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24「世界地図の違和感(前)」

 どうやら、ルドには〝()()()()()()()()()()()()魔剣の声〟が聞こえるらしい。


「本当、どこまでも規格外で、すご過ぎね、ルド君……」


 呆れ顔でそう呟くのは、ラリサだ。


 ルドによると、魔剣を抜こうと奮闘していたマリリナを裏でサポートしていたこの二週間強の間に、夜間に魔剣に会いに行き、話をした時があったらしい。


 最初こそ、「……何用だ?」等と、ミステリアスな強者を気取っていた魔剣だったが、至近距離でルドと言葉を交わしている内に――


「って、え? あれ? ……もしかして、あんたって――」


 ――何かに気付いて――


「その魔力! その精気! そのオーラ! ま、間違いないっす! ヒィッ! 殺さないで欲しいっす! おいら、悪い魔剣じゃないっす!」


 ――鍍金めっきが剝がれた。


 「俺が何だって言うんだ? もしかしてお前、女神が俺に与えた才能ギフトが何なのか、分かるのか?」とルドが問うも、「ヒィッ! 恐れ多いっす! そんな事、おいらには言えないっす!」と、魔剣はプルプルと震えながら怖がるだけだった。


 そして、現在。


「一応、伝えておくべきだろうな……」


 そう呟くと、ルドは、マリリナが手にする魔剣を一瞥して――


「まぁ、この話を聞いた上で、もし許せなければ、その魔剣を火山の火口に放り込んで、マグマで溶かしてやるのも良いかもしれない」

「ヒィッ! 勘弁して欲しいっす!」


 ――ブルブルと小刻みに震えている魔剣を無視して、マリリナを真っ直ぐに見据えた。


「マリリナ。お前の父親は、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……は?」


 怪訝な表情を浮かべるマリリナに対して、ルドは説明をし始めた。


 この魔剣〝バルヴィング〟によると、〝森羅万象全てを斬る〟事が出来る能力を有する代償として、所有者から〝生気――生命エネルギー――〟または〝魔力〟を吸い取るらしい。


 魔力を持たなかったマリリナの父親から魔剣が奪ったのは、〝生気〟だった。


 流石マリリナの父親だけあって、どれだけ〝生気〟を吸われても、力が衰えた様子は無く、毎日剣を引き抜こうと必死に踏ん張っていたらしい。


 ――が、それが、〝ほんの少しの膂力や技術の差が生死を分ける〟戦闘となると、話は別だ。


 ウェザビーによって召喚されたオーガと戦った際、もしも魔剣が〝生気〟を吸い取っていなければ、マイルズ――マリリナの父親は、死なずに済んだかもしれない。


 と、その時。

 魔剣が、再びマリリナの手中でブルブルと震えた。


「申し訳なかったっす……死ぬまで〝生気〟を吸い取るつもりなんて、初めからおいらには無かったっす。このままダラダラと、毎日少しずつ生気を吸い取り続けて、もう限界だなって思ったら、吸うのは止めるつもりだったっす。それなのに……まさか、モンスター召喚の禁呪を持つ人間が襲い掛かって来るなんて、思っていなかったっす……」


 訥々と語る魔剣の言葉を、ルドが仲間たちに伝える。


「どうする? やっぱり火山に放り込むか?」

「ヒィッ! 反省してるっす! 許して貰えるなら、何でもするっす! だから、どうか、それだけはご勘弁を!」


 すると、マリリナは、手に握る魔剣をまじまじと見詰めた後――

 ――目を閉じて――

 ――開けると――

 ――凛とした声で、語り掛けた。


「もし本当に罪滅ぼしをしたいと言うなら、行動で示せ!」

「!」

「これからあたしは、父さんと母さんの人生に大きな意味があったことを、あたしが魔王を倒して世界を救って〝英雄〟となり名声を得る事で、皆に知らしめてやる! 〝英雄〟であるあたしを生み育ててくれた、そんな両親もきっと凄い人たちだったに違いないって!」


 そして――


「そのために、あたしにその力を貸せ! 魔剣〝バルヴィング〟よ!」

「姉御ぉ~!」


 ――マリリナが天高く掲げると、魔剣はその刀身を眩く輝かせた。


「おいら、姉御についていくっす!」


 ルドは、魔剣の最後の言葉も伝えようとしたが――


(いや……その必要は無いか……)


 声は聞こえずとも、魔剣から直接感じ取っている様子のマリリナの顔を見て、止めた。


「マリちゃん……もう、格好良過ぎよ……!」


 感銘を受けて胸が一杯になるラリサ。

 ルドは――


(〝俺の剣になる〟とか言うから、「俺のためじゃなくて、何か自分自身の目標を設定しろ」と言うつもりだったが、まさかこんな形で、自分から言い出してくれるとはな)


 ――心の中で、ぽつりとそう呟いた。


 ふと、魔剣を下ろしたマリリナが、何かに思い至る。


「あ、でも、〝生気〟とか〝魔力〟って、あんたにとってのエネルギーなんだろ? それがなきゃ本領発揮出来ないって言うなら、あたしの生気ならいくらでも吸って良いからな」

「確かにエネルギーっすけど……でも、そんな事しないっすよ! 姉御からは一切貰わないっす!」

「でも、それじゃあ、本来の力を出せないんじゃないか?」

「大丈夫っす! ルドの旦那から、予めたっぷりと魔力を貰ってるっすから!」


 そんな事もあろうかと、ルドは魔剣と会話した夜に、その柄を握って、〝百年分の魔力〟を与えておいたのだ。


「そうか、それなら良い」


 ルドを一瞥しつつ、マリリナはそう答えた。


「そっす! だから姉御、安心しておいらを使って欲しいっす! おいらに斬れない物は無いっすから! 何たって、伝説のハーフドワーフとハーフエルフが命懸けで創ったのがおいらっすから! そんなおいらが生まれた場所、知りたいっすよね? 地図あるっすか?」


 長年他者との会話をしていなかったためか、やけに饒舌で、自身の出自を知って欲しくて堪らない様子の魔剣は止まらない。


 魔剣の言葉をルドから又聞きしたラリサが、「私持ってるわよ!」と、革袋から取り出した。


「ほら。これで良い?」

 

 ラリサが地面の上に広げて、近くに落ちていた石を四隅に置いて固定すると、魔剣は、「良いっす! ありがとうっす!」と礼を言うと――


「ここっす! ここがおいらの故郷っす!」


 ――プルプルと震えながら、その切っ先で指し示したのは――


「は? そこ、()だぞ?」


 ――ラウンド大陸の北東にあるデホティッド皇国の更に北東――の()()()()()

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