53「魔剣〝バルヴィング〟の願い(後)」
そのような経緯があって、ルドたちは魔剣の故郷――があったらしい場所――つまり北東の海――へと向かっていた。
土魔法による高速移動により、景色は移ろって行く。
いつの間にか、砂漠は姿を消して、少しずつ緑が増えて行った。
――が、当初は、まだ〝荒野〟だった。
それが、更に緑が増えて、草原が散見されたかと思うと、森も見掛けるようになっていく。
「大分涼しくなって来たわね!」
氷魔法による〝動く土製椅子〟と〝人体〟の双方に対する〝避暑〟を全て解除したラリサが、気持ちよさそうに風を浴びる。
尚、〝動く土製椅子〟は、前回と同じく二台で、片方には犬猿の仲であるラリサとケイティ、もう一方――左側を並走中――には、ルドとマオコが乗っている。
随分とマオコに熱を上げていたラリサだったが――
「お前、何か気持ち悪いまお」
「ガーン!」
――というやり取りを経て、隙あらば抱擁しようとして来るラリサとは決別し、何故か警戒しているルドが肩車して移動する羽目になっている。
ちなみに、基本的に常時至近距離にいる事となってしまった事から、ついでにマオコの瞳も覗き込んでみたが、ルドの姿は映らなかった。
※―※―※
ラリサがマリリナと氷魔法による攻撃と迎撃という修行をしつつ、ケイティが自分を差し置いてルドと同乗しているマオコに対して口を尖らせるという光景が幾度か繰り返された後。
「着いたぞ」
「………………え?」
目的地に着いた。
魔剣が、どうしても見たいと願った場所。
だがそこは、何も無い海で――
「これが……おいらの……」
「正確には、この先、暫く航海すると、お前の故郷があった場所に辿り着く」
「本当に……そうだったんすね……ありがとうございましたっす……」
「我儘言って、申し訳なかったっす……」と、明らかに気落ちしている様子の魔剣に、「バル……」「バルヴィングさん……」と、マリリナとラリサが、言葉を失くす。
――と、その時。
「何か美味いもん食わせろまお!」
――空気を全く読まずに、ルドに肩車されたマオコが声を上げた。
「マオちゃん! ルド君の上に乗っているからって、空気読まない所まで真似しちゃ駄目よ!」
「何故俺が責められる?」
流れ弾を被弾しつつ、ルドが抗議の声を上げた。
――直後――
「あそこなら、美味いもんあるまお?」
マオコが指差した先――大きく湾曲した海岸線――切り立った断崖を見た仲間たちに――
「マオちゃん、何も無いわよ?」
「腹が減って幻覚が見えているんだな、マオコ。飯にしよう」
「何言ってるの? 頭おかしくなったの?」
――散々に言われたマオコは、だがしかし、意固地になって自分の主張を曲げない。
「あそこまお! あ・そ・こ! 何で分からないまお? 何か隠れてるまお!」
「隠れてる? ちょっと待て」
ルドが、手を翳して、感知魔法を発動すると――
「!」
――確かに、マオコが言う方向に、認識阻害魔法により巧妙に隠されているものが感知されて――
「みんな。ちょっと下がってろ」
そう言ったルドが――
「『解除』」
――解除魔法を唱えると――
「「「「「!」」」」」
――一つの町を内包出来る程に、途方もなく大きいが、海岸線と同じ曲線でその半身を削られた巨大樹が、姿を現した。




