第1章 内蔵風呂殺人事件 (④ 解決のラストピース 前半)
内臓風呂殺人事件発覚から7日後
ー13時05分 サンサン建築事務所前ー
事務所前では4人の狂人捜査員達が事務所を真っ直ぐ見ながら立っていた。《心理官》の汐里、『捜査員』の碧、志田…そして杉野の4人だ。
(汐里)「よし、じゃあ手順通り、私と碧くん、杉野くんの3人がまずあの作業員…大泉さん、安田さんと話す……その間に志田さんが、社長さんから二人の普段の様子や人物像について聞かせてもらう…そして全員が《本部》と繋がったイヤホンを付けて常に状況報告…って事でいいですよね、『キャプテン』」
(海)『…ああ、それでいい。…でも本当に良かったのか?杉野くんも一緒に事務所に行って…』
ー数時間前ー
(海)「……事務所捜査に行く捜査員は、4人。まだ犯人と確定していない状況、そして人数が多いと犯人の《狂人》が俺達の存在に早く気付き、警戒され、ボロを出さない、または逃げる可能性がある…。その為、事務所に行く人数は最小限にする。ただ、事務所の作業員二人のどちらかが犯人の《狂人》であった場合に備え、《捜査本部》とは常に連絡が取れる様にし、事務所の付近にも捜査員を数名待機させておく」
(捜査員一同)「「「「「「了解」」」」」」
海は捜査員全員の顔を一人一人見て、再び口を開く。
(海)「まず、事務所に行く捜査員は《心理官》である汐里、そして汐里の護衛を碧に任せる」
(汐里)「はい」
(碧)「はーい」
汐里と碧が海の前に行き、イヤホンを受け取って耳に装着し始める。
(海)「そして…観察眼に優れている志田、武力行使になりそうになった時の為の嬉平…この4人に任せようと思う」
(志田)「はいは〜い」
(鈴木)「よし、任せろ!」
(杉野)「えっ、ちょ、ちょっと待って下さい!」
海の言葉に杉野が慌てて声を上げる。
(海)「どうした、杉野くん」
(杉野)「あの、俺も事務所に行っちゃダメでしょうか!」
(海)「……はっ?いや、ダメに決まってるだろ。君はまだ正式な捜査員ではないのだから…命の危険が付き物の捜査には行かせられない」
海は渋い顔をして首を横に振る。
(杉野)「……そんな…俺、せっかくお試しでも入れてくれたのに……会議には参加させてもらったり、資料整理したりはしたけど、それ以外は何もしてなくて、皆さんの役に立ちたいのに。……いや、正直に言うとただ俺が悔しいんです。狂人捜査員になりたい、ならなくちゃいけない理由がある、から…」
(汐里)「……ふーむ」
(碧)「……汐里?その目、なーんか嫌な予感すんだけど」
杉野の声は、次第に小さく落ちていく。捜査員の多くからは、少しの同情と哀れみ、しかし大きくはまるで我儘な子供を見るみたいな、呆れた視線が杉野に注がれる。
(杉野)――分かってる、迷惑をかけてる事、鬱陶しいと思われてる事。それでも、俺にも譲れない思いがある。
(海)「……はぁ…杉野くん、ハッキリ言う。この捜査は職場体験中の君では、決して出来ない。何故なら、捜査員にとってはただのお荷物になるからだ」
(杉野)「……っ!」
海の言葉にビクッ、と杉野の肩が揺れ動く。と、突然汐里が二人の間に割って入り、口を開く。
(汐里)「……杉野くん、じゃあ私のところに付いてきて下さい。ただし、付いてくるからには、自分の命は自分で守らなければならない状況になる事もある、という事は常に意識して行動して下さいね」
と、突然汐里が二人の間に割って入り、口を開く。
(杉野)「えっ…?あっ、はい!」
汐里の突然の言葉に驚きながらも、杉野は必死で頷く。周りの捜査員一同は戸惑い、碧は少し離れた所で壮大な溜息を吐いていた。
(碧)ーそう言うと思った。さてアイツ、どうしてやろうかな…?
(海)「汐里、何を言ってる。流石にそれは許可出来ないぞ」
(汐里)「ですよね。……何も特別な説得等はするつもりはありません。私が杉野くんを連れて行こうとしている理由は、ただ一つだけ。私は彼に何か『捜査員にとって大事な素質』があるのではないか、と感じてるんです。その『素質』をこのまま開花させずに帰すのは…我々、狂人捜査員としては大きな痛手になるかと思います。杉野くんを捜査に入れる事をどうかご検討下さい」
汐里は一息に言って、深々と頭を下げる。
(杉野)「……汐里さん…あの、俺からも改めてお願いします!俺、ちゃんと自分の命も汐里さんや仲間の命も守って…罪を犯した『狂人』も必ず捕まえます!
杉野も汐里の隣で同じ様に頭を下げる。
海はしばらく無言を貫いていたが、やがて重い口を開き――「……汐里、それはいつもの『感』か?」と、汐里を真っ直ぐ見据えて言う。
(汐里)「――はい、いつもの『感』です。……ただ、『確信』に近い『感』である事は間違いありません」
(海)「……お前なら、その『感』を『本当』にする事が出来るんだな?杉野くんを守りながら、《捜査》をする覚悟はあるんだな?」
(汐里)「はい」
海は眉間に深い皺を寄せた後……「……悪い、嬉平。事務所近くで待機しててくれ。…何か合った時、すぐに動けるように――」と捜査員一同に告げた。
――――――――――
そして現在ー…
(杉野)「海さん、ご心配ありがとうございます。でも俺は大丈夫です」
海の言葉に力強く頷いて返す杉野だったが、共に《捜査》に来た志田は不機嫌な態度を隠そうともしなかった。
(志田)「君が大丈夫でも俺は大丈夫ちゃうねんな〜。…ほ〜んま余計な事してくれたで、、なぁ?『心理官』ちゃん」
志田は隣に立つ汐里を軽く睨み付ける。杉野はどう間に入ったらいいのか分からず、ただオロオロと立ち尽くす事しか出来ない。
(汐里)「……すみません。でも、志田さんにはご迷惑をおかけしない様にー…」
(志田)「もうこの状況が迷惑って分からへん?お前、人の心理読んで行動しなあかんのやろ?やのに俺が迷惑や思てるのも分からんとかありえんやろ」
(汐里)「本当にすみま――」
(碧)「なぁーそこまでにしといてくれないっすか?汐里の事、ネチネチ攻撃すんの。俺、これ以上やったら許せねーけど…まだ続けんの?」
碧は、汐里を自身の背に隠す様に志田の前に立った。碧の言葉に志田は軽く舌打ちをし――
(志田)「ほんま鬱陶しい護衛付きで、2割増にイラつくわ。……まぁ、もうええわ…事務所の社長さん来はったし」
志田の視線の先には、まさにサンサン建築事務所の社長が扉を開いて志田達を迎え入れようとしている所だった。
捜査員一同は社長と軽く挨拶を交わし、早速二手に分かれて捜査する事になった。汐里、碧、杉野は容疑者の大泉正、安田宝の二人の元へ案内人兼見守り役の副社長と一緒に向かい、志田はそのまま社長に同行し、普段の二人の様子を聞く事になった。
副社長と軽く雑談しながら、汐里達は二人がいるという個室に辿り着く。
杉野は緊張して固くなった表情を隠し切れずにいたが、汐里と碧の二人はまるで今から会う二人と日常会話でも交わす様な様子で、扉をノックして開き、部屋に足を踏み入れた。
普段は、作業員達の会議室の一つとなっている個室は8畳程の広さで、長机と簡易な椅子が7つほど並べられた、シンプルな雰囲気の個室だった。
大泉正、安田宝の二人は奥の椅子に、二人並んで座っていた。
(汐里)「初めまして、『狂人捜査員』の桜田汐里です。こちらの2名も同様に『狂人捜査員』の田中碧、杉野晴斗です。今日はお仕事の途中にわざわざ来て頂きありがとうございます」
(大泉)「…はぁ〜初めまして。大泉正です。本当に仕事途中に呼び出して何の用よ?」
(安田)「初めまして、安田宝です。確かに『狂人捜査員』の方々が僕らに何の用でしょうか?」
二人の返事はそれぞれ違うが、明らかに《狂人捜査員》である汐里達に警戒の視線を向けている。汐里は人当たりの良い笑顔を作る。
「お時間頂き申し訳ありません。少々お話をお聞かせ頂いた後は、すぐにお戻り頂けますので」と、汐里は穏やかな声色で二人に言う。
「あ〜じゃ、いーよ。さっさと話してよ」と、大泉はドカリと椅子にもたれかかったまま、偉そうに顎で汐里に話す様に促す。
(汐里)「……ありがとうございます。では早速ですが、こちらの写真を見てもらえますか?」
汐里は二人の方に近付き、数枚の写真を机に並べる。そして、二人の身体全体を見渡せる位置に数歩下がる。
二人の見ている写真は、《金髪》の彫りの深い顔立ちをした水着姿の女性と、同じく水着姿の《黒髪》の豊満な身体付きの女性が二人で一緒に映る写真だった。
大泉、安田は写真をしばし無言で見つめる。汐里はそんな二人の様子…特に二人の表情を注目して見ていた。
最初に口を開いたのは――「……はぁ?何ですか、これ。こんな写真見せて、一体何がしたいんですか?」またも大泉だった。安田も――意味が分からないですね、と困惑顔で汐里に静かに訴える。
汐里は「――見て頂き、ありがとうございます。写真回収しますね」と、にこやかに言いながら、写真を机から取り、自身の着ているパーカーに付いていたポケットに入れる。
(汐里)「――では、最後に一つだけ質問させて下さい。……お二人は『内臓』と『お風呂』についてどう思いますか?」
(大泉)「…はぁ?」
(安田)「えっ?」
二人は鳩が豆鉄砲をくらった様な顔をして、汐里を見つめる。杉野も大泉達と同じ気持ちだった。写真の意味も質問の意味も、汐里が何をしたいのか全く分からずに困惑していた。
碧が少しだけ前に出て、汐里の隣にさりげなく並ぶ。
(杉野)――何だ?碧さんが汐里さんの隣に移動した?……この『質問』で危険な状況になる可能性があるから、なのか?
(安田)「えっ〜と……その二つは、関連付けて考えなきゃダメなの?」安田が汐里の方へ少し前のめりになって、聞く。
(大泉)「お前、バカかよ!一つ、一つバラバラの質問に決まってんだろ!――大体どうやってその二つを関連付けんのよ?あ〜意味分かんないけど、とりあえず答えりゃイイのね!ハイハイ!『内臓』は…そりゃ生き物にとって生命維持に必要不可欠なモノでしょ?『お風呂』は…うーん、リラックス出来る場所とか…後は疲れを取る為、嫌な事があった時に心身を癒す為に必要なモノだと思うけど…本当何?この質問…」
大泉は一気に喋ると、大袈裟に首を捻って軽く汐里を睨む。
(汐里)「大泉さん、ありがとうございます。安田さんはどうでしょうか?その二つについて…何かすぐに思い浮かぶイメージってありますか?」
汐里の質問に前のめりになったままの安田が少しだけ、――う〜ん…と首を捻りながら考えた後、ゆっくりと口を開いた。
(安田)「……やっぱり『内臓』は、大泉さんの言うように生き物にとって必要不可欠なモノだし、『内臓』があるから人間は色々な生命活動が出来るから、凄く素晴らしい作りだな〜とは思うね。『お風呂』は……温かくて全てを包み込んでくれる安心出来るモノ、ってイメージかな」と笑顔で答える。
(汐里)「……分かりました。これでお話は以上になります。お二人とも、わざわざお時間頂いて…助かりました、ありがとうございます」
汐里は二人に向かって、深々と頭を下げた。
「えっ…?」少し後ろでやり取りを見守っていた杉野は、意味の分からないまま終わったこの時間につい疑問の声を漏らす。
(大泉)「は?なに、もう戻っていいの?」
(安田)「…僕達、何かお役に立てました?」
二人も当然戸惑いを隠せない様子だ。
(汐里)「はい、もう結構です。――お二人には、貴重なお話を頂けました。本当に御足労頂きありがとうございました」
……不気味な程に柔らかな笑みを浮かべ、汐里は感謝の言葉を再び口にする。
(大泉)「……ならぁいいけど…?」
(安田)「…じゃあ僕ら行きますね?」
二人は困惑の表情を浮かべながら、部屋を出ていった。《内臓風呂殺人事件の捜査》として来た事を知っている副社長は、――ね?我が社員にそんな危険な《狂人》なんていないんですよ、と何故か自信たっぷりに言ってくる。
しかし副社長の言葉には杉野が曖昧に頷き返しただけで、汐里は何も答えずに、碧に耳を貸すように促す。碧は少し屈んで、汐里の口元に耳を近付ける。
(汐里)「……碧くん、ーーさんにこっそりついて行ってくれる?なるべく…目、離さんといてね」
(碧)「……りょーかい♡」
碧は頷いた後、副社長の隣を無言で通り抜け、二人を追う様にすぐに部屋を飛び出した。
(汐里)「……おかしい。今日はやけに素直に言う事聞いてくれたな。――まぁ、いっか。副社長さん、案内してほしい場所があるんですが……」
――杉野と汐里は今、タジタジと落ち着きない副社長の案内の中、とある人物の住む…作業員寮の部屋に向かっていた。
その部屋の住民は――……
(杉野)「あの、聞いてもいいですか?」
(汐里)「どーぞ」
(杉野)「……何で、『安田さん』の部屋に向かってるんですか?」
安田宝だ。
(汐里)「んー?安田さんの部屋に、今朝方に行った《殺人の証拠》があると思うから」
(杉野)「…安田さんだ、って確信があるんですね。どうしてですか?」
(汐里)「……う〜ん…そうやなぁ…《犯人》や、って思い当たる理由は色々あるけど…まず最初は座り方、かな」
(杉野)「座り方、ですか?」
杉野はそのまま聞き返す。
「そう、座り方。椅子にどっかりと背もたれにもたれて腰掛けていた大泉さんに対して、安田さんは酷く浅く腰掛けていた。椅子に浅く座るのは、何か緊張してたり、不安な事があるって事」汐里の言葉に、杉野は少し首を捻りながら言う。
(杉野)「単純に『狂人捜査員』が自分に会いに来るってなったら、何もしてなくても緊張するんじゃ…?」
(汐里)「勿論その可能性もあるよ。だから、次は写真で反応を見てみた。――《捜査》に行く前に齋藤ちゃんに写真について、もう一つ頼んだ事があるんよ。《金髪の彫りの深い顔立ち》の女性と《黒髪》の能満な…いわゆる巨乳な方が並んだ写真…出来れば露出度の高いものが欲しいって」
(杉野)「えっ、どうしてですか?」
(汐里)「――大体男の人の多くは、まずは露出度が高ければ高い程にスタイルの良い巨乳な方に視線がいく。……大泉さんや、杉野くんの様にね」
(杉野)「うぇ!?おっ、俺はそんな見てな-…」
杉野の驚きを無視し、汐里は次の言葉を紡ぐ。
「でも安田さんは、黒髪の能満な女性ではなく、水着姿の身体を見るわけでもなく――『金髪』を見て、大きく瞳孔が開いた。人の瞳孔は、何か強い興味や関心のあるもの、好きな物、欲しい物を見た時にも開くんよ。……次に瞳孔が開いたのは、金髪の女性の彫りの深い顔立ちを見た時やった。だから『金髪』、『彫りの深い顔立ち』の女性に大きな関心がある事は確かなんよ」
(杉野)「なっ、なるほど…」
(汐里)「決定打は、『内臓』と『お風呂』の質問をした時――あえて言葉を繋げずにバラバラに言ったにも関わらず、安田さんは…『その二つは関連付けて考えなきゃダメなの?』って聞いた。大泉さんの言う通り、普通は関連付けれるはずはない質問を彼は関連付けて考えようとしてた。無意識に《内臓風呂》と繋げたな、って思った。後はこの質問をした時、安田さんが少し前のめりになったやろ?これも安田さんにとって《興味深い内容》やったから、無意識に体が前に出たんやと思う」
(杉野)「……凄いっすね…」
杉野が素直に汐里を賞賛していると、副社長が、――この部屋が安田の部屋です、と声を上げた。
――気付けば部屋に付いていたらしい。汐里達は副社長がスペアキーで扉を開けた後、すぐに部屋に入る。部屋はあちこちに様々なゴミが置かれ、脱いだ服や下着も散乱しており、ぐちゃぐちゃの状態だった。副社長は顔を青白くし、――私は外で待ってます!と、すぐに部屋を飛び出して行った。
(杉野)「うっ…凄い匂いだ…」
(汐里)「――《ディスオーガナイズド型》の《狂人》は部屋が荒れてる事多いからね。さぁ、早く《証拠》探そか」
汐里は杉野に捜査用の手袋をほり投げた。
(杉野)「……汐里さん、他にも何か安田さんについて気になった事ってあるんですか?」
杉野は、部屋にあるゴミをひっくり返しながら、質問する。――何か言葉を発していないと、気がどうかしそうだった。
(汐里)「――う〜ん…気になったのは、安田さんの質問の答え。《内臓》の時に最初は生き物全体の話をしてたのに、最終的に《人間》になった事、それから《お風呂》の答えの《全てを包み込んでくれる》って言葉も引っかかった。《内臓風呂》は、浴槽にスキマが出来ないよう、ギッシリと内臓で埋め尽くされるに出来てた……それこそ《内臓が身体全体を包み込む》様な作りやったから…そこも気になったかな。……後はもう帰っていいって言った時、《お役に立ちましたか?》って私が何をしようとしてるのか、少し探りを入れようとしてきた…って所も」
(杉野)「――めちゃくちゃ引っかかる箇所あったんですね。俺、何も気づけなくて恥ずかし――……うわぁ!?」
杉野が話している途中に悲鳴を上げた。汐里が振り返ると、杉野は黒いゴミ袋から《真っ赤に染まった靴下》を取り出していた。
(杉野)「し、汐里さ……」
(汐里)「……うん。出たね、《殺人の証拠》。これで、《内臓風呂殺人事件》のラストのピースがはまった。――急いで捜査部に応援要請頼んで、安田を捕まえて――」
(副社長)「うぎゃあああ!?」
ガツッ…という鈍い音と共に副社長の悲鳴が響き渡る。杉野は驚いて、《証拠の靴下》を離す。それをすかさず汐里が、《靴下》を拾い上げ、ビニール袋に入れた。
(杉野)「ひっ!?なっ、何…?」
(汐里)「――まさか…」
と、その時……イヤホンから碧の声が聞こえた。
(碧)『――もしも〜し?汐里に…スギノくん?聞こえてる?ごーめん♪急にトイレ行きたくなって、行ってたら…その隙に安田が寮の方に行って、汐里達を追いかけたっぽいんだよね〜。だから、俺もすぐ寮の方へ向かうね〜』
ブチッ…と通話終了の音がした。
……この場の状況に似ても似つかない程、明るくのびのびした声で《爆弾発言》を告げて、碧は早々に通話を終わらせた。
(杉野)「えっ…?って事は…」
(汐里)「――うーん、ちょっとまずい展開かも」
バンッ!
扉が、乱暴に開く。――副社長の血が赤く滴る鉄パイプを持った安田が入ってきた。
(安田)「――あちゃー…やっぱバレてたか。気になって戻ってきて正解だったな、ふふふ…!殺しちゃうか?うん、殺しちゃお♡あ〜それからその靴下…返してよぉ!」
安田は鉄パイプを振りかざしながら、汐里達に襲いかかってくる。
(杉野)「うぁぁぁぁ!?」
(汐里)「――うん、まずい展開やな、これ……」
内臓風呂殺人事件(④ 解決のラストピース 後編)に続く