56「二千年前に何が起こったか(1)」
(エルフ……? 絶滅したはずじゃ……?)
驚愕に言葉を失っているルドたちには気付かず、ハルドレは言葉を継ぐ。
「あ、あとさ、君たちがここに入ろうとするのを巨大樹が妨害して来たと思うんだけど、ごめんね。侵入しようとする者を勝手に排除しちゃうんだよ。僕の意志じゃないからね?」
未だ誰も言葉を発しない中――
「悪いと思ったら、飯食わせろまお!」
――肩車されていたマオコが、ルドの両肩に立って指を突き付けた。
「そうだね、じゃあ、僕のうちにおいで」
「わーい、まお!」
そのようにして、一行はハルドレの家へと向かった。
※―※―※
古いが、手入れが行き届いた木造建築の家に入り、リビングのテーブルに案内された一同。
「ちょっと待っててね」
そう言ってから、それ程時間も経たない内に、ハルドレは次々と野菜料理を持って来た。
早速逆手に持ったフォークを野菜炒めに突きたて、食べ始めたマオコは――
「美味いまお! 野菜の癖に美味いまお!」
――調味料は塩胡椒のみにも拘らず、新鮮な素材の味を最大限に引き立てる、絶妙なバランスでの味付けに舌鼓を打ち、バクバクと食べて行く。
「ラリサの料理の次に美味い」
マリリナも負けじと、凄まじい勢いで平らげていく。
「本当、とっても美味しいわ!」
「美味なの!」
「確かに、これは美味いな……」
野菜炒め、野菜の煮物、野菜シチュー、等々、全て野菜しか使っていなかったが、どれも味付けが至高の域に達しており、驚かされた。
「いやぁ、そう言って貰えると嬉しいよ」
柔らかな笑みを浮かべるハルドレは――
「誰かと一緒の食事なんて、もう何年もしていなかったからね。楽しいものだね」
――そう言いながら、自身もスプーンを用いて野菜シチューを口許に運んだ。
※―※―※
食事が済んだ後、改めて自己紹介をしてから、ルドは、ハルドレに質問した。
「お前が〝最後のエルフ〟だと言ったよな?」
「うん、そうだよ」
「エルフに何があったんだ?」
その問いに、ハルドレは俯き、目を閉じると、深く――
――そう、とても深く息を吐いて――
「聞いてくれるかい? 二千年前の悲劇を」
――顔を上げると、真っ直ぐにルドを見据えた。




