち殺してしまうかもしれない。

「武器を捨てます」

 俺は彼女にスピーカーを持たせ、ポケットに手を入れた。

 ジェリコを取り出し、放り投げた。それから、ベレッタを捨てた。

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