52「魔剣〝バルヴィング〟の願い(前)」
念のために訊いてみると、「覚えてないまお! 気付いたらこの辺にいたまお!」と、案の定、マオコは記憶喪失だった。
(益々怪しい……が、もう仲間になっちゃったんだよな……)
一人溜息をつくルド。
(まぁ、仕方ないか……一応、常に警戒はするようにしておこう)
マリリナとマオコが腹を空かせていたため、ルドたちはレストランで食事を取る事にした。
「美味いまお! もっと持って来るまお!」
余程空腹だったのか、フォークを逆手に持ったマオコは、次々と肉料理を平らげていく。
「ふぅ~! 食った食ったまお!」
レストランを出た後、自身の大きく膨らんだ腹を擦りながら、マオコは、ルドに告げた。
「マオコはデザートを所望するまお!」
「まだ食うのかよ」
露店が立ち並ぶ中央通り――の、先程の店があった左側は気まずいので避けて、右側へ目を向けながら、歩いて行くと――
「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! この甘丸氷、食べなきゃ損だよ! 〝世界で一番美しい氷〟と呼ばれてるんだからね!」
威勢の良い女性店主の声に引かれて、ルドの足が自然とそちらへ向かっていく。
「マオコも、〝スーサイドデスボール〟食べるまお!」
「マオちゃん、それじゃあ〝自殺死球〟よ! お腹壊しちゃうわよ!」
ラリサが突っ込む中、ルドは――
(もしかして……)
――仲間たちの分も纏めて、甘丸氷を買ってみた。
ほんの僅かな期待を込めながら、覗き込んでみるが――
(やっぱり、駄目か……)
――残念ながら、〝世界で一番美しい氷〟と評される程の美を有する氷菓子にも、ルドの姿は映らなかった。
※―※―※
その後、数日間、近辺のダンジョンに潜り、冒険者ギルドのクエストをこなして、報酬を受け取り、路銀を貯めた一行は、デホティッド皇国皇都リギトミを後にした。
いつも通り、ルドの魔法で創った〝屋根付きの動く土製椅子〟に座った一同(と一人猛然と走り続けるマリリナ)が向かっているのは、北東にある海だ。
※―※―※
きっかけは、マリリナが持つ魔剣〝バルヴィング〟が放った一言だった。
「姉御! ルドの旦那! 一生のお願いがあるっす!」
彼は、その声を聞く事の出来ない皆のために(マオコだけは何故か聞こえているようだったが)ルドがその発言を伝えていると――
「おいら、自分の生まれ故郷をもう一度見たいっす!」
――そう告げた。
それまでもきっとそのような想いはあったのだろうが、近くまで来た事で、感情が抑え切れなくなったのだろう。
剣ではあるが、彼も大切な仲間だ。
出来れば願いを叶えてやりたいと思い、ルドが仲間たちに確認すると――
「勿論、良いわよ!」
「うむ、問題ない」
「ルドと海でデートなの!」
「美味いもん食わせろまお! そしたら、他はどうでも良いまお!」
――満場一致で賛成して貰えた。




