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日常とテロは隣り合わせ

『ヴァンパイア』


それはテロリストだけを餌とし、狙った獲物は逃さない、最後の血の一滴まで喰い尽くす史上最強とうたわれた双子の姉妹のことである。


二〇九三年。日本は数多くいるテロリストや暗殺者に脅かされ、「世界で最も危険な国」として世界に知られていた。そんな中、結成されたのは対テロ組織〈協会〉。彼らはテロリストに対抗するために特別訓練を受けた者たち、そして〈教会〉が生み出したクローンたちの集まりだ。

そしてもう一つ、謎の組織『ヴァンパイア』。いつもテロリストを〈教会〉よりも早く殺していく者。

この二つの組織が数少ない国民の希望とも言えた。


「ねぇねぇ、昨日のニュース見た?」

「ニュース…ってどの?」

聞かれて机に突っ伏して寝ていた少女は顔を上げた。少女の名は上矢帷月。ここ、北第一高校の高校二年の生徒である。肩に少しふれるくらいの短い黒髪に、つり目気味の鋭い瞳が印象的な少女だ。

「もぉ…とぼけないでよぉ。またあの『ヴァンパイア』が一つテロ組織を皆殺しにしたニュースだよっ」

さっきから話しかけているのはクラスメイトの有沢葵。ボーイッシュなショートヘアにかわいらしいリボンをつけている。

「あぁ、あれね。何でいちいちそんなに大騒ぎするんだ?もう珍しくもねぇだろ」

「だってすごいじゃん!かっこいーじゃん!憧れるじゃん!」

「全ッ然憧れねぇ…」

帷月はそっぽを向く。何故か葵は『ヴァンパイア』の話になるとテンションが上がる。逆に帷月はテンションが下がる。

「ねぇ!帷月はあんなこと言うけど、海月はどう思う?」

「え…?」

いきなり話をふられて驚くのは帷月の双子の姉、上矢海月。黒い長髪を赤いリボンで後ろにまとめている。おっとりとしたたれ目でフワフワした雰囲気をまとった少女だ。

「憧れねぇよ、『ヴァンパイア』なんか。なぁ海月」

「ん~さぁ、どっちだろ?」

笑ってごまかす海月。

何を隠そう。双子の姉妹『ヴァンパイア』とは、帷月と海月のことなのだ。

「葵、そろそろ勘弁してやれよ」

いつも助け船を出してくれるのは幼なじみの清和井昌人せがいまさと

「昌人君っ、また昌人君はそうやってーっ」

プゥッと頬を膨らまして、でも大人しく引き下がる葵。

「昌人、ナイス」

二人で親指を立てて昌人に向ける。昌人は盛大にため息を付いた。

「サツがお前らのこと、嗅ぎ回ってるぞ」

昌人は二人の耳元でこっそりそう言った。昌人は二人の正体を知る数少ない人物の一人だ。

「マジかよ・・・」

「ちょぉっとこの頃殺り過ぎたかな?これでも大事にならないように小さいのばっかり狙って殺ってるんだけどな・・・」

「お前らが上手く殺り過ぎてるから証拠品もなくて捜査は全く進んでないけどな。唯一の手掛かりである、いつもお前らが残すカードにはもちろん指紋はついてないしな」

「まぁ、あれに指紋付けたらただの阿呆だな」

帷月が呆れたように言う。

主に『ヴァンパイアとして活動するのは二人だが、その二人に時々情報提供してくれるのが昌人だ。昌人は父親がそっち関係で、何かやらかしそうなテロリストを聞き出しては二人に教えてくれる。後は海月のハッキング技術でそのテロリストの行動を徹底的に調べ上げる。後は何か事を起こす前にアジトへ乗り込んで銃撃戦の後一人残らず処分する。

「何か情報は入りました?情報屋サン」

葵が離れたのを確認してから帷月が聞いた。

「曖昧なことしか聞き出せなかったが・・・お前らの追ってるテロリスト、そこのおもり役みたいな小規模テロ組織が動きを見せたらしい」

その言葉に、二人の顔が一瞬にして引き締まる。『ヴァンパイア』としての顔だ。

「やっと・・・か・・・」

帷月が口の端をつり上げた。

「噂では、同時多発テロ。爆弾、ウイルス、毒ガス、自爆・・・。あらゆる凶悪なテロを同時に起こす計画らしい。だがこの情報もホントかどうかは分からないらしい。ダミー情報かもしれない」

「オーケーオーケー。海月、調べ上げるぞ」

「もっちろん」

二人は十年前から今までずっと、あるテロリストを追ってきた。リーダーは『Z』と呼ばれている。ギリシア神話の最高神、『Zeus』からとったとされている。『ヴァンパイア』の最終的目的は、『Z』率いる凶悪テロ組織を跡形もなく消す、すなわち消滅させることだ。


二人が通っているのは東京北区第一学園。幼稚園から大学までが一続きになっており、現在、帷月たちは十八歳の高校三年生である。制服はブラウスに赤いリボンと黒のチェックスカート。好みで上にセーターやベストを着たりする。帷月、海月、葵、昌人の四人は全員パソコン同好会に所属している。部員は四人だけと寂しいところだが、それなりに楽しい。帷月は剣道部と掛け持ちしている。

海月は常に鞄の中にパソコンを持ち歩いており、帷月は銃と折り畳み式のバタフライナイフを持っている。何時襲われそうになっても対処できるようになっているが、他人に知られたら銃刀法違反で即逮捕ものだ。

二人が最も恐れていることはこの学校にテロリストが侵入してくること。特に、まず有り得ないが自分たちの正体が知られた上で侵入されることだ。そうなってしまうとどんなに二人が頑張っても被害がゼロ、というわけにはいかないだろう。そして、誰も死ななかったとしても、生徒の二人を見る目は変わってしまうだろうから・・・。

だが、そんな恐れる事態が起きるのは、そう遠い未来のことではなかった。


                      †


ある日の授業中のことだった。海月は真面目に受けていたが帷月は絶賛爆睡中。そんな時、学校中に警報が鳴り響いた。

《校内にテロリスト侵入。校内にテロリスト侵入。生徒は早急に退避せよ。繰り返す。校内にテロリスト侵入。――――――・・・》

教室がざわつく。慌てふためき、パニック状態だ。しかし・・・、帷月はまだ起きていない。運悪く、侵入したテロリストは二階の階段を上がってすぐ隣にある帷月たちのクラスへ入ってきてしまった。 テロリストはまず、持っていた銃で威嚇射撃を行う。・・・・・未だに帷月は夢の中・・・。

帷月に気が付いたテロリスト(以下男)はつかつかと帷月の方へ歩いていく。そして帷月の頭へ銃口を突きつけた。

「おい、起きろ女」

・・・ZZZZzzzz・・・

「お゛いっっ!!!」

男の怒声と同時に、引き金が引かれた。

パンッッッ――――・・・・・

教室内に銃声が響いた。クラスのほとんどの女子は耳をふさぎ、目を固く閉じている。数名が小さな悲鳴を上げる。全員がほぼ同時にそろりと目を開ける。ほとんどが帷月の頭から大量の血が流れ出ているの図を想像していた。だから、その光景を目にした時、誰もが自らの目を疑った。

「・・・あっぶね・・・」

帷月の声が響く。頭から細い一筋の鮮血が流れている。

「掠めたじゃん・・・女の子の顔に傷つけたらどうなるか・・・教えてあげようかぁ?」

帷月の左手はしっかり銃口を握っていた。咄嗟に掴んで、強引に銃口をそらしたのだ。

「帷月・・・正確には顔じゃなくて頭にケガさせられてるよ・・・」

海月は小さく突っ込んだ。誰にも聞こえない位のボリュームで。

「てめぇ・・・何モンだ」

「見てわかんねぇのかぁ?てめぇの目はお飾りか?」

帷月はすっくと立ち上がるといきなり男を蹴り飛ばした。

「あぁ、そうだ。最初に言っておくが、私は寝起きが一番機嫌悪ぃんだ」

そう言うと、男の銃を持っている手を再び容赦なく蹴り上げた。男の手から銃が吹き飛ぶ。帷月は宙を舞う銃を素早く右手でパシリと受け止めた。

「すごい・・・」

葵は感嘆の声を上げた。が、それとは裏腹に帷月の顔は苦い。弾が掠っただけの傷口が妙に痛む。薬でも仕込まれていたのか・・・身体が少しずつしびれていくように動かしづらくなってきた。帷月はチッと舌打ちをする。

「こりゃ少々手荒にいくしかねぇか・・・」

ボソリと呟くと男から奪い取った銃の銃口を男の方へ向ける。狙うのは奴の右肩。

パンッッッ――――・・・・・

再び銃声が響く。弾は見事に男の右肩に命中し、肉をえぐった。男は右肩を押さえるようにしてその場に倒れ込む。帷月は銃を男から離れたところに放り投げて左手で傷口を押さえた。これはホントにまずいかもしれない・・・。

「ヤバイ海月」

帷月は側に近寄ってきた海月にそう言った。

「ん?」

海月はいまいちわかっていないようだ。

「解毒剤とか持ってねぇ?」

突然のそんな質問に海月は少し驚いたような顔をしてから、訝しげな顔で答えた。

「こんなとこに持ってくるわけないでしょ?何、弾に毒でも塗ってあったの?」

「わかんねぇ、毒じゃないにしても何か変な薬が付いてたのは間違いない。身体がだんだんしびれてきたみたいに動かしにくくなってきた・・・」

海月はしばらく困ったような顔で考え事をしているようだったが、すぐに顔を上げて言った。

「じゃあ、ちょっと寝とく?」

その提案に帷月は素直に頷いた。

二人のモットー、『寝れば大概何でも治る』

帷月が溜息をついた。・・・次の瞬間、

「キャアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」

そんな女子達の甲高い声と共に、女子達がいっせいに帷月に群がって抱きついた。

「・・・・・・・ッッッッ!?」

帷月はビックリしすぎて声も出ない。何がなんだか、帷月にはサッパリ状況が把握できない。

「すごい!すごいよ帷月!」

「上矢さんってあんなにすごいことできるんだね!」

「かっこよかったよぉぉぉ!」

「憧れる~~~~~~」

「よっ、ヒーロー!」

ぐるぐるぐるぐるぐる

帷月は困惑したまま女子達に押しつぶされそうになる。

「お、おいコラ!離れろ!おい!」

そんなことを試しに叫んでみるが・・・案の定・・・誰も聞いていない。

それから少し遅れて〈協会〉がテロリストの身柄を回収しに来た。帷月の傷は丁寧に治療された。それから活躍が評価され、何かよく分からないが銀色のバッヂを貰った。かなり名誉ある事らしく、校長も理事長もルンルンだった。テロリストが入ってきてたのに・・・



文章力がまだまだ未熟で不快に思う事も多々あるやも知れませんが、ストーリーを楽しんでいただけたら光栄です。

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