30「土vs雷」
突然の空間転移と落雷だったが――
「『岩防御』」
「中々やりますわね」
――警戒していたルドは、空間転移された瞬間に手を下に翳して土魔法の発動を準備、黒雲が空を埋め尽くした段階で土魔法を発動、地面を隆起させ始めており、高硬度の岩でかまくらのように自身の頭上を覆って防いだ。
「ですが」
――が。
「辛うじて、といった具合ですわね」
「!」
――たった一筋の雷光により、高い硬度を誇る防御魔法が、粉砕され崩れ落ちる。
「では、お次は正面から行きますわよ! 『雷槍』!」
巻き込まないようにという配慮からなのか、白馬はおらず、その両脚で地面に立つクレアが優雅に手を翳すと、雷撃が槍の形を成して――射出された。
「『岩防御』」
高速で飛ばされた雷槍を、ルドは高硬度の岩石を瞬時に隆起させて防ぐ――が、一撃で粉々にされる。
「お次は左ですわ! 『雷槍』!」
「『岩防御』」
クレアから見て左手――つまりルドの右手の虚空に魔法陣が出現、そこから雷槍が飛ばされて、ルドは再び土魔法で防御する。
その後も――
「右ですわ! 『雷槍』!」
「『岩防御』」
――何度も攻防が――
「背後ですわ! 『雷槍』!」
「『岩防御』」
――繰り返された後――
「やりますわね! でも、今度の攻撃は防げませんわ! 前後から行う〝挟撃〟ですもの! 食らいなさい! 『雷槍』!」
――クレアの声に呼応して、ルドの前後に魔法陣が現れるが――
「…………?」
――魔法陣からは何も飛来せず――
――代わりに――
「――――ッ!」
――ルドの足下――地中から二本の雷槍が出現、彼を急襲した。
「お~ほっほっほ~! 〝雷〟は気紛れですもの! 地面からだって生じますわ!」
舞い上がった砂埃が薄れると、姿を見せたルドは――
「奇遇だな。〝岩〟も気紛れでな、空中からだって出現する」
「!」
――翳した手から高硬度岩を生み出して防いでいた。
「……少し舐めていましたわね……。では、ここからは本気で行きますわ!」
真剣な表情を浮かべたクレアは、両手を翳して――
「〝全方位〟から行きますわ! まずは〝十本〟! 『雷槍』!」
ルドを取り囲むように十の魔法陣を虚空に出現させると、それぞれから一本ずつ雷槍を生み出して猛スピードで飛ばす。
「くっ。『岩防御』」
一瞬で地面を隆起させて岩石により防御するルド。
「〝二十本〟! 『雷槍』!」
魔法陣の数が倍に増えて、流石に一ヶ所に留まりながら防ぎ続けるのは困難だと判断したルドは――
「『土移動』。『岩防御』」
足下の地面を隆起させて、その上に乗ったままスライドさせて高速で移動して出来るだけ的を絞らせないようにしつつ、高硬度岩で何とか防御していく。
だが――
「〝三十本〟! 『雷槍』!」
「『土移動』。『岩防御』」
――夥しい数の雷槍を前にして――
「〝四十本〟! 『雷槍』!」
「『土移動』。『岩防御』」
――それも限界が訪れて――
「〝五十本〟! 『雷槍』!」
「くっ。『岩防御』」
とうとう無数の雷槍によって全方位から撃ち込まれて、捉えられてしまって動きを止め、必死に高硬度岩で防御、破壊されてはまた新たに岩石で防ぐ、という事を繰り返す。
無表情に思えたルドの顔に焦りが見え始めた事で、クレアは――
「そうですわ! その顔が見たかったんですの! ああ! 〝危険分子〟に対して〝正義の鉄槌を下す事〟! これ程興奮する物はありませんわあああああああああああ!」
目を潤ませ、頬を紅潮させて、息を乱し、恍惚とした表情を浮かべ、興奮の余り涎を垂らした。
どうやら、自分が〝悪〟であると決め付けた相手を追い詰めて処刑する事に対して、興奮する性癖の持ち主らしい。
「あら。私とした事が」
胸元から取り出した純白のハンカチで涎を拭ったクレアは――
「さぁ! これで終わりですわ!」
――幾多の雷槍を生み出してルドを攻撃し続けながら――
――両手を天に向けると――
「『神の鉄槌』!」
――暗雲から〝光の奔流〟が放たれた。
余りにも巨大で、〝光の奔流〟としか表現出来ない雷撃は――
「! 『岩防御』『岩防御』『岩防御』」
慌ててルドが頭上に展開した三重に重なる高硬度岩石による防御を――
「!」
――いとも容易く全て貫くと、ルドは――
「うわあああああああああああ!」
「〝正義の鉄槌〟、完了ですわ!」
――黒塊と化した。




