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49「様々な肉」

「ふぅ。スッキリしたの!」


 ミノタウロスを存分に甚振り惨殺したケイティは、まるで憑き物が落ちたかのような晴れやかな顔で、額の汗を拭った。


「ありがとうなの、ルド、ラリサ!」

「ああ、問題ない」

「力になれたなら、良かったわ」


 満面の笑みを浮かべるケイティは、歳相応――どころか、少し幼く見えるくらいだが――


「スッキリした後は、イチャイチャするの! ルド、〝上手く敵討ち出来たな〟ってケイティを褒めて欲しいの! ついでにチューして欲しいの! とうっ! ――グエッ!」

「何どさくさに紛れて飛び移ろうとしてんのよ! 〝ついで〟もおかしいし!」


 ――並走する〝ルドの土製椅子〟に飛び乗ろうとして跳躍――するも、ラリサにローブを引っ張られて首元が締まり、蛙の鳴き声のような声を上げて連れ戻された。


「何するの!?」

「それはこっちの台詞よ!」

「……暑いのに飽きもせずよくやるな、お前ら……」


 〝犬猿の仲〟を体現したかのような二人の言い争いは、暫く続いた。


※―※―※


「行くよ! マリちゃん!」

「来い」

「『氷塊アイスブロック』!」

「おらあああああああ!」


 その後、ラリサは、修行ために、〝一人だけ自身の足で右前方を疾走し続ける〟マリリナに対して、新たに会得した氷魔法――巨大な氷塊を生み出してぶつける――を試して、それをマリリナが魔剣で一刀両断する、という事を繰り返していた。


 ケイティはというと――


「……すぅ……すぅ……ルドったら……そんな所……エッチ……もっと、なの……」

「どんな夢見てんのよ!?」


 ――スヤスヤと眠っていた。

 どうやら、先刻の〝炎天下の仇討ち大量ナイフ投げ〟によって、余り体力のない彼女は疲れ切り、猛烈な睡魔に襲われたようだ。


 たまに出現する魔蠍デビルスコーピオン――体長二メートルほどで、スピードもパワーもそれほど高いわけではなく、魔法も使わないが、致死性の毒を持っているため、本来は厄介な敵――等を、魔剣・土魔法・氷魔法で蹴散らしながら、一行は高速で進んで行く。


※―※―※


 以前よりもスピードが上がっている事もあり、一回野営をしただけで昼頃に辿り着いたのは――


「思ったより早かったわね!」

「緑なの! 何だか久し振りなの!」

「ラリサ。腹減った」


 ――砂漠の中に突如現れた、巨大な街――デホティッド皇国皇都リギトミだった。


 皇都リギトミの城門に辿り着いたルドたち。

 キングカプート王国王都やローズベネット帝国帝都に比べると、城壁はそれ程高くなく、代わりに、巨大な植物が群生しており、その緑を悠々と主張している。

 

 衛兵二人とやり取りをした後、一同は冒険者カードを見せて、冒険の旅をしている途中であると告げた。


 ケイティが四番目に冒険者カードを見せようとすると、「もう良い。分かった」と言って、碌に確認もしようとしなかった事から、ローズベネット帝国帝都キンティスに比べて、かなり緩い事が分かる(「ケイティもちゃんと審査して欲しいの!」と、取得したばかりの冒険者カードをちゃんと使いたかったらしく口を尖らせる彼女を、「まぁまぁ、厳しいよりも良いじゃない」と、ラリサが宥める)。


 そのような経緯で、一行はすんなりと街の中に入った。

 城壁の中は、皇都中央にある巨大な湖と、街中に多数生えている植物のお陰で、城壁外に比べて、かなり涼しい。所謂、〝クールアイランド現象〟というものだ。


「ねぇ、ルド君。まだあと何人か仲間を誘う予定はあるの?」

「そうだな……かなりバランスも良いパーティーになったし、このままでも良いが。まぁ、あと一人くらい増やすのも良いかもな」

「分かったわ! 良い仲間が見付かると良いね! 大勢いると楽しいもの!」


 そんな会話をしながら中央通りを歩いていると――


「ラリサ。腹減った」

「そうね、お昼にしましょう」


 腹を鳴らしながら訴えるマリリナに、ラリサが振り返りながら答える。

 

 何かめぼしい物は無いかと、幾つもの露店を見て回る四人。


「肉」

「あら、美味しそうね」


 マリリナとラリサの声に、ルドも目を向ける。


 その露店には、天井から鉄製の細い棒で巨大な肉が幾つもぶら下げてあった。

 左から順番に見ていくルド。


(確かに美味そうだ)

(ウシ、ブタ、トリ、ロリ……()()!?)


 思わず二度見したルドが目にしたのは――


「……は?」


 ――各種肉たちと共に上からぶら下がる、後ろ姿の紛う事なき()()だった。

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