表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/43

第10話:バスケ練習試合

 体育館に、キュッ、キュッとバッシュの擦れる音が響く。

 市民プールで会ったサッカー部の友人に連れられて、俺は地域のバスケットボールチームの練習試合に来ていた。


「春海、本当に助かるよ! これでなんとか試合にはなる!」


「いいって。面白そうだし」


 ユニフォームを渡され、袖を通す。

 サッカーや野球とはまた違う、軽くて動きやすい素材だ。

 ボールを手で扱う球技は、なんだか新鮮だった。


 試合開始のブザーが鳴る。

 俺はポイントガードという、司令塔のポジションを任された。


(とりあえず、ボールを味方に渡せばいいんだよな)


 俺はドリブルをしながら、コート全体を見渡した。

 味方と敵の位置、スペースが空いている場所。

 サッカーの時と同じだ。

 コートを上から見下ろしているような感覚で、全体の配置が頭に入ってくる。


 一人の味方が、相手ディフェンスの裏へ向かって走り出した。


(そこだ!)


 俺は相手選手の間を縫うように、床と平行の鋭いパスを突き出した。

 ボールは走り込んできた味方の胸元に、ピタリと収まる。

 彼はそのままレイアップシュートを決め、先取点を奪った。


「ナイスパス!」


 味方が、親指を立てて合図を送ってくる。

 俺も軽く手を挙げて応えた。


(なるほど、こういう感じか)


 一度プレーしてみると、すぐにコツが掴めてきた。

 相手の重心、視線、体の向き。

 それを見れば、次にどこへ動こうとしているのか、だいたい分かる。

 その逆をつけば、簡単にパスコースが生まれる。


 俺はその後も、アシストを連発した。

 特に、速攻の場面。

 味方がボールを奪った瞬間、俺は誰よりも早く相手陣地に向かって走り出す。

 そこにロングパスが通り、俺がボールを受ける。

 相手ディフェンダーが慌てて二人、俺の前に立ちはだかった。


(2対1。数的有利)


 俺のすぐ後ろを、もう一人の味方が走ってきているのが気配で分かった。

 俺はシュートを打つと見せかけて、ディフェンダーを自分に引きつける。

 そして、ボールを背中側に回し、ノールックで後ろにパスを出した。


「うぉっ!」


 味方が驚きの声を上げながらも、完璧なタイミングでボールを受け取り、楽々とシュートを決めた。


「お前、すげえな! 後ろに目でもついてんのかよ!」


「走るなら出すよ。あとは決めて」


 俺は笑ってそう言った。

 別に特別なことをしているつもりはない。

 味方が走っているのが見えたから、そこにパスを出しただけだ。


 試合の終盤、俺はリバウンド争いにも積極的に参加した。

 相手がシュートを外し、リングに弾かれたボール。

 その落下点を、俺は誰よりも早く予測する。


(ここだ!)


 自分より背の高い選手たちに競り勝ち、ボールを掴む。

 そして、そのまま着地せずに、空中で体を反転させてシュートを放った。

 プットバックというプレーだ。

 ボールはボードに当たり、リングに吸い込まれていった。


 試合は、俺たちのチームの圧勝で終わった。

 最終的に、俺の記録は得点、アシスト、リバウンドの全てで二桁を記録していた。

 いわゆる、トリプルダブルというやつだ。


「春海くん! ありがとうございました!」


 試合後、バスケチームのキャプテンが駆け寄ってきて、深々と頭を下げた。


「君のおかげで勝てたよ。もしよかったら、うちのチームに入らないか?」


 またしても、正式な入団勧誘。

 ありがたい話だったけど、俺の答えは決まっている。


「すみません。助っ人なら、いつでも来ます」


 俺はそう言って、丁重に断った。

 一つの場所に留まるのは、まだ早い。


 体育館の出口に向かうと、試合を見ていた他の学校の生徒たちに囲まれた。


「写真、一緒に撮ってもらえませんか!」


「今日のプレー、すごかったです!」


 俺は少し照れながらも、何枚かの写真撮影に応じた。

 観客席で応援してくれていた人たちにも、きちんと頭を下げて礼をする。

 見られて、応援されて、結果を出す。

 この快感は、どの競技でも変わらない。


 体育館を出ると、待っていたユウトが呆れた顔で言った。


「お前、またやったのか。これで、バスケ界隈もお前の噂で持ちきりになるぞ」


「そうかな」


「そうだよ。陸上部の怪物、サッカー部のスーパー助っ人、野球部の秘密兵器、そしてバスケ部の救世主……。もう、わけが分かんねえよ」


 ユウトの言葉に、俺はただ笑うだけだった。

 自分では、そんな大げさなことをしているつもりはない。

 ただ、目の前の「楽しいこと」に、夢中になっているだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ